働く意欲ゼロで就職したものの、営業の楽しさに目覚める
学生時代、趣味のバンド活動に没頭するあまり就職する気がなかったというK島さん。しかし、付き合っていた彼との結婚を考えていたため、目標金額まで貯金ができたら辞めるつもりで就職を決意します。普段よく利用しているECサイトの運営会社の求人を見つけ、これなら興味を持って仕事ができるかもしれないと、すぐに応募し内定を獲得。営業部に配属され、社会人生活をスタートさせました。
「正直、配属されるまでは営業なんて絶対私には無理だと思っていました。そもそも、働く意欲も低かったですし、仕事が嫌で仕方なかったです。でも、仕事を覚えるにつれて段々と営業という仕事が楽しくなっていきました。人と会話をして、困っていることに対して『こういう方法ありますよ!』と提案をしたり、そうした経験を重ねるうちに、仕事を通して人とのつながりができたりするのが面白かったですね。自分に合っていたんだと思います」
営業の面白さに目覚めたことから、仕事に夢中になったというK島さん。自分より社歴が長い営業メンバーを追い越し、メキメキと成績を伸ばしていきます。「貯金ができたら辞めよう」、そんな入社当時の気持ちはどこかへ行ってしまい、気づけば営業の仕事にのめり込んでいました。
予想外の異動により生活が一変。激務のなか考えた、「何のために働いてるんだろう」。
優秀な成績で会社の上層部からも一目置かれる存在になっていた4年目のころ、K島さんは社内で持ち上がった新規事業の立ち上げメンバーに抜擢されます。K島さんにとっては元々興味があった分野での新規事業でしたが、事業の立ち上げとなると今までの仕事内容とは大きく異なり、K島さんにとっては、未知の世界でした。
「正直、驚きはしましたけど、好きなことを仕事にできることの楽しさや、新しい事業にチャレンジできるワクワク感がありました。でも、それは最初の2カ月だけ……。プロジェクトに関わる社内外のスタッフをまとめる、という仕事なので、基本的に社内業務のみ。スケジュール管理が中心で、営業的な仕事から完全に離れてしまい、仕事の楽しさを感じられなくなっていきました。私自身、興味を持てないことに対しては極端なくらいやる気を持てない性格なので、毎日辛かったですね」。
立ち上げに携わるスタッフをゆくゆくは増やすという上層部との最初の約束も一向に果たされず、業務量も日に日に増加。しかし、責任感からすぐに辞める決意には至らず、24時間仕事モードで、隙間時間に寝る、という慌ただしい日々が続きます。
そんななか、ついに学生時代から付き合っている彼にプロポーズされ、入籍。二人での生活をスタートさせましたが、K島さんの仕事が忙し過ぎたため、「甘い新婚生活」とはならなかったようです。
「新規事業を少人数で動かしていたこともあり、土日も電話が鳴りやみませんでした。休みなく仕事ばかりしていて、せっかく結婚したのに夫婦の時間を持つことがまったくできませんでしたし、家事もすべて夫任せ。それでも不満を言わずに、サポートしてくれる夫を見て、『何のために働いているんだろう』と思い始めました。仕事に忙殺されて自分のことを振り返る余裕がなかったのですが、夫と暮らし始めてやっと我に返ることができたんです。そこで、私はやっぱり「夫婦としての時間を大事にしたい」、「仕事をするなら営業で頑張りたいんだ」ということに気づきました」。
退職へ気持ちが動き始めた矢先、ついに激務の影響で身体に不調が現れ、K島さんは本格的に退職を決意します。