
この記事でわかること
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2026年のITエンジニア本大賞 プレゼン大会の全容
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技術書・ビジネス書各部門で最終選考に残った6冊の深い魅力
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最新のAI技術動向から、エンジニアが持続的に成長するためのマインドセット
ITエンジニアが1年を振り返り、おすすめの本を選ぶイベント「ITエンジニア本大賞2026」のプレゼン大会が、2月19日に開催されました。今回で13回目を迎えた本イベントは、全国のエンジニアから寄せられた5,000件を超えるWeb投票によって、技術書・ビジネス書それぞれのベスト10を選出しています。
プレゼン大会には、その中でも特に支持の厚かった各部門3冊、計6冊の著者や編集者が一堂に会しました。技術書部門では「AIエージェント」の構築や活用、そして言語処理の根幹に迫る3冊が登場。ビジネス書部門では、エンジニアのキャリア論や習慣化の科学、さらにはコミュニケーションの技術をテーマにした3冊が選ばれました。
各登壇者が、書籍に込めた熱い想いを語ったイベントの模様を余すことなくお届けします。
ITエンジニア本大賞2026
主催:翔泳社
開催期間:2025年11月6日(木)~2026年2月19日(木)
対象:技術書、ビジネス書全般。出版社や刊行年は問わず、この1年を振り返っておすすめしたい書籍。
※過去の大賞受賞書籍 は除く
目次
1. 「AIエージェント開発運用入門」(技術書部門)

会場の皆さんの中で、「問い合わせ件数が多すぎて仕事にならない」「お客様と向き合いたいのに事務処理で時間が奪われている」といった悩みをお持ちの方はいませんか。こうした課題は、「専用のAIエージェント」のアプリを自作することで解決できます。
既存の専門書では、コマンドラインの黒い画面で動かすものや、研究用途のNotebook上で実行するものが中心です。これでは「難しそう」「業務で使えない」という悩みに繋がってしまいます。

そこで本書では、AIエージェントをWebアプリ化して、皆さんの日々の業務を楽にすることを目指しました。
本書の特徴は、まず構築からデプロイまで一気通貫で解説する「フルスタック」である点です。手順を非常に丁寧に紹介しているので、手順を丁寧に紹介しているため、非エンジニアの方でも挑戦可能です。

二つ目は「フルカラーでわかりやすい構成」です。どの章のハンズオンから始めても完了できるようになっているので、面白そうなところからチャレンジしてください。

三つ目は「運用・改善フェーズまでカバーしている」点です。それぞれの専門分野を持つ私を含めたエンジニア3名で書いています。
2026年は、皆さんが作る立場となる「ビルダー元年」です。私自身も、執筆後に本書の技術を使って、家族と明るく暮らすためのAIアプリを構築しました。ぜひ、自分専用のエージェントを作る楽しさを体験してください。
2. 「現場で活用するためのAIエージェント実践入門」(技術書部門)

なぜ今、AI エージェントを理解しなければならないのか。背景には深刻な労働人口の減少があります。2040 年には約 1,100 万人の労働力が不足すると推計されており、これは近畿地方の労働人口が丸ごと消えるような規模です。
経営者にとっては、労働力の代替手段として AI エージェントに注目せざるを得ない状況に あります。エンジニアの皆さんは、Claude Code などの活用により、コーディング現場で の生産性向上をすでに実感していると思いますが、一方で現場活用はまだまだといえます。

とまあ、ここまでは真面目な話なんですが、我々AIエージェントの技術体験にワクワクしたんですよね。 人間の知的活動を設計したり、AIエージェント同士が創発する社会シミュレーションをしたりと。 こういったワクワク感や面白さを共有したいというのが本音です。

AIエージェントをいち早く現場に導入したいと考えるのが普通なわけですが、いかんせん新しすぎるので、前例も知見もないんですね。 論文はたくさんあるけど、本番運用の実践なんてほとんどない、何もかもが手探りなわけです。
「具体的なアプローチがわからない」「品質保証やハルシネーション対策が難しい」といった課題が山積しています。

しかし本書があればご心配ありません! 「理解する・作る・活用する」の 3 部構成で、 知見や活用のポイントについて知ることができます。また研究・開発・コンサル・PM・経営などあらゆる角度から、現場導入のための知見を詰め込みました。

