第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.188 俳優 浅利陽介
人の本気に触れ、仕事への熱量が上がった
Heroes File Vol.188
掲載日:2018/8/24
4歳でデビューして以降、数々のドラマや映画、舞台などで活躍してきた俳優の浅利陽介さん。
見たら何でもやりたくなるという性格で、1年前からは落語も始めたそうだ。
そんな好奇心旺盛な浅利さんは仕事観にも独特なものがあり、良い意味で聞く者の肩の力が抜けるものだった。ぜひ参考に!
Profile
あさり・ようすけ/1987年東京都生まれ。91年にCMでデビュー。最新出演作は映画『劇場版コード・ブルー 〜ドクターヘリ緊急救命〜』など。2018年9月15日(土)〜10月25日(木)にIHIステージアラウンド東京で上演予定の舞台「新感線☆RS『メタルマクベス』disc2」に出演。
シェークスピアの戯曲「マクベス」を宮藤官九郎さんが脚色した舞台「メタルマクベス」。これを劇団☆新感線がキャストを変えたdisc1から3までの3組でロングラン公演を行っている。そのdisc2に浅利さんが出演。2018年9月15日(土)から上演予定だ。
「新感線の舞台はとにかく激しい。でも出演者はみんないつも楽しそう。ちょっと悔しいなと思いながらこれまで見ていたのですが、いよいよ自分も参加できる! しかも、まだ経験したことのない360度客席が回転する劇場で! というのが素直にうれしいです」
4歳でデビューし、8歳で舞台も経験。14歳の時にはドラマ「キッズ・ウォー3」に出演し、その演技力が高く評価された。ただ、当時の浅利さんは「俳優だという自覚がさほどなく、何となくやっていた気がします」と言う。そんな意識を変えてくれたのが映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の撮影現場だった。
「エキストラさんたちが自ら熱心に芝居のプランを立てていたんです。しかも実際の撮影でそれが美術セットに見事にマッチしていた。そんな方たちの本気に触発され、自分ももっと熱量を持ってちゃんとやらなきゃと思いました」
自覚が芽生えると今度は自意識も出てきた。それが時には過剰になることもあったという。「ありがたいことに子役出身だから芝居がうまい、安定感があると言われることが多かったのですが、そこをちゃんとクリアしなくてはと自分で勝手にプレッシャーを掛けていました」
特に20歳のころは大学生でもあったので、授業のリポートを書かなければと思う一方、セリフも覚えなきゃと焦ることもしばしば。「正直、あまり良い状態の自分ではなかったですね」
そんな苦しい時期に舞い込んできたのが、ドラマ「コード・ブルー 〜ドクターヘリ緊急救命〜」への出演オファーだ。同期への劣等感を抱えた研修医、藤川の役だった。
「その時、次々に飛躍していく同世代の俳優さんたちの姿を見て焦っていた自分と、役柄が見事に重なりました」。だから撮影当初は、山下智久さんを始めとする共演者に対して「同世代のこいつらには絶対負けないぞ」という気持ちが強かったという。
「でも、藤川という役を演じていくうちに自分も変わることができました。それによってずいぶん救われた気がします。山下君たちは今はもう良きライバルであり戦友と言える存在。そんな仲間と出会えたのも大きかったし、役者として人としても成長させてもらったという意味で、大きな転機になった作品です」
言われた戒めは、心の教科書に書き込まれる
31歳にしてすでに芸歴27年。子役時代から数え切れないほどの映画、ドラマなどに出演してきた浅利さん。ちゃめっ気のある笑顔と気取らない人柄で誰の懐にもスッと入っていく。
「わりとすぐに仲良くなってしまうので、先日ドラマの撮影で訪れた会社の方に営業マンに向いていると言われました」。子供のころから誰とでも積極的にコミュニケーションを取れる性格で、撮影の現場でも、大人たちがご飯へ行く時は必ずついていくほどだったという。
「そこでいろんな話が聞けるのが楽しかった。周りに面白い大人が多かったのも、この仕事を続けてこられた理由かも。最近思うのは、この仕事が好きだとか、この仕事をしている自分が好きだとかというのではなく、この人だったら一緒に仕事をしたいとか、この人と何かがしたいと思える人を見つけたほうが、その仕事を好きになれるんじゃないかなっていうこと。これはどんな職業も同じだと思います」
