第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.191 女優/タレント 宮澤エマ
夢は声に出してみると縁も運も開けてくる
Heroes File Vol.191
掲載日:2018/11/16
2012年にデビュー。テレビのバラエティー番組への出演や情報番組のコメンテーター、そしてミュージカルでも大活躍の宮澤エマさん。18年の今年は映画やドラマにも出演して新境地を開いたばかりだ。
30歳を迎える今も「まだまだやりたいことだらけ。チャレンジしたいことしかないですね」と語る宮澤さん。その仕事への意気込みや思いを伺った。
Profile
みやざわ・えま/1988年東京都生まれ。2012年にデビューし、13年に初めてミュージカルの舞台に立つ。情報・バラエティー番組などでも活躍。18年12月4日(火)から始まる三谷幸喜作・演出のミュージカル「日本の歴史」(東京・世田谷パブリックシアター)に出演予定。
知的なたたずまいと天性の明るさ、親しみやすさが魅力の宮澤さん。さまざまな情報番組などで活躍しているが、女優としても着実にキャリアを積んでいる。この度、2018年12月4日(火)から始まる三谷幸喜さん作・演出のミュージカル「日本の歴史」にも出演。卑弥呼の時代から太平洋戦争までの1700年を約2時間半にまとめた作品で、中井貴一さんや香取慎吾さんら7人のキャストが50人以上を演じ分けるということでも注目を集めている。
宮澤さんの祖父は宮澤喜一元首相。「働かざる者食うべからず」が家訓で、父親や母親は誇りを持って仕事をし、姉も成人後はニューヨークで起業するなど自立心が強い家庭で育った。そんななか、宮澤さん自身は子供のころから歌と芝居が大好きで、漠然とそういう世界へ進みたいなと思っていたという。「アメリカの大学で学んだものの、そこでほかにやりたいことが見つからなかった。だったら自分の夢に一度は挑戦してみようと、卒業後に帰国しました」
とはいえ、どうしたら芸能界へ入れるのか分からない。「オーディション雑誌を買ったり、養成所へ入ることを考えたり。その時点で22歳なので遅すぎるかなと悩んだりしていました」
ちょうどそんな時に幸運が舞い降りる。宮澤さんの夢を友人が自分の母親に話したのがきっかけで、その知り合いの知り合いという遠いツテでオーディションを受けられ、今の事務所へ入ることができたのだ。「実を言うと、歌やお芝居をやりたいと誰かに話すのは恥ずかしかった。でも、思い切って友達に話しておいて良かった。声に出すことが夢へのステップにつながるんだと実感しましたね」
そしていざデビュー。最初はタレント活動からスタートすることとなった。「バラエティー番組などに出演し、名前を知ってもらえたのはありがたかったです。でもなかなか歌やお芝居にたどり着けず、それが何とももどかしくもんもんとしていました」
しかし2年目に入ったころ、また思わぬところからチャンスが巡ってくる。演出家の宮本亜門さんから声が掛かったのだ。「実は高校時代、合唱部で亜門さんの弟さんと一緒で、亜門さんに一度歌を聴いてもらったことがあったんです。そんな亜門さんがテレビに出ている私を偶然見て、オーディションを受けにおいでと」
それがきっかけで、「メリリー・ウィー・ロール・アロング ~それでも僕らは前へ進む~」というミュージカルに出演。ようやく、念願の女優デビューを果たすことができたのである。
人や現場が変われば、対応して自分も変える
24歳で初めてミュージカルに出演。以降、宮澤さんの情感あふれる澄んだ歌唱力とピュアな演技力は高く評価され、オファーが続いて今はそれが活動の軸になりつつある。ただミュージカルは、やればやるほど面白くなってくるものの、同時に難しさも身に染みてくるので課題は尽きないという。
