



左から「はちみつレモン」「定番レモン」「塩レモン」「鬼レモン」、そして新商品の「カミソリレモン」。味とアルコール度数が異なり、パッケージも微妙に違う
全世界のコカ・コーラ社において初となるアルコール飲料を発売した日本コカ・コーラの、レモンサワー専門ブランド「檸檬堂(れもんどう)」。九州地区での限定販売を経て、2019年10月に全国展開(※沖縄県を除く)をスタートし、瞬く間に缶チューハイの人気ブランドへと躍り出た。
その好評な味わいを生み出す「前割りレモン製法」は、皮ごとすり下ろしたレモンをあらかじめお酒になじませておくことで、レモンの風味を存分に引き出すものだという。昨年末発売の新商品を加え、ラインアップは五つ。「それぞれ味とアルコール度数が異なります。檸檬堂をレモンサワー専門店と位置づけ、来店したお客さま各人の好みに合わせたという感じです」
そう語るのはシニアブランドマネジャーとして檸檬堂の立ち上げから指揮を執っている、九州生まれのサブストロームさんだ。企画力を買われ、スカウトされて同社に入社。「カナダドライ」「ファンタ」など炭酸飲料の担当を経て、今回のアルコール市場参入プロジェクトに抜擢(ばってき)された。「実は缶チューハイはほとんど飲んだことがなかったので意外でした。でもお酒は好きですし、どうせ取り組むならチャレンジングなほうが面白いと前向きに受け止めました」
市場調査では、さまざまなフレーバーの中でもレモンが最も売れていて約3割を占めていた。「レモンサワーは1950~60年代に酒場で生まれ、現在はブームで各店が色んなこだわりのものを出しています。調べるほどに歴史も現代情勢も面白く、このレモンサワー限定のブランドを作れないかと考えました。最も競合が多い所に切り込むのは困難ではありますが、難しいのはアルコール製品に挑む最初からのこと。それにニーズがあるならチャンスもありますから」
アルコール市場への参入は社内でも極秘。少数精鋭でチームが組まれ、そのメンバーとサブストロームさんは全国の居酒屋を巡った。そこでヒントを得たのが前割りという製法だ。レモンは皮に含まれる油に最も風味があり、お酒に漬けておくと効果的に抽出できる。「鹿児島では焼酎と水を瓶に入れて仕込み、まろやかな水割りにするという話も参考になりました」
居酒屋巡りでは、ほかにもインテリアや店の雰囲気などを探り、新ブランドのコンセプト作りに生かしていった。「コカ・コーラ社が初めてアルコール飲料を作るわけです。一過性のものではなく息の長いものに育てなければならないと、私たちは『最強のレモンサワー』を目指しました」


「檸檬堂」の全国販売に向けた企画書など
缶チューハイの新たな人気ブランド「檸檬堂(れもんどう)」。最も売れているフレーバー「レモン」に限定した商品で、コカ・コーラ社初のアルコール飲料だ。その開発当時、「最後発のメーカーとしてどういう製品を作れば競合に勝てるのか」と、シニアブランドマネジャーのサブストロームさん始め開発チームの話し合いは続いた。
メンバーそれぞれに専門分野があり、それを初のアルコール飲料開発に生かしたいと情熱を燃やしていた。最も困難で、かつ力を入れたのが味とパッケージ。味の試作は何十種類もできてきて、メンバーによる試飲が繰り返された。「アルコール市場への参入は社内でも秘密だったので、試飲も朝や夜、人目につかない会議室で行いました。少しずつとはいえ数十種類を飲むと、ちょっとほろ酔いになってきて『もうこの味でいいよ』となるのが困りものでした(笑)」
パッケージは、これまでにないものにしたいと決めていた。「従来の缶チューハイは、多くが銀色の缶に果実の断面が載ったデザイン。我々はそうではなく、家飲みのホッとする時間に、頑張った人をねぎらうような、人肌の感じられるものがいいのではないかと考えました」。そこで、居酒屋で出迎えてくれる店主の前掛けをイメージしたのが現在のパッケージだ。「おしゃれで日本らしいものになり、今までとは違うターゲットも見込めると思いました」
更にチームでは、レモン以外のフルーツは扱わないことなど、やるべきではないことも徹底議論して結論を出していた。開発のステージが進み、社内の上層部に詳細が上がって、「レモンだけで勝負できるのか?」「缶にレモンの断面がないとおいしそうに見えない」といった意見が出ても、熟考を重ねていたので納得のいく説明ができたという。
発売は、まず焼酎文化が盛んな九州地区限定で18年5月に開始。好評を得て、九州に出張で行った人が帰りに「密輸しました」などとSNSにアップするなど話題となる。そして翌年10月、全国発売(※沖縄県を除く)。販売数は計画を大きく上回り一気に人気を獲得。「購入者が缶と一緒の写真をSNSにアップしたりして、檸檬堂への愛を感じてすごくうれしいです」
コカ・コーラ社として世界初となるプロジェクトは、困難も多かった。「僕もチームのみんなも、壁があってもそれを楽しむぐらいの気持ちで乗り越えてきました。それによって自分たちの納得のいくものができた。だからそのお返しで、より多くの方に愛してもらえるブランドになったんだと思っています」

仕事に刺激を与えてくれる本と観葉植物
レモンサワーが誕生した1950~60年代の時代が持つ熱量はいつも刺激を与えてくれるので、当時の書物を何度も読み返しながら製品のアイデアを考えています。そして疲れた時は、刺激と癒やしの相反する二つの価値が共存する棘(とげ)のある観葉植物と戯れながら、ほどほどに休むようにしています。



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