今取り組んでいる舞台「メタルマクベス」もそうだ。演出家いのうえひでのりさんや主演の尾上松也さんをはじめ、刺激的で魅力的な人たちがたくさんいる。だから挑戦したかった。
しかし、人と出会い仕事をする中では、時に厳しいことを言われることもある。ある舞台に出演した際は、途中でセリフを忘れてしまい、とっさにアドリブを入れたところ、後で演出家に「小ずるいことばかり覚えて。ちゃんと芝居をしなさい」と戒められた。
「そう言われて多少落ち込むものの、変に引きずったりしないし、逆に何くそと思ったりもしません。ただ、こうしてすぐに思い出せるということは、言われたことを無意識のうちに自分の心の教科書に書き込んでいて、ちゃんと教訓にしてるってことでしょうね」
カラッとした性格で、31歳なのにキャリアが長いせいか達観したところもある。「ですが、10代のころは訳が分からず、ただ我を通すことに必死でした。20代に入ってからは自分のやるべきこと、求められていることが見えてきて、それに対して頑張り、挫折して、またはい上がるみたいなことを繰り返していた」
それが、20代後半になったらあまり無理しなくなったと笑う。「ダメもとぐらいのモチベーションでいたほうが心に余裕を持てるし、かえって自分の力を惜しみなく出せるということが分かってきたんだと思います」
つらい時には一回逃げる、やりたくないんだってやり過ごす。それでもやらざるを得なくなったら、ちょっとずつやっていけばいい。長いキャリアで見つけた、浅利さんの仕事術だ。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
ドラマの撮影で訪れた会社の方に「営業マンに向いてる!」と言われたので、業種は分からないけれど営業でしょうか。あと、中学生のころに馬に乗る仕事があって、馬にかかわる仕事にあこがれたこともありました。
人生に影響を与えた本は何ですか?
台本以外の本をほとんど読まないのですが、初めて自分で買った本は『凶気の桜』(ヒキタクニオ著)です。窪塚洋介さん主演で映画化もされた社会派作品。主人公がナショナリストで、「フォーク」という言葉ですら外国語だからといって使わないんです。何かそういうのがかっこいいなと思い、しばらくまねしていましたが、すごく面倒で生きづらくなってすぐにやめました(笑)。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
飯です。ステーキ、もしくはその時期に一番旬で自分が食べたいなと思う物を食べます。それがパワーになるし、モチベーションにもなります。
Infomation
「ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc2 Produced by TBS」に出演!
外周が舞台で、中央の観客席が360°回転する東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京。この特殊な機構を最大限に生かし、劇団☆新感線が2017年度の「髑髏城の七人」に続いて18年に上演しているのが、宮藤官九郎さん作の「新感線☆RS『メタルマクベス』」。キャストを変えたdisc1〜3の3組を連続上演し、現在は橋本さとしさん主演のdisc1が上演中だ(2018年8月31日〈金〉まで)。そして次に控えているdisc2に浅利陽介さんも登場する(主演は尾上松也さん)。「あの360°の舞台に立てるんです! 新感線の舞台は結構激しく、音楽もメタルロックなのでライブっぽい雰囲気になるとお客さんも楽しめるだろうなって思います。アトラクションみたいな面白さもあるので、ぜひ遊びに来てください」と浅利さん。
日程:2018年9月15日(土)~10月25日(木)
作:宮藤官九郎
演出:いのうえひでのり
音楽:岡崎司
振付・ステージング:川崎悦子
(原作:ウィリアム・シェークスピア「マクベス」松岡和子翻訳版より)
disc2出演者:尾上松也、大原櫻子、原嘉孝(宇宙Six/ジャニーズJr.)、浅利陽介、高田聖子、河野まさと、村木よし子、岡本健一、木場勝己ほか
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/stagearound/metalmacbeth_disc2/
問い合わせ先:ステージアラウンド 専用ダイヤル(電話0570-084-617/10:00~20:00)