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第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

Vol.232 俳優/モデル 宮沢氷魚
プレッシャーは周囲からの期待の証し

掲載日:2021/5/21

宮沢氷魚さんの写真1

男性ファッション誌『メンズノンノ』の専属モデルだけでなく、俳優としても活躍目覚ましい宮沢氷魚さん。
184㎝の長身で、品のある美しいルックスと物憂げなまなざしが類いまれな存在感を放つ。
今回、1年ぶりのアンコール公演となった舞台のことや、自身が感じている俳優という仕事の魅力などについて話を伺った。

Profile

みやざわ・ひお/1994年米カリフォルニア州生まれ。2015年モデルデビュー。17年ドラマ「コウノドリ」で俳優デビュー。以降、ドラマ「偽装不倫」、映画『his』『騙し絵の牙』など多数出演。21年6月6日(日)まで上演予定の渡辺謙さん主演舞台「ピサロ」に出演中。

2020年3月、コロナ禍で10回だけの上演となった幻の舞台「ピサロ」が、1年経った現在アンコール公演されている。宮沢さんは前回同様、渡辺謙さん演じるスペインの将軍・ピサロに対峙(たいじ)する若きインカ帝国の王・アタウアルパ役で出演。「特にこの1年で社会が激変し、お客さんの作品の見方や感じ方も変わったと思う。だから僕も、新たにゼロから役を作り上げる覚悟で本作に挑んでいます」と意気込みを語る。

宮沢さんが芸能界に興味を持ったのは中学生の頃。人前に立って何かを発信することに憧れを抱いたからだ。高校卒業後はアメリカへ留学。そこで自分の将来をあらためて考えた時、「やはり自分のパフォーマンスで人を喜ばせる仕事がしたい」と確信する。そして、子どもの頃からドラマが好きだったので自分がやるのは俳優だと決めた。

思い立ってからの行動が早い。すぐにネットで芸能事務所を探し、履歴書を送った。「それが今所属している事務所です。男性タレントが少なかったので、その分、巡ってくるチャンスも多いかなと想像して」。急いだのには理由があった。「同世代の第一線で活躍している俳優さんたちの経歴を見ると、ほとんど中学の頃にデビューしているんです。当時の僕は19歳で、もう時間がないなという焦りがありました」

宮沢氷魚さんの写真2

事務所には入れたものの、そこからは不遇の時代が始まる。「正直、所属できれば1年以内にCM1本ぐらいは決まって、ドラマにも出ているだろうななんて軽く考えていました。でも、そんなに甘くはなかった(笑)。オーディションに30回以上連続で落ちてしまって……。仕事が決まるどころか、その前にクビになるかもしれないと思って怖かったです」

そうして初めて合格したのが男性ファッション誌『メンズノンノ』の専属モデル。しかも、それまで受けた中で一番大きなオーディションだった。それが後々の大きな自信につながった。

2年後には、ドラマ「コウノドリ」で念願の俳優デビュー。「でも、セリフを言うだけで精いっぱいでした。ただ、デビュー作だからとフィルターをかけて見てもらえたのと、過去作がない分、失うものは何もないという気持ちが自分の中にあったから、思い切り演じることができてすごく楽しかったです」

逆に今、経験を重ねるごとにプレッシャーは増している。「でもそれは、周囲や世間からの期待を感じている証し。役者として幸せなことだと思っています」

つらさも越えた達成感、それが引かれる理由

宮沢氷魚さんの写真3

透明感があり、どこかミステリアスな雰囲気をまとう俳優・宮沢さん。デビュー以来、ドラマや映画、舞台と精力的に取り組み、その演技力にも注目が集まっている。「この3年半、色々な作品に出演させていただいたことで、演出家や監督が求めているものを早くつかめるようになったと思います。だからその分、より芝居に集中できるようにもなりました」

そんなふうに自身を成長へと導いてくれているのは、間違いなくこれまで出会った人たちだと確信している。その一人が、21年に出演中の舞台「ピサロ」で共演している渡辺謙さんだ。