「経験を積めば多少スキルは上がるかも知れませんが、作品が違えば演じる役も変わるので毎回初心に立ち返っています。特に18年12月から始まる『日本の歴史』では、一人で何役も演じ分けるのでそれも大変なのですが、えっ、これを私が!? と驚くような難役をいくつも与えていただいている。自分ではハードルが高すぎて無理そうだと思っても、私にやらせてみようと声を掛けてくださったわけですから、力不足の自分を自覚しつつも期待以上のもので応えなくてはと思っています。だから、チャレンジしている感じがずっと終わらないですね」
何より、ミュージカルでは観客からの反響も大きな励みになる。15年に出演した「ドッグファイト」では、観客の一人から宮澤さんが演じた役を見て留学を決めたという手紙をもらった。「ミュージカルなどの舞台って、見に行かなくても人は生きていける。でも、そこで何かを得て生きる活力にしたり、モチベーションにしてくれたりする人がいるんだとそのお手紙で知ることができ、役者として作品に携われることへの喜びをひしひしと感じました」
またその一方で、宮澤さんはテレビの情報番組やバラエティー番組などに出演してタレントとしても活躍している。そんな時は、仕事に応じてその場で求められる自分でいることに常に心を砕いているという。
「例えば朝の情報番組で各界や経営のトップの方にインタビューさせていただいて、午後からは舞台のお稽古という日もあります。やるべき内容やその場の雰囲気があまりに違うので、当初はかなり戸惑いましたが、今は『人が変われば、自分も変わる』の精神で臨むようにしています。どの現場でもその場で求められていることにいかに柔軟に、いかに自分らしく対応するかということを大切にしていますね」
18年11月23日で30歳。これからは、あまりやってこなかった映像やストレートプレーにも挑戦したいと考えている。「30代は自分の可能性を自分で決めつけず、この人にこれをやらせたら面白いんじゃないかな、と言ってもらえるような素材になっていけたらと思っています」
飾らずありのままの自分で全力投球。その姿勢が自身の未来を切り開く力になっている。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
弁護士でしょうか。自分のことより他人のために頑張れるところがあって。ただ、司法試験に受かるほど頭が良いかどうかは全然定かではないのですが(笑)。
人生に影響を与えた本は何ですか?
荻原規子さんの“勾玉(まがたま)三部作”と言われる小説『空色勾玉』『白鳥異伝』『薄紅天女』です。日本の神話をベースにした歴史ファンタジーで、日本史にすごくロマンを感じていた小学生のころ、これを読んでは妄想にふけっていました。自分だったらこの役をこんなふうに演じたいなとか。大和和紀さんの漫画『あさきゆめみし』も好きでしたね。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
ルーチンをいったん作ってしまうとそれが守れなかった時に怖いので、あえて作らないようにしています。でも、強いて挙げるとしたら漢方。例えばのどがいがらっぽいなと気づいてしまうと、なかったことにできない。そんな時は、ゆるやかに効いてくれる漢方を服用します。
Infomation
ミュージカル「日本の歴史」に出演!
三谷幸喜さんの作・演出による最新作は、卑弥呼の時代から太平洋戦争に及ぶおよそ1700年間を、上演2時間半で描き出す前代未聞のミュージカル。中井貴一さんや香取慎吾さんといった豪華なキャスティングで話題を集めるなか、宮澤エマさんが三谷作品に初出演する。「おそらくオープニングから誰もがこの作品の世界観に引き込まれ、あっという間にとりことなるはず。実に衝撃的で驚嘆に満ちた舞台になっています。しかも、日本の歴史の知識も身に付くという“おまけ付き”。ぜひ見に来てください」と宮澤さん。
企画・製作:シス・カンパニー
日程:2018年12月4日(火)~12月28日(金)
会場:東京・世田谷パブリックシアター
音楽:荻野清子
出演:中井貴一、香取慎吾、新納慎也、川平慈英、シルビア・グラブ、宮澤エマ、秋元才加
公式サイト:http://www.siscompany.com/mitani/
※大阪公演もあり。