大賞企業インタビュー

建設・不動産業界の先駆者へ。
現場を大事にしながら進める、
企業改革の秘訣

株式会社建新

企業名
株式会社建新
役職
代表取締役
氏名
大口 隆弘さま

略歴

1999年に土木業を請け負う有限会社建新を設立。
2019年にケイアイスター不動産グループに参入、以降、年間売上平均130%成長を続けている。現在は神奈川一の住環境企業を目指し、神奈川県・東京都に13拠点を持つ株式会社建新に成長させた。創業時からの変わらぬ思いに直結する「All-Win」という出会ったすべての人々に幸せをご提供するという企業理念とともに、地域の守り手として社会貢献と地域振興を目標に常にチャレンジし続けている。

取り組み内容と評価のポイント

DX推進による業務効率化を通じて「給与維持型・週休3日制」を実現し、残業および年間総労働時間の削減と売上4倍という成果を両立させるなど、働き方改革を業績向上のドライバーとして実装している点が高く評価されました。同時に離職率減少、新卒定着率94.4%(※ 2021年度から2025年度に入社した新卒社員の在籍状況を元に算出) など従業員エンゲージメントを高く保っていることがうかがえる成果もあげられています。

また、多角的な貢献を捉える評価・表彰制度や育成プログラムを整備し、学びや挑戦が実務や成果に直結する仕組みを構築。個人の意思決定を後押ししながら人材の定着と成長を促すサイクルを作り上げています。

成長の基盤は
業界屈指のワンストップ体制

建新は1999年に神奈川県横須賀市で創業し、現在では13拠点を展開する建設・不動産会社です。分譲住宅を中心に、土地の測量・仕入れから設計、施工、販売、リフォームまで、住まいに関わる幅広いサービスを一貫して手掛けています。2019年には東証プライム市場上場企業「ケイアイスター不動産」のグループ会社となり、経営基盤を強化。右肩上がりに業績を伸ばしてきました。従業員数は200名(2026年3月31日時点)に達しています。

こうした成長の根幹にある当社の強みは、土木・建築・不動産のすべてを担えるワンストップサービスです。もともとは土地を造成する土木事業からスタートしましたが、M&Aなども行いながら、すべてを自社グループで手がける体制を築いてきました。建築・不動産の両方を手掛がける会社は多いですが、土地を仕入れる前に必要な測量から自前でできる会社はなかなかありません。

ワンストップ体制によって得られるメリットの1つがスピードです。外部の協力会社に多くを頼っていると、現場で問題が起こった場合の対応に時間が掛かってしまいますが、すべてを自社でコントロールできる体制であれば、よりスムーズに問題を解決できます。こうしたスピード感は当社の文化の1つと言えるでしょう。例えば土地の仕入れにおいても、決裁の速さが強みとなっています。設立から30年近く経ちますが、社風はベンチャーに近いですね。

このスピード感を実現するために大切なのが、営業側と生産側のコミュニケーションです。一般的に営業側が強すぎると、スムーズなコミュニケーションが難しくなりがちですが、当社の場合、私が生産側の出身ということもあり、対等な関係が根付いています。このように、代表自身が生産側の視点を持ち、長年の経験を通じて現場の課題を実感していたことが、近年の「働き方改革」や「新人事評価制度導入」の起点にあります。

DXによる生産性向上を原資に
「給与維持型・原則月2回週休3日制」
を導入。
無駄が可視化でき業績向上も

建設・不動産業界には「労働時間が長い」「残業・休日出勤が多い」というややネガティブなイメージが付きまといます。私自身、長年にわたる土木工事の経験のなかで、いわゆる「3K」(キツい・危険・汚い)の現実を肌で感じていました。昼間現場に行って工事の管理をし、会社に帰って23時、24時まで事務作業を行う。こうした状況をずっと疑問に思っていました。
「残業ありき」の旧態依然とした働き方の根本には、建設業界特有の非効率性があります。現場への移動時間、予定通りに作業が進まないことで生じる待ち時間、属人化した業務による無駄な時間や動きなどが相まって、長時間労働と疲労の蓄積を招いていました。

そこで、企業規模的にも業績的にも改革に着手できるタイミングとなった2020年、「完全週休2日制の導入」や「新人事評価制度の導入」といった一連の取り組みを始めました。業務効率化のために進めたのは、基幹システムや現場管理システムの導入といったDX化です。スマホ・iPadで現場の状況や図面をリアルタイムで共有できるようにすることで、現場への移動時間や伝達の無駄を削減し、労働時間を減らすことができました。

