今回の「キボウノアシタ」は映画『少女』の監督と女優2人が登場。前編の三島有紀子監督と本田翼さんに続いて、後編は三島監督と山本美月さんが対談。高校時代から今に至るまでの、仕事への思いを語り合っていただいた。
周りを気にせず自分の役割に徹す
山本:私は周りを気にするタイプ。カメラマンさんがこう撮るからこうしたほうがいいかなとか、音声さんのために声を張ったほうがいいかなとか。でも今回撮った映画『少女』の現場で私は、お芝居だけに集中し、他のことを気にせず自分の役割に徹してこそプロなんだと教えてもらいました。
三島:最初に会った時、言ったんですよね。周りは気にしなくていい、お芝居だけに気持ちを向けてほしいと。
山本:そうです。お陰で、心に闇を抱える少女という難役にちゃんと向き合えた。
三島:山本さんと共演している本田翼さんは、感覚が鋭く、理屈や気持ちを説明するよりも具体的な動きや言い方、表情を伝えるとそれを膨らませるタイプ。一方、山本さんは気持ちから入り込むと、すごくいい芝居になる。だから細かな動きの説明はせず、山本さん演じる敦子という女の子の、そこに至るまでの気持ちの流れを説明し、その精神状態を作ってもらった。自分の中からわき出るような演技をしてもらうよう、仕向けたわけです。こんな具合にまったく異なるタイプの女優2人を同時に演出するのは初めて。新鮮ですごく面白かった。
山本:私は今回、初めてご一緒させていただき、三島監督はつくづく根性の人だなと感じました。とにかく妥協しない。納得いくまで何度も演技のやり直しをさせる。でも、それだけ信用してもらえているんだと励みになったし、安心もできました。私にやれると信じてそうしてくれているんだから、何が何でも絶対、期待に応えなきゃと。
三島:こちらの期待以上に、敦子の闇に付き合い続けてくれたと思います。ところで、山本さん自身はこの世界に入って、闇の中でもがいていた時期ってあったの?
山本:18歳の時、雑誌『CanCam』のモデルに決まったものの、21歳ぐらいまで1カットも掲載がない月があったりして、もうダメかもしれないと何度も思いました。映画『桐島、部活やめるってよ』に出て少し知名度が上がったことで、ようやくモデルの仕事は増えましたが、女優業のほうは全然ダメ。その後、初めての連続ドラマの現場で大勢の前で怒鳴られ、大泣きしたことがありました。そのせいか、いまだに新しい現場へ行くたびに緊張しています。
人間性は記憶の積み重ねで作られる
三島:女優を目指したのはいつから?
山本:小学生の時の学芸会がきっかけです。それで高校では演劇部に入りました。でも、雑誌『CanCam』のモデルが決まるまでは、大学へ行って将来は研究員になろうと思っていました。
三島:白衣、似合いそう。理系だったんだ。
山本:そうです。母親との約束もあったので、大学は農学部に進学しました。
三島:でも、女優を選んだのはどうして?
山本:映画『桐島、部活やめるってよ』に出演したのが決め手です。吉田大八監督からガッチリと演技指導を受け、気持ちもボロボロになったのですが、それでも楽しかったので役者を続けたいと思いました。三島監督自身は、映画を作る仕事のどこに魅力を感じて続けているんですか?
三島:私は映画から人生のすべてを教わり、救われてきた。だから今度は自分が、私みたいに生きることが苦しいと思っている人たちに向けて、少しでも違う明日が迎えられるような映画を作りたい。その一心で続けている気がしますね。
山本:今、人生に迷い、仕事で悩んでいる友達がいたら、今回撮った映画『少女』を見なさいってためらいなく言います。
三島:それ、いいかも。この映画はまさに生きづらさを感じている人を応援したいと思って作っています。でも、つらい時は他の作品でもいいから映画を見てほしい。映画はいろんな人生を見せてくれるから。
山本:そうですね。でも、例えば転職するのを迷っていてその理由が「この仕事って何かだるいから」だったら、そんな気持ちならどこに行っても同じだよって言う。
三島:言えてる。精神的に社会人になれていない時はとどまったほうがいいです。では、山本さん自身は今後どうしたい?
山本:私は、もっと幅広くいろんな役に挑戦していきたいです。今の自分の年齢と人間性でできる役を一つひとつきっちりと。
三島:人間性って記憶の積み重ねで形作られるもの。特に20代で経験したことは自分の礎になる。だから漫然とではなく、貪欲(どんよく)に本を読んだり映画を見たり、人と話したりといった経験を今のうちから積んでおくといいと思う。それによって将来がガラッと変わってくるはずです。
リーダーが語る、アシタを開く言葉
本田翼さん
「生涯現役」
私はずっと自分らしく生きていきたい。周りに流されやすかったり、逆に頑固なところもあるけれど、どれも私。そんな「自分らしさ」を現役でずっと貫きたい。座右の銘を聞かれるたびに「生涯現役」と答えています。
山本美月さん
「幸せであること」
いろいろつらいことやキツくて嫌だなと思うことも、乗り越えることで幸せになれるんだったら、その苦労は必要なこと。死ぬ時に幸せだったと思えるような人生にしたい。だから、将来の夢は「幸せであること」なんです。
三島有紀子さん
「誠心誠意で努力する」
誰でも「こうなりたい」「こんなことがしたい」というものがあると思うのですが、自分の目指すことに対して誠心誠意の努力をするという気持ちで生きています。本当は吉田松陰の「生死は度外して自分のやるべきことをやるのみ」という言葉が私の座右の銘。それを平たい表現にしたらこうなりました。
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2016年10月27日(木)23:59
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三島有紀子
大阪府出身。神戸女学院大学卒業。NHKを経て2003年に独立。09年『刺青〜匂ひ月のごとく〜』で映画監督デビュー。代表作に『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』『繕い裁つ人』など。来年の待機作は『幼な子われらに生まれ』。本田翼・山本美月主演の映画『少女』は10月8日(土)から全国ロードショー。
山本美月
1991年福岡県生まれ。2009年から雑誌「CanCam」専属モデルに。11年ドラマ「幸せになろうよ」で女優デビュー。翌12年の映画『桐島、部活やめるってよ』でスクリーンデビュー。以後、ドラマ、映画、CMなど幅広く活躍。16年は『貞子VS伽椰子』でも主演を務める。待機作は『ピーチガール』(2017年)。