期待に応えて動くだけで仕事は楽しくなる
ひとり:大泉さんは、仕事に関して常に受け身だとおっしゃっていましたが、20歳から仕事が途切れていないことはすごいことです。その秘訣は何でしょう?
大泉:人の期待に応えたいという気持ちが異常に強くあって、それが功を奏しているのかも知れません。今回の映画「青天の霹靂(セイテンノヘキレキ)」もそう。僕はお笑い芸人さんを尊敬しているので、ひとりさんから「漫才のシーンがあり、シリアスだけでなくお笑いの部分もきっちり撮っていきたいので大泉さんにお願いしたい」と言われ、本当にうれしかった。確かに「何でこんな難しい手品もやらせるの」とボヤいてましたが、心の底ではその期待に応えようと懸命でした。
ひとり:人に認められたいという気持ちが強いということ?
大泉:そうです。自分からは重い腰を上げないのですが、頼まれると心に火がつき、全力投球で頑張ってしまう。ちょっとズルいなと自分でも思うのですが、自分からは動かない。先のことを考えるのも苦手。ひとりさんはどうですか?
ひとり:つかみどころのないような大きな目標は立てないのですが、自分の力でやれば出来そうな目標は掲げることがあります。
大泉:例えば?
ひとり:ピン芸人になったころ、あるお笑いライブの終わりに、いきなり「場所も何も決まっていないですが、8月に単独ライブをやります」と宣言したんです。事務所にも相談なしに。でもお客さんに言ってしまったら後には引けないじゃないですか。そこから日程と場所を決めて、ネタを作って。そんな風に自分を追い込むための目標を立てたりすることはあります。
大泉:なるほど。では、仕事で大切にしていることは?
ひとり:当たり前のことですが、バラエティー番組などでは人の話をちゃんと聞いてから話すようにしています。役者をやる時も同じ。相手のセリフをきちんと聞いてから自分のセリフを言う。それが出来ている人は、芝居が全然違いますから。大泉さんは人の話も聞くし、よく観察していますよね。現場ではとにかくサービス精神旺盛で動いてくれるし。
大泉:自分より現場の雰囲気の方が大事なんです(笑)。現場を明るくするためなら何でもやる。それでも空気が良くならない時は、何か負けた感のようなものが残るほど。
ひとり:今回の現場でも、俳優さんたちが楽しく過ごせるよう気を配ってくれたのはもちろん、200人ほどのエキストラさんまで盛り上げてくれて。頼んでもいないのに、わざわざ集めてあいさつをしてくれたでしょ。みんなにお礼が言いたいからって(笑)。しかも15分以上しゃべっていましたよね。
大泉:それで撮影が押したので、ひとりさん怒っていましたね、「いつまでやってんだ」って(笑)。
すべてうまくいく。そう思うことが幸せの始まり
大泉:今回、ひとりさんの才能を目の当たりにしたことで、刺激を受け、いつか僕も映画監督をやってみたいなって思いました。
ひとり:楽しかったです。僕もまた挑戦したい。もともと飽き性なのでテレビなどの単発の仕事と並行し、小説や映画などの長期的な作業があった方が、バランスも取れて調子いいんです。すごく気持ちが安定するし。だから映画を撮り終えた今は、実は精神的にあまり良くない状態。何となくフワフワしていて落ち着かないんですよ。
大泉:ひとりさんは合理的で仕事が早い一方、結構ギリギリまで粘るという面もありますよね。
ひとり:時間をかけることを案外大事にしているんです。例えば小説や脚本の場合は、以前なら「締め切りまで書けない」と言ったり、神が降りてくる瞬間を期待して取りかかるのをギリギリまで延ばしたり。でも、結局は早く書き始めて何回も推敲(すいこう)した方が断然出来はいいんです。もちろん、結果的に最初に書いたものが良い場合もあるのですが、その後に費やした時間が無駄とは思わない。最初のものが良かったと決めるまでに必要な時間だったわけですから。
大泉:なるほど。僕の場合は考える時間が長すぎて書き始めるのが遅いので、見習わなければ。ところで、ひとりさんは基本的にはシャイですよね。撮影当初なんてほとんど話してくれませんでしたし(笑)。でも、テレビのバラエティー番組やステージでは思い切りハジケています。切り替えはどうやって?
ひとり:テレビに出始めたころ、芸能人がいっぱいいる番組で全然発言が出来なかったんです。せっかく面白いことが頭に浮かんでいるのに、なぜ僕は言えないんだろうって悩み抜き、「第一声を出すのは勇気がいる。でも右手ならすっと挙げられる」と思って手を挙げるようにしたんです。そうしたら司会者が僕をあててくれるようになった。おじけづく自分の背中をそんな風にやや強引に押してみるところから始めた、という感じです。大泉さんは、いつも自然体で楽しく仕事されていますよね。
大泉:僕は小さなことに対してはネガティブなんですが、こと仕事に関してはプラスのイメージしか持っていないんです。実際、30歳で東京へ進出した時も、「大丈夫かな、僕に仕事がくるのかな」みたいなことはあまり思わなかった。それよりも、「そのうち自分にとってこれだと思うような仕事がくるんじゃないかな」という期待の方が強くて、楽観的でした。
ひとり:何でもうまくいくと思うことが幸せを呼び寄せている感じ。うらやましい。超前向きですね。
大泉:ネクラな部分もありますけどね。「どうせ明日も雨でしょ」とか(笑)。
ひとり:それ、大したネガティブではないですよ。
大泉:そうですね(笑)。
リーダーが語る、アシタを開く言葉
大泉 洋さん
「うまくいっちゃう」
僕は何でも「うまくいっちゃう」と思っているところがあるんです。ネガティブなことも考えるのですが、大局で人生を見た場合、何かあってもトータルでうまくいくって思っているんですよね、いつも。
劇団ひとりさん
「風が吹けば桶屋がもうかる」
一見、関係がないような場所や物事に影響することのたとえですが、人生はこれの繰り返しなのではと思っています。僕の場合、別の番組を観ていてたまたまザッピングしたら「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の画面が出て「お笑い甲子園」の出場者募集を知ったんです。もし、あの時、ザッピングしていなかったら、今の自分はないし、今の家族もいないわけですよね。人生にはそんなことが山ほどあるんだろうなって思っています。
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応募締め切り:
2014年6月19日(木)23:59
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※ご入力いただいた個人情報は、当選者への連絡、景品(賞品)の抽選・発送の目的以外で使用することはありません。
※ご応募はお一人さま1回限りとなります。
大泉 洋
俳優。1973年北海道生まれ。大学在学中に現在も所属する演劇ユニット「TEAM NACS」結成。北海道テレビの深夜番組「水曜どうでしょう」でブレイクし、2005年のドラマ「救命病棟24時」で全国区の人気者に。主な出演映画に「探偵はBARにいる」シリーズ、「清須会議」など。「TWILIGHT ささらさや」「ぶどうのなみだ」が今秋公開。著書に「大泉エッセイ〜僕が綴った16年」。
劇団ひとり
お笑いタレント。1977年千葉県生まれ。93年の「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の「お笑い甲子園」出場をきっかけにデビューし、2000年、「劇団ひとり」として活動開始。俳優として映画やドラマでも活躍。06年「陰日向に咲く」で小説家デビュー。その他、「そのノブは心の扉」「青天の霹靂」。初めて監督を務めた映画「青天の霹靂」が5月24日(土)から全国ロードショー。