ソフトウェアが自律的な意思を持つかのように動き、知的な行動を勝手に遂行していく。この AI エージェントの面白さを、ぜひ現場で実践しながら追体験していただきたいと考えています。
本書は特別ゲストの野溝 のみぞうさんによる「特別賞」を受賞しました。投票理由や感想コメントの一部を抜粋します。
プレゼンの中で「シンプルに面白い」と伝えていただいたのが非常に良かったです。「人間の知的活動を設計するのはわくわくする」というお話には非常に共感しました。 AIをただ使うだけではなく、人を幸せにするために『どう使うか』というエンジニアの姿勢が問われる今のフェーズにおいて、この本は『誰に対して支援するのか』が明確に書かれていた点が特に良かったです。
3. 「ことばの意味を計算するしくみ」(技術書部門)

本書では、言葉の意味をコンピュータ上で計算するための二つのアプローチ、「自然言語処理」と「計算言語学」の基礎、そしてその融合の可能性について紹介しています。

皆さんに持ち帰っていただきたいのは、LLMの背景にある「分布意味論」と、論理に基づいて意味を明示的に記述する「形式意味論」というキーワードです。
LLMは文脈(分布)から統計的に言葉の意味を捉えますが、課題もあります。例えば「否定」や「比較」といった文法的な役割を担う単語(機能語)を正確に扱うのが苦手な点です。

また、プロセスがブラックボックスである点も課題です。私自身、かつて検索エンジンの開発に従事していた際、例えば「喫煙席のないカフェ」を検索しても「喫煙席のあるカフェ」ばかり出てきてしまうという否定表現の課題に直面し、それを機に計算言語学の研究者になりました。

形式意味論を用いれば、論理記号によって否定などの意味を明示的に記述し、計算することが可能です。この「計算言語学」の知見は、LLMの弱点を補完できる可能性を秘めています。

LLMの発展によってAIの応用が広がる今こそ、「LLMがどうやって言葉の意味を計算しているのか」という真理を考えるきっかけにしてほしい。研究者や技術者だけでなく、LLMを使うすべての方に届くことを願っています。
本書はプレゼン大会を視聴された方による最終投票で「技術書部門大賞」に選ばれました。投票理由や感想コメントの一部を抜粋します。
- 研究者でもエンジニアでもLLMをブラックボックスとして使うのではなく、LLMの基盤理論である分布意味論を理解する重要性を感じました。
- 何についてもAIと言われる中で、そのAIが言語をどう扱っているかに着目した本書は今すぐにでも読みたくなりました。
- とてもわかりやすくて、LLMを理解するための入門書であり、これを読むとプロンプトの書き方が理解でき、仕事の効率が上がりました!
4. 「エンジニアの持続的成長37のヒント」(ビジネス書部門)

今、20代のITエンジニアの実に60%が「静かな退職」状態にあると言われています。これは決して本人の努力不足ではなく、「成長の仕方が共有されていない」という環境の課題です。

私は20年間で9,000人以上の方と対話してきましたが、成長し続けているエンジニアには共通点がありました。それは、思考の軸に常に「社会や顧客との繋がり」があることです。
彼らは自分を技術分野で定義するのではなく、「自分は誰のどんな課題に向き合っているのか」という課題で自己定義しています。エンジニアの価値は、技術を使って誰をどう幸せにするかで決まるからです。

本書は、残念ながら今すぐ役立つテクニック集ではありません。しかし、エンジニアとして長く活躍するために立ち止まって考える際の「37の羅針盤」として機能することを目指して書きました。
生き生きと成長し続けているエンジニアは、自分のことを技術分野(手段)ではなく、解決すべき課題(目的)で自己定義しています。ITエンジニアの定義をより広い意味の『技術者』として捉え直し、テクノロジーを用いて誰をどう幸せにするのか、社会のどんな課題を解くのかに焦点を当てるべきです。

静かな退職を選ぶエンジニアを一人でも減らし、ワクワクしながら働くエンジニアを増やしたい。エンジニアが技術を用いて社会課題を解決し、みんなを笑顔にする。そんなエンジニアがわくわくしながら働く国になりますように、という思いが皆さんに届くことを願っています。
本書はプレゼン大会を視聴された方による最終投票で「ビジネス書部門大賞」に選ばれました。投票理由や感想コメントの一部を抜粋します。
- エンジニアとしてのキャリアをどう築いていくかに悩む人に、希望を与えてくれる一冊だと感じた。
- 自分自身、最近ワクワクしていませんでした。ヒントを得るために本を読んでみようと思います。
- 「エンジニアがわくわくしながら働く国になりますように」という最後のフレーズが投票の決め手です。
5. 「科学的に証明されたすごい習慣大百科」(ビジネス書部門)

