家族との生活
メーカーで
デジタルマーケティングの
仕事をしていた木戸さんが、
夫の事故をきっかけに始めた
「あたらしい生き方」

私のあたらしい生き方
家族との生活
- 今の働き方・仕事について、詳しく教えてください。
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現在、下半身不随の夫と共に、地元の神戸で暮らしています。夫婦でNPOの活動をしながら、私は2017年7月に友人と共にArtripperという会社を設立したばかり。これまでデジタルマーケティングに関わってきた経験を活かし、企業のマーケティング戦略を考えるお手伝いや、Webページ作成レッスンやマーケティングセミナーの講師、イベントの企画などを担当しています。
また、クラウドファンディングを通じて募った資金で立ち上げた「Re:Walk Project(リウォーク プロジェクト)」では、「再生医療」や「歩くリハビリ」に関する情報をWebで発信したり、「脊髄損傷者のリハビリ報告会」といったイベントを開催したり、脊髄損傷や他の怪我・病気で歩けなくなった方が「もう一度歩く」という希望を持つための支援活動を行っています。
2017年には、夫を中心にNPO法人「須磨ユニバーサルビーチプロジェクト」を立ち上げ、須磨海水浴場にビーチシートを設置する活動などを行いました。このプロジェクトでは、障がいを持っている方やお年寄り、小さな子供やその家族など、すべての人が安心して海水浴を楽しめる環境にすることを目指しています。
- なぜ今の働き方・仕事を選んだのですか? これまでのキャリアや経緯を教えてください。
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2015年4月に夫が事故に遭い、下半身不随の大怪我を負ったことで、大きく生活が変わりました。それまで、私は大手電機メーカーでグローバルマーケティングなどを経験し、転職したアパレルメーカーでもデジタルマーケティングに携わっていました。夫が事故に遭ったのは、私がアパレルメーカーに入社して2カ月目のこと。海外担当として、初めて中国に出張する直前の出来事でした。
入院中、医師から「一生歩けない」と宣告されてからも、夫は歩くことを諦めませんでした。私も毎日インターネットで脊髄損傷やリハビリ、再生医療に関する情報を探しましたが、求めている情報にはなかなか巡り合えず……。
情報が少なく、どんな選択肢があるのかもわからない。その状況に孤独を感じていました。自分たちが情報を発信することで、この状況を変えたい。そう考えて挑戦したのが、クラウドファンディング。525人の方から540万円の支援をいただき、事故から約1年後の2016年の春、「Re:Walk Project」がスタートしました。
もう1つ、そのタイミングで私たちは大きな決断をしました。オーストラリアでリハビリをすることにしたんです。海外へ行くのは、私が言い出したこと。新しい挑戦をすることで、夫に「できないこと」よりも「できるようになること」に目を向けてほしいと思ったんです。
そして、このとき私はアパレルメーカーを退職しました。会社員を続けながら日本で夫のリハビリを支援する道もありましたが、「今ここで自分たちの時間とお金を最大限投資しなかったら後悔する」と思い、新しい生活を優先したんです。これを機に、私の働き方はWebを活用した仕事が中心になり、より自由なスタイルになりました。
- 「あたらしい生き方」に変えて、どうなりましたか? 変わったこと、得たものを教えてください。
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夫を介護する立場になって感じたのは、働く上で一見ハンデと思われるような状況になったとしても、それを不利と思わずに、逆に価値を見出してプラスに変えれば良いということ。その立場にならないと気づけないことってたくさんあると思うんです。だから、自分の経験を活かして、同じような状況にある人が働きやすい環境をつくっていきたい。そう考えるようになりました。
私は今、夫の介護のほか、病気を患っている母親のサポートもしています。そして、2018年6月には初めての出産も控えています。いろいろな苦労を抱える中で、私が自分らしい働き方を続けて、しっかりと稼げるモデルをつくれたら、世の中に勇気を与えられるんじゃないか。その思いが働くモチベーションになっていますし、会社を立ち上げた理由の1つでもあります。
こうして、自分がやりたいことをやり続けることが、私たち夫婦を応援してくれる方々への恩返しだと考えています。将来は、海外を飛び回っていろいろなことに挑戦したいという夢がありますが、この発想は会社員を続けていたら絶対に出てこなかったと思います。
事故のおかげで、多くの新しい出会いがあり、自分たちの価値観も広がりました。事故があったからこそ、今の幸せな人生がある。そう思える生活を、これからずっと送りたいですね。


