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誰しも転職をする背景には複合的な理由がある。しかし、それらすべてを本音で述べた結果、無意識のうちに前職・現職のグチをこぼしてしまったり、言い訳を重ねたりしてしまい、明確な転職理由を伝えきれない人が実は多い。きちんとしたキャリアプランを持って転職に臨んでいると面接官を納得させるためにも、面接では転職理由をポジティブに、明確に答えることが必須だ。 |
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髭 さん : |
面接者の質問には、すべて意図がありますよね。その意図をくみとれずに、なんでも正直に答えてしまう人が、実に多いです。 |
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細田さん : |
そうですよね。転職理由を聞く場合、私たちの目的は主に2つ。1つは、「目的意識を持って転職を考えているか?」というキャリアプランを見極めるため。もう1つは、「前職と同じ理由で辞めてしまったら困るな」という不安解消のためです。 |
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髭 さん : |
それはありますよね。だからこそ何回も転職の経歴がある場合は、バラバラの転職理由を言うのではなく、一貫性のある理由を答えることが大切です。「困難に出会うたびに、辞めてしまうのではないか」と思われないためにも。 |
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細田さん : |
転職には、誰しも複合的な理由があると思います。しかし、面接では、マイナスの部分はなるべく言わないのが基本。このことを忘れてしまっている挑戦者も多いように思えました。これを試すために、私はたまにマイナスの理由を引き出そうと、誘導尋問をすることがあります。 「残業が多かったんですね。大変だったのでは?」なんて。これに引っ掛かって素直に胸の内を明かしてしまい、グチをこぼしてしまう人もけっこう多いんですよ。 |
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髭 さん : |
一度始まってしまうと、「会社での評価が低い」「部下が先に出世した」など、次から次へとグチをこぼしてしまって止まらなくなった人もいましたよ。実際に現職での不満をきっかけに転職を考えるケースが多いので、不満があったこと自体は仕方がないのですが、面接では「自分のキャリアプランを話すのだ」というスタンスが基本です。 |
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細田さん : |
おそらく、前の職場での悩みや鬱憤(うっぷん)を引きずったまま面接を受けてしまっているんだと思います。嫌だったことやつらかったことは友人などに聞いてもらって消化し、気持ちを切り替えたうえで、転職活動を始めることが大切ですね。 |
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髭 さん : |
僕が転職希望者によくアドバイスするのは、「こういう仕事をしたい」「こういう力を発揮したい」というポジティブな転職理由を事前に作り、自分自身に信じ込ませる方法です。さらに友人や親などの第三者にそれを話して聞かせると、頭の中でただ考えているよりもずっと、自分のものとして定着し、実際の面接でも上手く話せます。ポジティブな理由を、明確に話せるようにしておくことが、第1の鉄則ですね。 |
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質問に対する回答や説明は、長ければよいわけではない。むしろ簡潔に、訴えたいことの要点が明確に伝わるように話すべき。話を聞く側の立場をイメージして事前に話したいことを整理しておき、相手の興味を喚起するような論理の組み立て方をすることが必要だ。 |

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髭 さん : |
質問に対して答える時に、話の最初から最後までの説明が長く、冗長に話す人もけっこう多いですね。説明は長くなればなるほど、ポイントが伝わりづらくなり、効果的なアピールができなくなると思うのですが。 |
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細田さん : |
冗長になる理由は2つあると思います。1つは、正直に、丁寧に話そうとしすぎるから。もう1つは、十分な準備をしてこなかったために、言い訳のような説明をはさんで回答しようとするからです。どちらにしても、ある程度想定できる質問に対しては準備をしておき、話す内容を整理しておくことですよね。 |
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髭 さん : |
私がよく言うのは、自分のセールスポイントを、「1本勝負」で絞り込んでおくのも手だということです。例えば前職で学んだことを聞かれたり、新しい職場で生かしたい経験・スキルを聞かれたり、どんな質問を受けた時でも、この「1本」のセールスポイントに関連づけて答えるようにすれば、ぶれないし、質問のたびに長々と説明をする必要もありません。 |
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細田さん : |
ビジネスの企画書と同じで、面接での発言も、最初にズバッと「結論」を提示することです。意図することを明確かつ簡潔に述べるのが一番大事。 それについて面接官が興味を持って質問をしてきたら、詳しく説明すればいいのです。 |
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髭 さん : |
企画書と同じように、というのは、わかりやすくてよいですね。自分自身についてのプレゼンテーションをするつもりで、入念な準備をしていくべきでしょうね。 |
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面接は短時間内での勝負。そのなかで、スキル・経験を面接官に理解してもらうためには、具体的にイメージできる要素を挙げることが重要となる。「すべての質問は自己PRのチャンス」と考えて、具体的に話せるエピソード、数字の実績などをいくつか準備してから、面接に臨むべきだ。 |
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髭 さん : |
転職者は、自分のスキルやキャリアをわかりやすく面接官に訴えることが非常に重要ですが、多くの人は、ただ今までの業務内容を列挙するだけになってしまいがちでした。基本的なことは職務経歴書に書いてあるわけですから、「すべての質問は、プラスアルファのPRをするチャンス」だと認識すべきです。その場合に効果的なのが、実績や業務量を数字で表現し、説明することですね。 |
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細田さん : |
私もそれは、ほぼ毎回の面接でアドバイスしていたように思います。実績の説明に数字や具体的なエピソードを盛り込んだほうがよい理由は、面接官の頭の中に瞬時にイメージが湧くからです。例えば「自動車のセールスをしていました」と言うよりも、「1カ月で100台自動車を売っていました」と言ったほうが、実績が伝わります。 |
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髭 さん : |
