分からないことだらけでも、やっていける
柚希:バレエ引退はどのように決意されたのですか?
草刈:ケガもあり、41歳の時に「白鳥の湖」はもう来年は踊れないと悟って。日本では古典ものが踊れなくなると極端に舞台数が減ってしまうんです。年に数回踊るために体を維持するのは精神的にもしんどく、だったら別の道を考えようと。次に何をやるかは結構悩みました。初めて出演した映画『Shall we ダンス?』ではあくまでバレリーナ役でしたし、主人(周防正行さん)は映画監督という環境ですが、私には俳優は向いていないと思い込んでいたのです。しかし、表現したいという思いは消えず、それが女優の道につながっていきました。
柚希:私も草刈さん同様、次に何をしようか随分考えました。宝塚歌劇団は世代交代が必要だし、私自身も数年前からそろそろ次へ進まなければと思い始めていて、2014年の宝塚100周年で役目を果たし、引退を発表。ただ、先輩の多くは女優になられていますが、男役しか経験のない私に女優は無理だと思いました。
草刈:でも、引退後ミュージカル「プリンス・オブ・ブロードウェイ」に出演され、すてきなダンスを披露されていたじゃないですか。
柚希:女優というものがよく分かっていないのですが、何か出会えたもので自分自身が一歩でも進めたらいいなと思ってお受けした仕事です。草刈さんと同じで表現することを続けていたいんだと思います。女性としてのお芝居をまだしたことがないので、どうしたものやらという感じなのですが。
草刈:私も柚希さんも女優としての下地がないから、一般論としての女優というものに自分を合わせること自体に無理がある。だから作品ごとに自分に何ができるかを考えて進んでいくしかない。その積み上げが力になっていくと思うんです。
柚希:そうかも知れません。昨年、稽古のために米国に3カ月滞在したのですが、すごくいいタイミングでした。あちらの女性って人と違うからいい、誰かと同じにしなくていいという価値基準で行動しているでしょ。まさに草刈さんみたい。自分というものがあって個性的で、生き方がステキなんです。退団直後は髪を伸ばしたりワンピースを着たりして、周囲が期待するイメージの女優になったほうがいいのかなと考えましたが、いや変に無理するのはやめようと。人に迎合せず、今までの自分も大切にしながら、新しい体験を自分の中に入れ、自分らしく進んでいけばいいのかなって思います。米国のお陰でそう感じられ、すごく気が楽になりました。
草刈:それでいいんじゃない? 私だってまだ芝居を始めて7年。分からないことだらけでやってますから。
柚希:草刈さんでもそうなんだと思うと、すごく励まされますね!
あきらめない癖をつけると成長が違ってくる
柚希:2016年4月から舞台に出演されるそうですね。
草刈:世界中で何度も上演されているヒットミュージカル「グランドホテル」です。私は引退寸前のバレリーナ役。自分の経験が生かせる役だからこそ、逆にどう演じるか難しいところですが、みている方に楽しんでもらえるよう頑張りたいですね。
柚希:私は、退団後初のソロコンサートを控えています。ライブはお客様と距離が近いのでとても楽しみ。現役時代とは違う、新たな挑戦も盛り込む予定です。
草刈:いいですね。私も何でもやってみたい。目指すことが見つからないという人もいるけれど、今やっていることをあきらめないことが大切な気がします。特に若いうちはうまくいかないことが多いのが当たり前なのに、そこから逃げたり、目を背けたりしていると、30代以降、同じことを繰り返して何も見いだせないような人生になってしまうと思うんです。
柚希:私も気を付けないと。
草刈:とにかくあきらめない癖をつけるといいと思います。つらくても必要以上につらいと考えなくなると、1年後の成長が違ってきますよ。
柚希:私の周りにも「向いていない」とか「あの人はチャンスが来たからいいな、自分はこんなに頑張っているのに来ないな」とかと仕事に悩み、落ち込む人がいますが、チャンスは誰にでも来てるよって私は思います。案外、見逃しているだけ。チャンスに気づくには自分にひたすら矢印を向け、前の自分と今の自分はどうだ、昨日と今日はどうだと見つめることが大事な気がします。人と自分を比べてばかりいるからうまくいかないし、チャンスも見えない、つかめない。
草刈:結局、自分で自分に振り回されてしまっている。
柚希:そうなんですよね。それにしても、草刈さんの原動力になっているものって何ですか? 負のスパイラルをみじんも感じられないのがすごいんですが。
草刈:理屈ではなく、「やらなくちゃいけない」みたいな気分に突き動かされているところはありますね。何かに一心不乱で取り組んでいると、時間も含めすべてがとても良い形で流れる。その感覚にいることが好きなんでしょう。それと、創造的なことにかかわりながらいろいろ考えている瞬間こそ、一番自分が生き生きしているって分かっているから、今更それをやめるというのも無理なんでしょうね。
柚希:私もずっと自分の限界に挑戦し続け、絶対無理という壁を何度も乗り越えたし、その瞬間の喜びを知ったので、まだまだできることがあるはずって思ってしまう。だから、これからも自分の可能性を発掘していきたい。
草刈:追求したいものがあるって十分伝わってきます。
柚希:ありがとうございます。今回は元気をたくさんもらえる対談でした。舞台もぜひみに行きますね。
リーダーが語る、アシタを開く言葉
草刈民代さん
「あきらめない」
若いころはうまくいかないことが多いのは当たり前。そこから逃げたり目を背けたりすると後々同じことを繰り返すことになり、結局何も見いだせなくなる。だからこそ、若いうちからあきらめないクセを身に付けることが大切です。
柚希礼音さん
「一生勉強」
草刈さんと対談させていただき、第一線で活躍している方は常に向上心を持って新たな壁を乗り越えようと努力し続けていることを改めて実感しました。同時につくづく「一生、勉強だな!」と思った次第です。
キボウノアシタ読者プレゼント
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応募締め切り:
2016年2月18日(木)23:59
※当選者の方には、当選のお知らせと景品送付先の確認のため、入力いただいたメールアドレス宛に締切後1週間以内にご連絡させていただきます。当選の発表はこのご連絡をもってかえさせていただきます。
※ご入力いただいた個人情報は、当選者への連絡、景品(賞品)の抽選・発送の目的以外で使用することはありません。
※ご応募はお一人さま1回限りとなります。
草刈民代
東京都出身。1996年周防正行監督の『Shall we ダンス?』で主演を務める。第20回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞。2009年バレエ界から引退し、以後、女優として映画、ドラマ、舞台で活躍。12年映画『終の信託』で第36回日本アカデミー賞優秀主演女優賞。4月9日(土)から上演のミュージカル「グランドホテル」(4月9日〜24日/赤坂ACTシアター、5月5日〜8日/梅田芸術劇場メインホール)に出演予定。
柚希礼音
大阪府出身。1999年宝塚歌劇団入団。2009年から星組トップスターを務める。松尾芸能賞新人賞、菊田一夫演劇賞受賞。15年5月に退団、同年10月、ハロルド・プリンス演出『プリンス・オブ・ブロードウェイ』に出演。3月11日から退団後初のソロコンサート「REON JACK」(3月11日〜17日/梅田芸術劇場メインホール、3月26日〜4月11日/東京国際フォーラム ホールC)を開催予定。
(ヘアメイク/CHIHARU スタイリスト/仙波レナ)