旬のイケメン俳優5人のCM起用、SNS展開など「アタックZERO」の「新しさ」を伝える演出に力を注ぐ／山本理恵さん

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旬のイケメン俳優5人のCM起用、SNS展開など「アタックZERO」の「新しさ」を伝える演出に力を注ぐ／山本理恵さん

ニーズに合わせてキャップ式ボトルと、片手で使えるワンハンドタイプを選べるのがユーザーにウケた。右の2本はドラム式洗濯機専用

花王の洗濯洗剤「アタックZERO」は、2019年4月の発売開始〜今年9月末の累計出荷本数が約1億5千万本（※花王調べ。本体換算）と好評だ。同社は長年の研究で完成させた新しい洗浄基剤「バイオIOS」を使い、「落ちにくい汚れゼロへ」「生乾き臭ゼロへ」「洗剤残りゼロへ」と3つのゼロを目指したまったく新しい製品として、既存の主力製品「アタックNeo」を廃止して置き換えるという思い切りのよさを見せた。

「17年に発売30周年を迎えたアタックが、次の30年どう未来のお洗濯を担っていくか。弊社のリサーチでは、近年、汚れの落ちにくい化学繊維の衣料が増えたり、家事をシェアする時代になってお洗濯の担い手が多様化したりしていて、この製品はそんな現代のお洗濯の悩みに応えるものです」。そう語る山本さんは、マーケティング担当として研究、開発部署も含む同製品ブランドの司令塔のような役割を担う。

身近な商品にかかわる仕事がしたかったという夢をかなえ、花王に入社後はベビー用おむつやお風呂洗剤などの担当を経て16年に現在の部署へ。アタックZEROの開発チームに加わったのは発売前年の秋のことだ。すでに14年から開発が始まっていた同製品は、「衣類よみがえるゼロ洗浄へ」というキャッチコピーをはじめコンセプトの骨格はできていた。

「社内一丸となって進める新製品のチームに入れることにワクワクしました。バイオIOSはアブラヤシの実から食用油を採った後の残りから作られていて、花王のサステナブルなモノ作りを追求する長年の研究から生まれたもの。衣類は通常、洗うほど黄ばんでいきますが、この洗浄力に優れた洗浄基剤を使うと洗う度に白さがよみがえるんです。そんな従来の常識を覆すような特長をどう伝えればいいか。悩みました」

まずは19年1月に開かれたメディア向け新製品発表会。前述の特長をいかに驚きをもってメディアにアピールするか。社内外の多くの担当者とたくさんの検討を重ねた。

その際、仕事の優先順位を毎日決めた。「私の対応が遅れると直接やり取りした方の先にいる方まで困るので。とにかく受け取ったボールはすぐに投げ返すように心掛けました。それでもあちこちから飛んでくるし、急ぐとミスもする。大変でしたが、今回は単なるリニューアルではなくまったく新しいステージへ上がることをアピールしたいと力が入り、その目的に向かってかかわるみんなが前向きに取り組んでいたので助けられました」

旬のイケメン俳優5人が「アタックZERO」の特長を語るテレビCMシリーズは、19年だけでも11本投入され、SNSでも大きな話題に

19年4月、「衣類よみがえるゼロ洗浄へ」をキャッチコピーにした花王の洗濯洗剤「アタックZERO」が発売され、たちまちヒット。その裏にはマーケティング担当である山本さんたちのコミュニケ―ション戦略があった。

まず「イケメンだらけ」と話題になったテレビCM。松坂桃李さんや菅田将暉さんら若手俳優5人を「#洗濯愛してる会」のメンバーとし、アタックZEROの魅力を語る会話劇のようなスタイルにした。「今回は伝えたい製品の特長が多かったのですが、ステレオタイプのCMだと注目してもらえない。そこで、イケメンの若手俳優さんを集めた異色のCMなら視聴者にも耳を傾けてもらえるのではないかと」

発売時から一気に4本投入されたCMは、狙いどおり放送開始直後からSNSで話題となり、「#洗濯愛してる会」のハッシュタグでアタックZEROの情報があふれた。山本さんたちが工夫した成果である。このデジタルの時代、SNSでの盛り上がりは必要不可欠だが、そこに注力したのは特に20〜30代のミレニアル世代に振り向いてほしかったからだ。

「アタックは長く愛用されているブランドなので、お母さんが使う洗剤というイメージがあり、これを変えたかった。SNS上で商品やCMの情報が拡散され、そこから徐々に皆さん自身の使用体験の声にシフトして、使った感想を語りだし、お洗濯が『自分ごと化』される。今回多くの方が自然な言葉でお洗濯についてポジティブに語っていて、正に若い世代にもアタックブランドが浸透してきたと感じています」

アタックZEROはまた、利便性も追求。片手で計量できるワンハンドプッシュ容器の開発では試作が100を超える。そんな容器に多くの反響が。「私たちはお子さんを抱きながら片手で洗剤を投入できるなど色々なシーンを考えましたが、目の不自由な方がプッシュ回数で量を把握できるとか、皮膚の弱い方が液だれを避けられるとか、お客さまがそれぞれに感じられたさまざまな喜びの声を寄せてくださった。私たちが十分伝えきれていない、ユーザーの暮らしに寄り添えるポイントがまだあると気づきました」

アタックZEROは20年5月、部屋干し臭への新たなアプローチを加えてリニューアル。「消費者とのコミュニケーション開発に心を砕いてきましたが、やはりユーザーの気持ちや暮らしを見つめることが大事だと実感しています。商品をまだ使っていただいていない方にも振り向いてもらえるよう、さまざまなチャレンジをしていきたいです」

過去に担当した思い入れのある製品

私が以前担当していた製品を職場のデスクに置いています。一つは「キッチンマジックリン」。パッケージリニューアルを担当したのですが、貼りつけるシールに描かれている女性の髪型は、当時の私に似せてデザイナーさんが描いてくれました。もう一つは「アタックプロEX石けん」。容器にオリジナルシールを貼れる「Myアタック石けんキャンペーン」を行なった時、サンプルとして私の名前をローマ字で入れてもらったんです。見ていると当時の苦労や、完成した時の喜びなどをあらためて思い出し、今取り組んでいる製品についても頑張っていこうという気持ちになりますね。