生みの親は苦労人!?　初心者からマニアまで広く愛されるパスドラの秘密。

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生みの親は苦労人!? 初心者からマニアまで広く愛されるパスドラの秘密。山本大介さん

ハングリー精神が養われた20代

共に開発に挑む仲間とのチームワークは不可欠

　2012年2月の配信以来、現在まで国内だけで約2,100万ダウンロードを記録している、スマートフォン向けオンラインゲーム「パズル＆ドラゴンズ（パズドラ）」。

　配信3日から約1年半もトップの座を維持する驚異のゲームだ（※）。その企画開発とプロデュースを担当したのが、現在もパズドラ全体を統括する山本さん。ファミコンで育った35歳の彼が、社会に出たのは小規模なゲームの企画会社からである。

　「フリーランス契約だったので仕事がないとお金がもらえず、会社の愚痴を言うよりも明日の生活が心配という、人生の厳しさを早々に経験しました。お陰でハングリー精神が養われ、毎月お給料が入る会社員のありがたみも分かりましたね」

　人生の厳しさはさらに20代の山本さんを襲った。ゲーム業界が氷河期になり会社が解散。同時に失恋もして精神的に追い込まれるなか、日雇いの土木作業で生活費を稼ぎながら求職活動を続ける。そしてゲームメーカーに就職。

　「携帯電話向けゲームを1、2カ月に一つのペースで製作しました。大ヒットはなくとも何十ものゲーム開発で自分の得意不得意が分かった。けれど、安泰と思っていたこの会社も買収され、企業の厳しさも知りました」

※ガンホー調べ

笑顔の口元を表したというガンホーのシンボルマーク

　2年前に現在の会社に転職すると、1週間後に新ゲームの企画提案を命じられた。

　「プランナーとして働いてきた経験から、メモ書き程度も含め、常に温めている企画案は100以上あります。そこから案を出すつもりでしたが、提出2日前にパズドラを思いついたんです。以前ハマった海外のゲームが、シンプルなのに奥が深く、こういうものを自分も作りたいと考えたことを思い出し、得意なパズルとカードバトルを組み合わせて企画を練りました」

　それを社長が即決。山本さんと外部の開発者、わずか4人のチームで船出した。

　「当時はソーシャルゲームが人気だったので、ゲーム会社ならではのゲーム性で勝負したいという意気込みがありました」

　ターゲットは、パズル好きな人はもちろん主婦やゲームから遠ざかった会社員。初心者も楽しめ、熟練するとさらにハマるという難題に挑み、内容は二転三転した。

　そして試作版で、これはいける！　との感触をつかむ。しかし、初心者にも分かりやすい解説画面や不具合防止のサーバー調整に時間がかかり、もっともホットな配信時期である年末を逃してしまった。

やりたい仕事をするために、企画を出し続ける

嫁レビューの結果、画面のパズルは6個×5列になった

　スマートフォン向けオンラインゲーム「パズル＆ドラゴンズ（パズドラ）」。その開発は山本さんの転職後の初仕事だった。

　「それだけに配信の遅れはショックでした。その分人件費もかかる。黒字にするのは大事なので、ヒットさせねばと気合を入れ直しました」

　しかし、新ゲームの配信ひしめく年末から2カ月遅れたことで、かえって目立ち、面白さも認知されて配信3日でダウンロード数1位を獲得（※）。その後、当初のターゲットに加えて幅広い層に受け入れられたのが大ヒットにつながったと山本さんは分析する。

　「初心者がプレーしやすいシステム作りや心配りした解説画面など、細かいこだわりをあきらめなかったことが良かったと思います。開発段階では有料ゲームにする可能性もありましたが、基本的に無料で楽しめて、さらに楽しみたい人には有料アイテムを購入してもらうという仕組みにしたのも受けたようです。当初からお金よりも面白さを優先、という社長の姿勢も心強かったですね」

　開発中は、ターゲットである主婦や初心者の声を反映しようと、開発者の奥さんたちに意見を聞く「嫁レビュー」も実施。これがゲームのルール作りや、爪が長めでも誤作動が少ない画面作りなど、細部にまで役立ったという。

　また、「神対応」と呼ばれる丁寧なユーザー対応も好評だ。不具合が生じた時に有料アイテムを無料配布したり、インターネットで惜しみなく攻略法を伝えたりするなどサービスを充実させている。

※ガンホー調べ

パズドラは「ファミ通アワード2012」で6部門受賞に輝いた

　常にユーザーを飽きさせない工夫を続けているパズドラ。2013年12月には携帯ゲーム機専用ソフト「パズドラZ」も登場する。

　「広く小中学生に遊んでもらえればうれしい。と言いつつ、今4歳の息子がゲームができるようになった時、親をリスペクトさせたいというのが本音なんです（笑）」

　自分のゲームを40歳までにハリウッドで映画化し、死ぬまでにテーマパーク化することが山本さんの夢。

　「常にオリジナルの新しいものを作りたいという気持ちが強いですね。自分がやりたいことをするには体を空けないことが大切。暇と思われると、興味のない仕事を人から振られる可能性がありますから。だから忙しい時にこそやりたい企画を通るまで出し、常にやりたいことをやる。同じ忙しいなら、好きなことをやりたいじゃないですか。もちろん今も新しい企画を練っていますよ！」

「iPhone4」

僕はいまだにスマートフォン「iPhone4」を使っています。それはパズドラを常にこのバージョンでも動くように作っているからです。最新バージョンにすればもっと斬新なこともできますが、旧タイプが対応できないことはしたくない。パズドラを楽しんでくれる方にはiPhone4を今も使っている初期からのファンの方や、新型のスマホをすぐに買ってもらえない中高生もたくさんいます。そういうファンが遊べなくなる事態は避けたいので、ほとんどのユーザーがiPhone5に入れ替わるまで、僕も今のままパズドラを楽しみます。