大浦工測をできるだけたくさんの方に知ってもらいたいと思い、筆をとりました。最後までお付き合いいただけると幸いです。
弊社は建設業の測量・墨出し業務を行っている会社です。私は内勤者ですので現場作業のことはそれほど詳しくありません。社員の方たちの事務所内で語られる四方山話をそっと聞きながら、皆さんが現場で働く姿を思い浮かべつつ想像を膨らませて、現場作業というものを理解できるように努めています。
そんな私の妄想を、より具体的にするためにとても参考になった本を、大浦工測㈱の紹介を交えつつ書いていきたいと思います。


『鳶』上空数メートルを駆ける職人のひみつ 多湖弘明(著)

本書は若手の現役鳶職人が書いたフレッシュな一冊。鳶の世界、鳶の仕事、鳶の魅力、著者の紹介、と全部で四章に分かれていて、命をかけて働く鳶たちの実態を全方向から描いたノンフィクションだ。著者は東京スカイツリーの現場作業員の経験をもつ。この現場は9万人もの人が建設に携わっていたと書いてあるが、大浦工測もこの一員となるため、より親しみがわいたことが私にとって読むきっかけとなった。鳶職人ならではの上空写真も多数掲載されていて晴れやかな情景にうっとりしたり、雨でも雪でも休みにはならない工事現場の過酷さが語られ厳しい仕事だなと、感慨深くもなる。鳶職人も花粉症になるなど、必要なのか?と首をかしげたくなる情報も満載で、ほっこりもする。そんなこんなで、読み応え十分で、心の感情がジェットコースター級に忙しくなること間違いなしで、どのページから読んでも楽しめる。また、建設業全体に共通する工事現場の世界や、実際の業務内容がリアルに描かれており、とても参考になる。例えば、工事現場は「現場事務所」「作業員詰め所」「現場」と3つにわけられ、作業員詰め所は工事に携わる職人達の休憩所だということ。なるほど!社内でも頻繁に詰め所での出来事を話していたな、と思い返す。一昔前の作業員詰め所は、たばこの煙で視界が真っ白になるくらいだったようだが、最近では分煙化や禁煙にしている現場も多く、煙草を吸わない人でも快適に過ごせるようになっているらしい。
巻末には「なぜ鳶職人を写真と文章に残したのか」という本書の真骨頂が語られている。著者の想いと考えがここに集約されているから是非最後のページまで読んで欲しい。


『世界の測量』ガウスとフンボルトの物語 ダニエル・ケールマン(著)

大浦工測の業務として測量が挙げられる。私自身、測量のことを何一つ理解していないと思い、まずは測量の歴史を知りたいと考えて手に取った一冊。本書は本国のドイツのみならず世界45か国で翻訳出版されている。各国でベストセラーを記録した哲学的冒険小説ということで期待を膨らませて読んだ。読後の感想から言わせてもらうと、世界の測量を知るというより、18世紀末から19世紀初めに活躍したカール・フリードリヒ・ガウスとアレクサンダー・フォン・フンボルトの伝記のような読み物だった。ガウスは数学者・物理学者・天文学者の観点からひたすら観察し計算することで世界を知ろうとする近代数学の創始者。一方、フンボルトは探検家・博物学者の観点から自分の足で世界を紐解き地理学の基礎を築いた。それぞれタイプのことなる天才が違ったアプローチで世界を知ろうとする。「考える(抽象化と思考)」か「集める(旅行と収集)」か。現代の測量業務に置き換えると「考える(成果簿等)」と「集める(現地測量)」といったところだろうか。2人の知性は交わったり、交差したり、平行線をたどったり、絶妙に絡み合う。現代のように地図や文書に記録されていないことが山のようにあった時代だからこそ可能だった彼らの大発見に読み応えがある。また、家族や友人との強い結びつきで心温まるシーンもあるが、天才であるが故のエゴイズムと孤独感を風刺たっぷりに描いている。この俗物丸出しな人物像が本書の魅力の一つのような気がする。
読後、天才はいつの時代も凡人には理解できない生き物なのだなと納得するが、今を生きる私達は、彼らが残した知の歴史の上に成り立っている。巨人の肩に乗って仕事をしているだけの存在なのかも知れない。本書はその巨人と対話できる一冊と言えよう。

以上、おすすめの本2冊をご紹介しました。ご興味があれば是非ご一読ください。