「今年こそ勉強を始めよう」と目標を立ててもなかなか続かない。それはあなたが悪いのではなく、脳が「今の安定した状態を変えたくない」という性質を持っているからです。習慣化において大切なのは、意志の力ではなく「仕組み」をどう作っていくかです。

本書では科学的な三つのコツを示しています。一つ目は「まず動く」。脳は体からの情報をもとに最適化を行うため、やりたくなくても動き始めれば、脳が自動的にエンジンをかけてくれます。

二つ目は「ハビット・スタッキング」。既存の習慣に新しい行動をセットにすることで、脳の負荷を最小化します。

三つ目は「ナッジ設計」。スマホを寝室で充電するように、そうせざるを得ない仕組みを作ることです。

本書には、これらを含む112の実践的なアクションを収録しました。例えば「可愛い写真を見ると集中力が上がる」といった意外な知見も紹介しています。
人間は、環境における最善の選択を繰り返しているだけです。自分の行動を環境によって方向づけていく。この仕組み作りをルーティンに取り入れることで、皆さんの人生が変わることを確信しています。
本書は特別ゲストの宮本 沙織さんによる「特別賞」を受賞しました。投票理由や感想コメントの一部を抜粋します。
6冊とも読者のために趣向を凝らして作られた素晴らしい本ばかりで、1冊を選ぶのは大変難しかったです。その中でも、今日のプレゼンの中で私が一番引き込まれたのがこの本でした。プレゼン中の『ジャジャン!』という効果音にも、まんまとやられてしまいましたね。
6. 「わかったと思わせる説明の技術」(ビジネス書部門)

『わかったと思わせる説明の技術』の担当編集をしております、北澤と申します。本当は著者の佐々木さんによるプレゼンを皆さんに直接聞いていただきたかったのですが、本日は私が代読という形でメッセージをお伝えします。
実はこのプレゼン、わずか1分で終わります。著者には『持ち時間は5分です』と伝えていたのですが、本人は『1分あれば十分です』ということで、非常に凝縮された内容になっています。
(以下、著者・佐々木さんのメッセージ代読)
皆さん初めまして、著者の佐々木です。突然ですが、技術者以外の人から『何を言っているかわからない』と言われた経験はありませんか? そのとき、相手に理解してもらうために一生懸命説明する必要はありません。『わかった気』にさせてあげれば、相手は満足します。

もちろん、嘘をつくという意味ではありません。自分の脳内にある知識をすべてさらけ出す必要はない、ということです。例えば、経営者が気にしているのは『儲かるかどうか』ですし、営業が気にしているのは『この内容を自分でお客さんに説明できるか』です。
その関心を満たしてあげれば、彼らは満足します。相手が必要としている情報を、必要としている分だけ渡してあげる。それだけで、彼らを『わかった!』という気持ちにさせることができるのです。

というのも多くの技術者にとって、説明は本分ではありません。本書のノウハウを使ってつまらない面倒事をさっさと片付け、技術習得や実践のための時間をしっかり確保してください。
最後に私事で恐縮ですが、2026年はセキュリティ周りの知識を勉強する1年にする予定です。セキュリティ本を書いている知り合いが増えており、本を買いまくっていたら、積読がすっかりセキュリティに偏ってしまいました。先日ハンズオン形式の技術書を読みましたが、やっぱり楽しかったです。
イベントを振り返って:エンジニアの「ワクワク」が未来を創る

今回ご紹介した「ITエンジニア本大賞2026」の6冊は、いずれも多くのエンジニアに支持されている名著といえるでしょう。
本イベントを通じて強く感じられたのは、エンジニアの関心が単なる「技術の習得」に留まらず、「技術をどう社会や個人の幸せに繋げるか」という本質的な問いに向かっていることです。AIエージェントによる業務効率化も、科学的な習慣化も、すべてはエンジニアがより価値のある仕事に集中し、ワクワクしながら働くための手段に他なりません。
日々進化する技術の荒波の中で、時には立ち止まり、こうした珠玉の書籍から新しい視点を得ることは、持続的な成長において大きな助けとなるはずです。今回のイベントレポートが、皆さんが新たな一冊と出会い、より豊かなエンジニアライフを送るためのきっかけになれば幸いです。
ライター