「初めてお会いしたのは20年の『ピサロ』公演時でした。謙さんは、年齢もキャリアも関係なく誰に対してもフラットに接する方。それに、何より稽古においては誰よりも無邪気に楽しんでいる。僕にも色々と声を掛けてくださったのですが、こうしろああしろとは絶対に言わない。逆に、一緒に芝居をした後『ここの部分は良かった』『ここは気持ちが乗っていなかったね』と、謙さん自身が感じたことをストレートに話してくださるんです。僕自身が気づいていない所を見て伝えてくださるのでとてもありがたい。謙さんからは役者としての姿勢を学ばせていただいています」

宮沢さんは、役者の仕事についてこう話す。例えば舞台の場合、稽古も本番も楽しさばかりではなくつらい部分もあると。「より良い作品を作り上げるために身を削る思いなので、正直つらいなと思う時もあります。でもすべてをやり終えたら、不思議に毎回、やって良かったと心底思えるんです。こういう喜びや達成感って、それまで味わったことがなかった」。そこに、この仕事に引かれる理由があると考えている。

先月27歳になった。20代でしかできないことがたくさんあると宮沢さんは話す。「だから20代後半はいい意味で自己中心的になって、やるべきことをやり、とにかくさまざまな役と向き合って、もまれていきたい。そして30代になったら少し落ち着いて、自分が本当にやりたい作品を厳選して取り組んでいきたいです」

得意な英語を生かし、いつかは海外にも進出したいと胸を膨らませる。そんな宮沢さんの原動力になっているものは何か。それを最後に聞くと、少し考えてからこんなふうに語った。「エンターテインメントを多くの人に届けたいとか、もっと演技がうまくなりたいとかといった思いはあるのですが、それ以外に、自分を前へ前へと突き動かす力ってどこから生まれてくるのか、まだ自分でもよく分からない。だから今、それを必死に探しています」

ヘアメイク:Taro Yoshida(W)
スタイリスト:秋山貴紀

ヒーローへの3つの質問

宮沢氷魚さんの写真4

現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

何かの研究者かな。大学では環境学が専攻でしたし、川が好きなのでその研究者でしょうか。

人生に影響を与えた本は何ですか?

2018年、舞台「豊饒の海」に出演するにあたり、三島由紀夫さんの原作を読んだんです。全4巻から成る長編小説なのですが、正直難しかったです。でも、何か強いものを感じて、いつかまたこの本を読んで理解したいと思いました。そんなふうに思えた本は初めてでした。

あなたの「勝負●●」は何ですか?

おいしいものを食べる、でしょうか。何かおいしいものを食べて「ああ、今日も幸せだなあ」と思ってから、いざ勝負の場に行くようにしています。

Infomation

舞台「PARCO PRODUCE 2021『ピサロ』」に出演中!

1年ぶりのアンコール公演となる「ピサロ」が2021年5月15日(土)にPARCO劇場(東京・渋谷)にて幕を開け、6月6日(日)まで上演予定だ。「ピサロ」(原題「ザ・ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン」)は、16世紀に167人の寄せ集め兵士を率いて2400万人のインカ帝国を征服した、スペインの成り上がり将軍・ピサロの物語。異なる概念や宗教、文化間の衝突など、人類の根源的な対立を2人の人物を通して描いている。ピサロを演じるのは渡辺謙さん、インカ王・アタウアルパ役は宮沢氷魚さん。「この作品に携わってあらためて感じるのは、人間は同じ過ちを繰り返してしまうという悪い性質があるということ。差別とか対立など、『ピサロ』に描かれている500年以上も前の出来事はいまだに起きています。僕らが演じることで解決するとは思っていませんが、何かプラスの方向へ世の中が変わってほしという思いを持ちながら一人ひとり舞台に立っています。ぜひ見に来てください」と宮沢さん。

作:ピーター・シェーファー
翻訳:伊丹十三
演出:ウィル・タケット
出演:渡辺謙、宮沢氷魚、栗原英雄、大鶴佐助、首藤康之、外山誠二、長谷川初範ほか
公式サイト:https://stage.parco.jp/program/pizarro2021

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