仕事もプライベートも、不満はないものの閉塞感を感じていた地元での日々
学生の頃からプログラミングが趣味だったと言うS藤さん。新卒で地元の大手企業に内定が決まり、エンジニアとして自社サイトの運用に携わります。会社はゆとりのある社風で、残業もほとんどなく手当もしっかりと支給され、とても働きやすかったそう。
「もちろん仕事もやりがい十分でした。サイトを育てていくプロセスが面白く、溜まっていく知識をサイトの運営に還元できることが楽しかったですね。年次を重ねるごとに任されることも徐々に増えて、責任感を持って働いていました」
職場環境にも仕事内容にも不満はなかったそう。しかし、そんなS藤さんの胸のうちには、年々「このままで、ここにいて良いのだろうか」という漠然とした思いが少しずつ蓄積されていました。
「東京や大阪などで開催される勉強会に参加するようになり、Webの技術やトレンドが目まぐるしいスピードで動いていることを目のあたりにするうちに、このまま地方にいて良いのかな? と思うようになりました。地方にいて一つのサイトを手掛けているだけではどんどん世の中の流れに取り残され、自分の成長も鈍ってしまうな、と」
更に、地元では古くからの人間関係が固定化されていき、友人と会っていてもなんだか刺激がなかったそう。当時の恋人とも結婚を考えられず、閉塞感を感じていたとか。「仕事もプライベートもこのままで本当にいいのだろうか……」。S藤さんのモヤモヤは、日を追うごとに大きくなっていったと言います。
上京したいという思いがついに爆発! 「今が最後のチャンスかも」
そんな折、業界縮小の波を受け、社内で早期退職制度が導入されます。この知らせに、S藤さんの心は揺らぎました。
「早期退職制度ができたことをきっかけに、この会社でいつまで働くのだろうって考えてみたんです。すると、やっぱりこの会社でずっと過ごす覚悟はないかもしれないという気持ちが強くなり、転職の二文字が突然リアルになってきました」
せっかくなら、地元を離れて転職したいと考えたS藤さん。ですが、すでに年齢は31歳。それまで地元を離れて県外で暮らした経験がないなか、不安はなかったのでしょうか。
「実際かなり悩みました。住み心地もいいし、ゆっくりここで生きるのもいいかなとも思いましたが、年齢のことや自分のエネルギーを考えると、環境を大きく変えるのは今が最後のチャンスかもしれないという焦りの気持ちが勝りました。普通ならもっと早いうちに考えそうなことですが、都会で刺激を受けながら生活をしたいという思いが抑えられなかったですね」
考えた末、S藤さんは東京での転職を決意します。仕事も、友人や恋人との関係も、閉塞感を感じていたすべてを振り切って東京に出て行きたいという強い気持ちが、この時S藤さんを動かしていたそうです。