更に、PCを強制的にシャットダウンすることで、19時半にはオフィスを完全閉館。「限られた時間で成果を出す」という意識を定着させていきました。

もちろん、反対意見もありました。特に生産側からの「間に合わない」という声が大きかったですね。しかし、一つひとつの行動を10分単位で書き出していけば、多くの無駄があることに気づきます。

例えば「現場には17時までいる」という昔ながらの風習がありました。現場でのコミュニケーション自体は大切ですが、業務上の必要性が薄いまま現場に残ることは生産的ではありません。こうした慣習的な待機時間を削減していった結果、現場監督は15時には帰社できるようになりました。
2021年には、業界では異例の「週休3日制」のトライアルもスタートしました。業務効率化による生産性向上の成果を、給与を維持したまま、休日という形で還元する仕組みです。「隔月1回、10数名」から始めて徐々に頻度と対象人数を増やしていき、現在では原則「月2回、全従業員」が対象となっています。

結果として、2018年度には100日以下だった年間休日が、2025年度には132日にまで増加。社員定着率が劇的に向上しました。人材採用市場でも強みを発揮できるようになり、業績の拡大にもつながっています。

定量的+定性的な指標を織り交ぜ、
公平な人事制度へ。
多様なキャリア支援を実現可能に

働き方改革と並行して、2020年から進めてきたのが新人事評価制度の導入です。

2019年に新卒採用をスタートし、企業規模が拡大するなか、多様なバックグラウンドや価値観を持つ社員のニーズに応えられる人事評価・育成の仕組みが必要とされていました。従来の人事評価は、売上などの定量的な成果に重点を置いていましたが、現場に関わる生産側やバックオフィスの成果は直接数字に表れないことが多々あり、公平性が課題となっていました。また、多様な個人の志向性と会社の成長をつなぐキャリア支援の仕組みも整える必要もあったのです。
こうした課題を踏まえて導入された新しい人事評価制度は「定量的な評価」「役職・職種による要件評価」「建新の社員として期待される行動評価」という3つの柱で構成されています。従来の数字に偏った評価から脱却し、定性的な指標を盛り込むことで、数字に表れない組織への貢献を正当に評価する仕組みとなりました。特に生産側の社員にとっては、納得度が大きく向上したと自負しています。

具体的には、半期に一度、全社員がすべての評価項目を見直し、上司との2度の面談を通じてフィードバックを受けます。これによって一人ひとりのポテンシャルを客観的に把握し、効果的なキャリア支援につなげています。また、適性と成長意欲を最大限に発揮できる場としてジョブローテーションを実施。適性に応じてリーダー層を育成するための研修制度「マネジメントプログラム」も導入しました。

この新しい人事評価制度によって、会社と個人が一緒にレベルアップしていけるサイクルを確立することができました。

現場の声を大切に。
社員一丸となって、業界の革新を目指す

週休3日制に代表される働き方改革や新人事評価制度導入は、特別な組織を設けて進めたものではありません。役員との雑談も交えた朝の会議の場で、ざっくりとしたスケジュールを決めていました。社員にしてみたら突然のことで驚いたでしょうし、反発があることも想定していました。

それでもスピード感を持って進めていったところ、DXも週休3日制も、3か月もすれば慣れてしまったようです。こうした改革が定着し、組織の規模が拡大していくなかで、「現場の声」の拾い方も変わってきました。以前は私が直接若手社員から意見を聞くこともありましたが、今は各現場のリーダーや責任者を信頼し、彼らを通じて声を吸い上げる体制へと移行しています。適切なフローを守ることが、現場をまとめる管理職の成長にもつながるため、現在は各施策の責任者に権限を委譲し、現場主導での運用を任せています。

一連の改革の成果として、働く時間が減り、休みが増え、納得のいく評価が得られ、会社の売上も4倍(2020年3月期から2024年3月期)になりました。この勢いで業績が伸び、規模を拡大できれば、さらなるDXへの投資により労働時間を減らせるでしょう。

そもそも建設・不動産業界はIT化が遅れているため、今後、DX化が進めば、業界全体が変わる伸びシロはたっぷりあります。当社の改革も、もちろんこれで終わりではありません。社員の声も聞きながら、改善を続けていきたいですね。アンケートを取ると、いろいろな声が寄せられます。実際、今後考えている施策も、社員の意見を反映し、実現化を進めているのです。

当社の取り組みは、建設・不動産業界では画期的だったため、メディアでの紹介や視察も増え、変革のモデルケースとして知られるようになっています。こうした変革に欠かせないのは、経営者が変化を恐れない姿勢です。変革の先にある未来の姿を発信しながら、強い意志を持って前進することが必要だと実感しています。

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