頑張れば頑張るほど、頼りにされて仕事が増えていく
「好きなことを仕事にしたい」という思いから、営業職からWebディレクターへ転職したM澤さん。
「一度目の転職先は、アットホームで社員同士や役員との距離の近さに好感が持てました。未経験で入社しているので、業務経験を積ませてもらえるだけでもありがたかったです。また、時代を先読みして新しい分野に果敢にチャレンジしていく会社の姿勢もすごいなと尊敬できましたし、何よりずっとやりたかったWebの仕事をやらせてもらえるというのはすごくうれしかったです」。
「目の前にある仕事をしっかりやる」を徹底していたM澤さんは、着々と実力をつけていき、異例のスピードでアシスタントから一人前のディレクターへ昇格します。それに伴い、業務量も徐々に増えていくようになりました。
「仕事を丁寧に教える余裕があまりない会社だったので、戦力になれる人が少なかったんです。自分で食らい付いていけないと、いつまでも仕事ができないまま。そのため、やる気がある人に仕事が集中していく感じで。ガッツだけは人一倍あった私は、気がついたら業務過多に陥っていました……」
Webディレクターとしてエンジニアやデザイナーなど、さまざまなスタッフを抱えて制作進行をしていき、決められた納品日を必ず守らなくてはいけません。増えていく業務量に「アシスタントをつけてほしい」と会社に訴えますが、人手不足を理由に願いは叶えられなかったそう。
追い詰められて社内に送ったSOSメール。しかし、反応は……
それでも、やりたい仕事で着実にステップアップできていることを糧にがむしゃらに働くM澤さん。5年目にもなると、入社前に目標としていた仕事はほぼやり尽くしている状態になっていました。
しかし、依然として社内の人手不足は変わらず残業時間が月130時間を超えることもしばしば。仕事以外のことをする余裕もなくなり「このままじゃ人生が壊れる」と転職を考え始めます。そして、追い打ちをかけるように、頼りにしていた上司が退職。
相談したり愚痴をこぼせる相手がいなくなり、「更に精神的に追い込まれてしまった」と振り返るM澤さん。自分で処理しきれないクレームが発生しても誰もサポートしてくれない。そんな状況に、ついに我慢の限界を越えてしまいます。
「プライベートもないほど業務が集中していることを再三報告しても、上層部は何も手を打ってくれなかったんです。そこで、この状況を打破するための一番有効な方法を考えた結果、『もうこれ以上働けません』という主旨のメールを、役員や管理職全員に一斉メールで送りました」
もしこれで何も変わらなければ、この会社を辞めることになるという覚悟で送ったものの、一人の役員から心配する電話があっただけだったと言います。
「見ていてくれているはずの現場の上司達からは何のリアクションもありませんでした。『こんなに冷たい会社だったっけ……』という失望感がありましたね。今にして思えば上司達も余裕がなかったのかなとは思うのですが、その時は気にも掛けてくれないのかと本当にがっかりしました」
現状打破の最終手段として一斉メールを送ったM澤さん。しかし、根本的な解決にはならなかったそうです。更に、この会社でできることはやりきったという達成感も手伝って、ついに2度目の転職を決断します。