「クルーズはどなたでも気軽に楽しめます」と、理解を深めるためのプレゼンテーションを行う船木さん
客船でさまざまな土地を巡るクルーズ。その日本における市場は、「元年」と言われる1989年以来、注目と停滞を繰り返してきた。しかしここ数年、市場は本格的に活性化し、大手旅行会社に専門デスクが設けられるなど販売スタッフも大幅に増加。きっかけの一つとなったのが2013年の「プリンセス・クルーズ」日本発着クルーズの就航だった。
豪華客船の旅が食事付きで1泊1万円台からと気軽な値段設定。日本各地と台湾や韓国、ロシア、ベトナムなど海外寄港地を巡る多様なコースがウリである。そんな米国企業プリンセス・クルーズの日本支社で営業課長を務める船木さんは、今回の波こそ本当の「クルーズ元年」だと語る。「日本の潜在需要が期待されて外国客船の来航が増えたことに加え、訪日客を増やすための港湾整備への官民一体の取り組みもブームを支えています」
船木さんは異業種から転職。07年のことで、「海運の経験があったのですが、人を運ぶ仕事は未知の分野で、旅行業界やクルーズのイロハを一から勉強しました。すぐにアラスカクルーズなどに業務乗船し、船内の乗務員の動きやサービスの仕方、出入国審査の方法などが実地で学べ、とても貴重な体験をしました」。
クルーズでは乗客は眠っている間に移動でき、グルメやエンターテインメントなどさまざまな魅力もあって、船木さんはすぐにこの仕事に魅了されていく。当初はさまざまな外国船社が提供するクルーズを取り扱い、プリンセス・クルーズもその商品の一つだった。それがやがて、その日本支社へ。「不安でいっぱいでしたね。総代理店としてクルーズ商品を取り扱う側だった時は日本の市場に合わせて希望も言えましたが、日本支社になると本社の意向に沿ったり、国際標準を考慮したりすることが必要となります」
しかし「クルーズという旅のスタイルをぜひ日本に普及させたい。そのために我々がいるんだ」という思いを強くし、日本人の旅行の嗜好(しこう)や求めるサービスなどを本社にかみ砕いて伝えることに注力した。すると意外にも、クルーズ業界では歴史ある本社が理解を示し、施設やサービスを日本人向けにカスタマイズしたクルーズが実現可能となった。
そこで船木さんたちは、いよいよ日本発着クルーズの商品企画にこぎ出す。だが問題があった。10万トンクラスの大型客船が入れる港は、日本では極めて限られていたのだ。
2017年の日本発着のプリンセス・クルーズは全28出発日(※チャータークルーズ含む)。18年は38出発日予定
客船で旅するクルーズ。その日本での最近のブームを生むきっかけの一つとなったのが「プリンセス・クルーズ」日本発着クルーズの就航だ。
開始されたのは13年。船木さんたちは、この日本発着クルーズの企画立案を担った。扱う客船は10万トンクラス。もともと大きな船が出入りできる横浜や神戸などのほかに、入港できる港はどこか。当初はコースの内容よりも、大型客船と3千人近い乗船客の受け入れが可能な港の調査が優先となった。
「とにかく会社を挙げて日本中のいろんな港にアプローチを掛けました。時には現地の港湾局や税関へ出向き、クルーズの説明をして先方の状況と折り合う。入港したらどんな観光ができるか、乗船客の動線は、などさまざまな点を話し合いました。こういう前例のないことはメールでのやり取りはダメですから、直接顔を合わせてのコミュニケーションに徹しましたね」
こうして一つひとつ丁寧に寄港地を開拓。お陰で現在では「日本の祭りを巡る」「桜前線を巡る」といった、テーマとストーリーを持ったさまざまなコース作りが可能となった。
「日本では、クルーズは非常にぜいたくで時間のある方のものという思い込みがあります。でも実際は違います。弊社のクルーズは、いわゆる豪華客船の旅が手頃な料金で若い方でも楽しめる。一度利用すればリピーターになっていただける方も多いので、まず興味を持ってもらえるよう戦略を練っています」
例えば社交ダンスや婚活、天体観測などの体験型プランを実施。「僕は最近、仕事も遊びも同じ目線で眺め、休みの日でも目に入ってくるものが、これもクルーズに結び付くんじゃないかとすぐに考えてしまいますね(笑)。このように開拓できるマーケットがまだまだ潜在し、いろんな挑戦ができるので、この仕事にはやりがいを感じます」
クルーズにかかわる仕事では、日々まったく違った業界や国籍、世代の人たちとの出会いがあり、それも刺激になっているという。「クルーズ商品は、いろいろな分野の多くの人が一つのものを目指し、それぞれの力を発揮して実現できるものです。だから立場の異なる相手をリスペクトすることは大切ですし、その中で僕は、人と人をつなぐ懸け橋のような存在になりたいと思っています。今後は、例えば学生の研修旅行として定着させたい。若いうちに異文化と触れ合える、そんな貴重な体験の場を提供したいです」
坂本龍馬のフィギュア
実は僕、坂本龍馬の生まれた日であり亡くなった日でもある11月15日が誕生日です。だから勝手ながら龍馬に自分自身を重ねているところがあり、彼が国のために行ったこと、人と人の懸け橋になったことに、自分の今の仕事を重ねています。世代や国籍の異なる人同士、そして違う職種の人たち。そんなさまざまな人と人をつなげる懸け橋になりたい。だから時々仕事で壁にぶつかった時に、この像を見て「よし」と、その思いに帰るんです。龍馬をはじめ、幕末は若くして散った志士がたくさんいてすごく興味がある時代。実は幕末の志士たちの舞台を巡るようなコースも今、考えているんですよ。
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