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ロールモデルのいない道を切り開く――“ゲーム好き”からプロゲーマーになった草地さん

好きを仕事にしたらこうなった

2016.1.18

プロゲーマーという職業があることに、多くの人が驚くかもしれません。草地裕子さんは北米の大手プロ団体に所属するし、日本人女性プロゲーマーの先駆け的存在です。幅広い活躍を見せる日本人女性初 のプロゲーマーです。


『ストリートファイター』と言えば、読者の皆さんの中にも夢中になった経験のある人は多いのではないでしょうか? いわゆる格闘技ゲームの代表作で、好きなキャラクターを選び、互いに技を繰り出して戦う対戦型アクションゲーム。草地さんはこの『ストリートファイター』で、半獣人キャラ「ブランカ」の使い手として名を馳せています。


では、具体的にはどのような活動を行っているのか? プロゲーマーがどのようにして収入を得ているのかを、率直にお聞きしましょう。


知られざるプロゲーマーの収入源とは?


「まず、所属しているチームから、一定の給料が支給されています。賞金が設定されている大会もあり、これもプレーヤーによっては大きな収入源となります。このほか、イベントやテレビ番組などに呼ばれる機会も多く、出演料をいただくこともあります。特に最近は、活動の場がどんどん広がってきていますね」


最近は、ネット配信用のゲーム攻略動画に出演することも多く、YouTubeの広告収入で稼ぐいわゆるYouTuber的な活動も行っているという草地さん。つまり、ゲーム市場におけるシンボル的存在であり、何でも屋でもあるというのが実情のようです。


“著名プレーヤーを倒して一躍、時の人に!


そんな草地さんが、こうしてプロゲーマーとして活動するようになったのは、ゲーム大会で挙げた“1勝”に端を発しています。


「ある大会で、有名なプロゲーマーの方に、たまたま番狂わせで勝つことができたんです。その一戦はネットで中継されていたため、『ストリートファイター』人気の高い海外で大きな話題になり、北米のプロゲーム団体『Evil Genius』のオーナーから声が掛かったのがこの職業に就いたきっかけでした」


草地さん自身、まさか勝てるとは思っていなかったというこの対戦。「正攻法ではかなわないから、乱戦に持ち込むしかない!」という作戦がズバリ当たったのだと振り返ります。結果、見事に勝利を挙げるシーンが世界中に拡散。その美貌とのギャップも手伝って、一躍、時の人となったのでした。これが2011年のことです。


『ストリートファイター』にハマったきっかけ


実は、小学生から大学まで陸上競技を続けたアスリート。その一方で、ゲームは物心ついたころから身近なホビーだったと草地さんは語ります。覚えている限り、最初に夢中になったのは、自宅にあった初代ファミリーコンピューターでプレーした『マリオブラザーズ』だったそう。


ただ、もともと人並み外れたゲーム好きだったというわけでもなく、あくまでちょっとした趣味の1つとして楽しんでいたとのこと。そんな草地さんがどっぷりとゲームにハマることになったのは、大学時代に友人に連れて行かれたゲームセンターで、『ストリートファイターⅣ』をプレーしたのがきっかけでした。


「それまでゲームと言えば家庭でプレーするものでしたから、アーケードゲームのレバーで操作する感覚が、とても新鮮でした。格闘技ゲーム自体にも不慣れでしたし、最初は思うようにキャラクターを動かせませんでしたが、他人と対戦するのが楽しくて、毎日のように通って練習するようになりました」


ゲームセンターでは若い女性のプレーヤーが珍しかったこともあり、その場に居合わせた人がアドバイスをくれることも多く、草地さんはメキメキと腕を上げていきます。やがて、ゲームセンターが主催する大会にも積極的に出場するようになり、大学時代の終盤はまさしくゲーム漬けの日々に。


卒業後は、車好きが高じて自動車メーカーの販売店に勤務しますが、暇さえあればゲームセンターに通っていたという草地さん。でも、この時点ではまだ、それが後に職業になるとは夢にも思っていませんでした。ところが――。


「自動車の販売店って、どうしても休みが平日に固定されてしまうので、週末に開催されているゲーム大会には出場できないんです。それが自分の中で大きなストレスで……。半年ほど勤めた後、“やっぱり好きなことをやりたい!”と、退職を決断。その後しばらくは、ゲームセンターでアルバイトをしながら、思う存分ゲームを楽しみました」


とにかく「ゲームが好き過ぎた」とは本人の弁。ともあれ、退職して時間の融通が利くようになったことから、草地さんは自ら大会を企画するなど、ゲーマーとして積極的に活動し始めます。その後の躍進は前述のとおり。まさに、ゲームこそが“天職”だったのでしょう。


好きなゲームだからこそ、長く携われる道を模索し続ける


しかし、大好きなゲームを生業としているからといって、毎日が楽しいことばかり…… というわけではありません。プロを名乗ることになり、勝たなければならないプレッシャーに襲われることもしばしば。純粋にゲームを楽しむことができない状況に、人知れず悩んだ時期もありました。


「それに、プロゲーマーというのはまだ先行するモデルケースのない職業ですから、どう活動していいのか分からず、日々模索していました。最初は大学時代を過ごした名古屋で活動していましたが、思うようにいかず……。ようやく仕事として回り始めたのは、一念発起して東京に出てきてからのことですね」


また、将来的な不安がないわけではありません。タレント業などと同様に明日の保証はなく、いつか「引退」の時期もやってきます。そこで草地さんは最近、やはりプロゲーマーである夫と一緒に、株式会社忍ism(シノビズム)を立ち上げ、その活動を事業化することに。


「主にはイベント企画、後進の育成、広告代理業の3つが事業の柱。とくに後進の育成は、ゲーム業界を引き続き盛り上げていくためにも重要で、できることはどんどんお手伝いしていきたいと考えています。この分野をより活性化させる、次の世代に早く登場してほしいと願っています」


「主にはイベント企画、後進の育成、広告代理業の3つが事業の柱。とくに後進の育成は、ゲーム業界を引き続き盛り上げていくためにも重要で、できることはどんどんお手伝いしていきたいと考えています。この分野をより活性化させる、次の世代に早く登場してほしいと願っています」


もちろん、現役としてプレーも続けている草地さん。負けた時に本気で “悔しい!”と感じられるのも、これが好きな分野であればこそ。それが自身の成長の糧となっていることを実感するたびに、ゲームを仕事にして良かったと、心の底から思うそうです。


(友清 哲+ノオト)


取材協力/草地裕子

1986年、兵庫県出身。中京大学体育学部卒業後、自動車メーカーに勤務し、販売業に従事。2008年から本格的に格闘技ゲームを始め、ある大会で著名ゲーマーに勝利したことから世界的な知名度を獲得。北米にある世界最大級のプロゲーム団体「Evil Genius」に所属し、現在は自らプロゲーマーとして活動する傍ら、株式会社忍ismを設立し、更に幅広くゲーム関連事業の展開に着手している。

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