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スペシャル対談 vol.12 「諦めない心」が導いてくれる(後編)井上芳雄×栗山千明

小手先ではなく体全体でぶつかれ

栗山:私の場合、経験を積めば積むほど自分のできなさ加減が見えてきて、どんどん課題が増えていくんです。

井上:僕もそうですよ。歌はわりと得意だし才能もあるのかなと自負していたので、芝居ができなくても歌でカバーすれば何とかなると思っていました。でも、経験を重ねていくと自分でも分かるんですよね、本当に芝居ができないってことが。

栗山:井上さんでもそうなんですか! その課題はどう乗り越えてきたのですか?

井上:井上ひさしさんの遺作となった戯曲、舞台「組曲虐殺」で作家・小林多喜二の役をやらせてもらった時、「小説を書く時は小手先で書くな、体全体でぶつかっていかなくてはダメだ」というセリフにガツンとやられました。ほかにもいろいろ教えられることがあり、この作品に出演してからは意識が百八十度変わりましたね。

栗山:と言うと?

井上:それまでは自分は芝居が下手なんだからやってはダメだと思いながらやっていました。でも、やっていいとか悪いとか考えることすらおこがましいな、と。機会を与えてもらっているんだから、下手でも何でも全力で挑むしかないと腹をくくれた。

栗山:本当にそのとおりですよね。私、10代のころは幽霊や人殺しなど特殊な役が多かったんですが、20歳を超えてから少しずつ人間らしい役をやらせていただくようになって、自分の下手さがより明確に分かってきました。それでも求めてもらえる、それがすごくありがたい。芝居が下手だとかうんぬん言う前にまずは全力投球。自分にできることを一生懸命やるしかないんです。

井上:その謙虚さも、第一線で活躍し続けるうえで大切なことです。

栗山:それと昔、演出家の蜷川幸雄さんに「舞台を嫌いにならないで。楽しんで」と言われ、楽しむことを心掛けているかな。

井上:えっ、そんな優しい言葉を! 僕も蜷川さんの作品に2回出演させてもらったけれど、最初の時なんてボロボロでした。結構めげましたよ(笑)。

栗山:蜷川さんは、見込みがあると思った俳優さんには厳しいんですよ。

井上:温かいフォロー、ありがとうございます(笑)。

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