第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.227 星読み係 yuji
変な自意識が消えたら進むべき道が分かった
Heroes File Vol.227
掲載日:2021/1/8
占星術の世界で2020年は約220年ぶりに時代が大転換するタイミングだったそう。実際、新型コロナウイルスの影響で私たちの生活は激変した。
そんな時代の大きな変わり目にあたり、新しい年を迎えた21年の「Heroes File」のトップバッターとなったのは、くしくも「星読み係」のyujiさん。
星を読むという仕事を生業にするまでの歩み、葛藤、加えて今後私たちはどう生きていけばいいのかといったことまでお話を伺った。
Profile
ゆじ/香川県出身。18歳でイタリアへ渡り、現地の大学、大学院を卒業。ミラノのプロダクトデザイン事務所で働いた後に帰国し、数年後、「星読み」としての本格的な活動を始める。雑誌の連載、講演などで幅広く活躍。2020年10月に著書『星2.0』(光文社)を出版した。
サングラスとニット帽とヘッドホンがトレードマークのyujiさん。西洋占星術であるホロスコープで星を読み、個人の命運を鑑定したり、この世界の流れ、潮流を読んだりする「星読み係」を生業としている。雑誌やウェブサイトに連載を持つほか、著書を幾つも出していて、2020年10月に出版した『星2.0』も好評だ。
子どもの頃からもの作りが好きで、16歳ですでに海外へ出て学びたいと思っていたという。それでも一応、国内の大学を受験。ところが届いたのは不合格通知。ショックを受ける前に、これは開き直っていいというサインのような気がしてイタリアへ渡る。語学学校を経て現地の大学、大学院を卒業。そのままミラノのプロダクトデザイン事務所に就職した。
「実はその頃から、物が持つ質感や形の必然性というものが気になり出していたんです。そして更にそこから人の顔や手の相が表す意味へと関心が広がり、手相を学んだら、今度は誕生日など数字が持つ意味や配列の意味について知りたくなっていきました。それで西洋占星術を勉強し始めたんです」
その知識を生かし、周りの人たちの星を読んであげることもあった。「当たってる!」と喜んでもらえるのが素直にうれしかった。帰国後は知人に紹介されたIT企業で1年半、デザイン事務所で3年ほど働く。その間にも、身近な人や口コミで予約してくれる人を対象に個人鑑定を少しずつ始めていた。手応えを感じつつも、あくまで副業のつもりだったという。
「『星読み』の道で独立すればと何人もの人に言われました。でも、せっかくイタリアの大学院にまで行って学んだデザインの分野で上を目指したかった。当時、デザインの仕事が決してうまくいっていたわけではないけれど、『人の運命を見ています』という、何かいかがわしい印象を与える仕事よりは『イタリア帰りのデザイナー』というほうが聞こえがいいかなって。今思うととんでもなく自意識が強かったんですね」
そんなyujiさんの気持ちが、あるお客との出会いがきっかけで百八十度切り替わる。「個人鑑定をした後にその方の運命が好転! 劇的なV字回復を遂げ、喜んでくれたんです」。その姿を見て、yujiさんは「自分の仕事を100人中99人が変だ、いかがわしいなどと中傷したとしても、たった1人にこれだけ感謝されれば十分だ。やる価値のある仕事だ」と確信する。
「その瞬間、変な自意識が完全に消えました。自分の得意なことが誰かのお役に立てるならこんなに幸せなことはない」と、この道に進むことを決めた。
自分と相思相愛になる。新たな時代には必要
yujiさんが「星読み」の道で独立したのは10年。その個人鑑定は最初の1年ほどは予約を取るのもスムーズにできたが、口コミで評判が広がり、いつしかyujiさんは予約の取れない人気の「星読み係」となる。
これまでに行った個人鑑定は1万回以上。その8~9割はリピーターだという。「僕の星読みは座学ではなく、個人鑑定の現場経験によって培われていて、多くの人の星を読んできたからこそ実測として言えることがあります」。その一つが、9割以上の人が本当にやるべきことができていないということだ。
「仕事がうまくいかないとか恋愛が苦しいとかという相談もたくさんあって、その原因は本来、自分が乗るべき人生のレールから外れてしまっているからです。その軌道修正の一助を担うのが僕の役目だと思っています」
yujiさんによると、星の世界で20年は約220年に1度の新旧交代の節目という重要な年で、新たな時代は20年12月22日からすでに始まっているそうだ。確かに世界は今、新型コロナウイルスによって前代未聞の経験を強いられている。そうしたなかで人はどう生きていけばいいのか。その羅針盤となるように、yujiさんは2冊の本を出版した。
一つは時代を知ってもらうために書いた『「風の時代」に自分を最適化する方法』。「現在、これまでの常識や価値観が通用しない時代に突入しています。これからは物質的なものではなく、個性やオリジナリティーにスポットがあたり、本質的なものが大事になってくる。そんななかで求められるものは何かをまとめました」
そしてもう一つの本は『星2.0』。こちらは個々が己を知る一冊になっている。「時代がどう変わろうとも一人ひとりの個性は違うので、誰かのまねをしたところでうまくいかない。何を信じてどう進むかはやはり自分に問うしかないわけです。『星2.0』では各星座の本質とそのたどるべき運命についてまで書いているので、それぞれの方が自分を知るための参考書として使っていただけたらと思っています」
学歴や資産など古い価値観に固執すると時代に取り残されることは必至で、むしろ生命体としての強さやセンスのようなものを持つ人が強いとyujiさんは語る。「SNSなどで『いいね』が集まるものを盲信的に信じるのではなく、自分が『いいな』と思うものを信じる。それがこれからの時代を楽しく生き抜くコツ。せめて今の情報量を半分でもカットすれば、かなり自らを見つめる時間が増えて自分と相思相愛になっていけるのかな、と。それが豊かな人生につながっていくはずです」
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
イタリアの大学院でプロダクトデザインを専攻し、そのまま現地でその仕事に就いていたので、やはりもの作りをそのまま続けていたのではないかと思います。
人生に影響を与えた本は何ですか?
子どもの頃から図鑑や辞典が好きでした。中でもお気に入りだったのが祖母に買ってもらった、ことわざ辞典。ことわざはすごく短いフレーズの中にエッセンスが詰まっていて、その“密度や精神性・エスプリ”が好きなんです。海外留学中も現地でことわざ辞典を買いました。ちなみに僕の好きなことわざは「天網恢々疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず」。天の網の目は粗く見えるが、“全てを見ている”というものです。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
神社には仕事柄よく行きます。特に正月は東京十社を回ります。
Infomation
新刊『星2.0』が発売中!
自分の生まれた意味を知り、人生の岐路に立った時に繰り返し読んで進むべき道を探る、そんな人生のガイドブック的な役割を果たしてくれる星占いの本が登場した。それが2020年10月に出版されたyujiさんの著書『星2.0』(光文社/1,800円〈税別〉)だ。星占いの本はそれこそ星の数ほど出版されていて、表現の違いこそあれ「乙女座はこんな性格で~」とステレオタイプの文言のものが多い。しかしこれは違う。「なぜその星座だとそういう性格になるのか」ということまで深く掘り下げて書いている、新時代の星占いの本なのだ。「20年12月22日に世界は“土の時代”から“風の時代”へと突入しています。この大きな変革の中で自分がやるべきことは何か、ということを徹底的に深掘りして頂くための本です。最低でも10年は手元に置いておいて頂けると思います。ふと何か悩んだ時にページを開いて読んでみてください」とyujiさん。