売り上げなど、実績に直結するPR材料が思い当たらない人は、業務量などを数字に落とし込んでみるのもおすすめですね。 自分ではルーティンワークだと思っていることでも、客観的な視点で見直すと、発見があるはずです。 |
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細田さん : |
私が面接した、コールセンター業務に就いていた女性がそうでしたね。「1日、何本ぐらいの電話応対をしているのですか?」とこちらから水を向けてようやく、「1日3,000本」というすごい数字が出てきました。彼女にとっては日々のルーティンワークだったため、それがセールスポイントになるとは思っていなかったのです。 |
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髭 さん : |
3,000本もこなしていたのに、アピール材料として自分から持ち出さないなんて……。やはり客観的に自分の仕事量や評価を認識するためにも、成功エピソードを書き出すなどして、まとめてみるのがよいでしょうね。表で整理してみるのもおすすめです。人からほめられた点、評価された点なども書き連ねて、志望企業や職種にどうマッチするかを考え、アピールポイントを絞りこんでいければベスト。分からない人は、職場の同僚などに聞いてみるのもよいですね。 |
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応募理由を尋ねる面接官の本音は、「入社したら、どんな利益を生み出してくれるか」ということだ。「こんなことをしたい」「こんなスキルを伸ばしたい」と個人的な希望や熱意を語って終わってしまいがちな挑戦者が多かったが、応募理由では、自分のスキルや価値をアピールし、面接官に「うちで働いてほしい」と思わせるように組み立てるべきだということを理解しておきたい。 |
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細田さん : |
志望理由も、面接では必ず聞く質問ですが、「こんなことに挑戦したい」「この分野に興味があるから」といった個人的な希望や興味を答えて終わる方が、非常に多いですね。 |
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髭 さん : |
私たち面接官が知りたいのは、あくまでも「この人はどんなスキルを持っていて、入社したら何をしてくれるか」という貢献度であることを、転職者はつい忘れがちのようです。「挑戦したい」と言うだけではなく、「この事業であれば、自分のこういった業務ノウハウが生かせて、御社に貢献できる」という言い方に、置き換えるべきでしょうね。 |
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細田さん : |
そうですね。やはり重要なのは、採用側の立場に立ち、「自分を採用したら、企業にメリットがある」と思わせる発言ができるかどうか。本音は自己実現、キャリアアップであってもよいですが、面接でこれだけを答えるのは、自己中心的な印象を与えてしまいます。「勉強したい」「スキルアップしたい」という「したい」レベルの話だけで終わらせるのはNGですね。 企業は、あくまでも労働力の対価として、社員に給与を払うのですから。 |
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髭 さん : |
そこでさらに、キャリアプランの説明もできるとよいですよね。「自分が御社に入り、このスキルを伸ばすことで、将来的に御社の業務効率アップに寄与できる」と、自分のキャリアプランと会社への貢献をつなげて話せれば上出来じゃないでしょうか。 |
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細田さん : |
「ちゃんとしたキャリアプランを持っている。さらに、会社の利益にもなる」と面接官が納得してこそ、採用に結びつく、ということですよね。 |
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ここまでの話から共通して言えることは、面接前の準備・心構えは必須だということ。「話に具体性がない」「説明が冗長になる」「深く突っ込まれると答えられない」などの基本的なミスはひとえに準備不足に原因がある。「準備をする」という積極的な行動をとることで、内定を得る「内定力」を養ってほしい。 |
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細田さん : |
今までの事例を振り返ってみて、やはり圧倒的に準備不足だと感じる人が多かったと思います。 |
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髭 さん : |
そうですね。私は「行動力=内定力」だとよく言うのですが、面接の本番前にいかに準備行動をしておくか、これが内定をつかむ力になると思うのです。行動には2つの意味があって、1つは、「キャリアの棚卸し」やキャリアプランの整理など、自分自身の分析。もう1つは企業の分析で、この両方の準備が重要なんです。 転職理由、応募理由、実績、入社後に何をしたいか、といった基本的な質問に対しては、必ず回答を準備しておくべきなのはもちろん、より難しい企業研究をきちんとしておくことで、面接時に話せることの引き出しも増えますし、気持ちの余裕も違ってきます。 |
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細田さん : |
行動力を発揮して企業に近づいていこうとする姿勢そのものも重要ということですよね。インターネットや雑誌で情報を集めるだけでなく、応募企業の店舗を覗いたり、商品を買ったりすることも企業研究。どんな職場でもフットワークの軽い人が求められますが、転職でもフットワークを生かした準備が、成功のカギとなります。 |
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髭 さん : |
ただし、柔軟性も大切で、「これだけ準備をしたから」と意気込みすぎると、想定外の質問が投げかけられた時に動揺してしまうこともありますよね。そういう時には、「緊張しています。申し訳ありません」と正直に認めてしまい、あとまで引きずらないことです。 |
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細田さん : |
あと、面接には応募企業や面接官との相性もあるので、不採用になっても落ち込まず、気持ちを切り替えて次の企業にチャレンジしてほしいですよね。 |
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髭 さん : |
「転職は人生の大事な仕事だ」という意識を持って、活動してください。誰でも仕事をする時には、スケジュールを作って計画的に働きますよね。同じように転職活動においてもスケジュールを立てて、目標に向かってしっかりと行動するのです。時間がかかる人もいるかもしれませんが、きちんとやっていればきっと、相性の合う会社にめぐり逢えるはずです。 |
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細田さん : |
そうですね。ぜひこの5つの鉄則を生かして、ひとりでも多くの方に転職を成功させていただきたいですね。 |
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