大賞企業インタビュー

努力が成果につながる企業へ。残業削減から始めるエンジニア価値向上の仕組みづくりとは

辰巳電子工業株式会社

企業名
辰巳電子工業株式会社
役職
システムソリューション部 部長
氏名
市野 壮太さま

略歴

株式会社エス・エヌ・ケイ(現SNK)、株式会社スクウェア(現スクウェア・エニックス)を経て、スタートアップのゲームディベロッパーで取締役を務める。以降は、エンジニアリング・クリエイティブ・ビジネスをつなぐ領域に従事。2014年に辰巳電子工業株式会社へ入社し、ゲームプロデューサーを経て、2018年よりシステムソリューション事業責任者となる。

取り組み内容と評価のポイント

事業の安定成長を背景に、エンジニアの市場価値向上を制度化し、3年連続で業界内でも突出した昇給水準を達成。顧客からの再指名率128%を実現するなど、SES業界全体にも影響が大きい取組みを実施されました。

また、再現性を伴う仕組み、現場で機能する運用、伴走型支援、自律を促す文化の4軸で働き方改革に取り組み、キャリアコンサルタントによる定期面談や技術メンタリングなど手厚い支援体制を整備。

更に、キャリアシップ制度でキャリア志向をデータ化し、学習やキャリアチェンジ支援の成果を可視化するなど、エンジニアのキャリア形成を次の段階へと進めている点を高く評価しました。

就労環境や福利厚生を充実させ、
社員を大切にする企業文化

辰巳電子工業株式会社は1970年設立のメーカーで、長年にわたりアーケードゲーム機の企画・開発・製造・販売を手がけて成長してきました。現在は、アーケードゲーム機やプリントシール機、スマホアプリなどを開発する「アミューズメント事業」と、クライアントのシステム開発などをサポートする「システムソリューション事業」の2本柱で事業を展開しています。奈良県橿原市に本社を置き、全国10拠点で約250名の従業員が活躍しています。

ゲーム業界はアップダウンが激しく、自社でゲームを開発するアミューズメント事業だけではハイリスクです。そこで、クライアントワークによって安定した収益を得られる2本目の柱として、2019年にスタートしたのがシステムソリューション事業。自社で雇用したエンジニアがお客さま先に出向いてプロジェクトを支援するSES(システムエンジニアリングサービス)業態です。

私はもともとゲームプロデューサー・エンジニアとして当社に転職したのですが、かつての取引先や元同僚からの「手伝ってくれるエンジニアがほしい」という要望に応える形でSES事業に着手。エンジニアリング・ビジネス双方の知見やネットワークを持つ私が責任者を務めることになりました。

6名体制で始めたシステムソリューション事業ですが、全国に拠点を設け、現在ではエンジニア250名規模へと拡大。2本目の収益の柱へと成長しています。

SES事業はとにかくエンジニアがいなければ成り立ちません。関西の中でも更に郊外にある当社は、ゲーム事業でも人材採用に苦戦していました。そのため、就労環境や福利厚生を充実させ、社員をとことん大切にする風土が根付いています。こうした企業文化がもともとあったことが、SES事業における改革の取り組みにつながっています。

残業の徹底削減。
社員の市場価値アップと
長期キャリア形成を叶える体制づくり

SES事業を拡大していくのにあたり、まず着手したのは残業時間の削減です。私自身、長時間労働による心身の負荷によって、多くの仲間が離職していく姿を見てきました。SES事業を立ち上げた当初の当社でも残業が月20時間を超え、「学習の時間が確保できない」「家族と過ごす時間がない」といった声も聞かれました。目先の業務に追われて学習時間が確保できない状態では、市場価値を上げることができません。長時間労働をなくすことは心身の健康だけでなく、長期的なキャリア形成にもプラスに働きます。

SESという業態では、働く環境が常駐先によって大きく異なり、急な業務量の増加や負荷の偏りが生じやすい構造があります。そこで長時間労働にならない契約をお客さまと結べるよう、営業方針にルールを設けました。「残業の上限は月40時間」「36協定の特別条項は設けない」という条件にご理解いただいたうえで、エンドユーザー企業や大手SIerを中心に取引しています。

契約面での取り組みに加え、エンジニアへのサポート体制を強化しました。新たに「サポート課」を立ち上げ、営業・キャリアアドバイザー・テックリードが連携した三位一体のサポートを確立しました。国家資格を持つキャリアアドバイザーは、すべてのエンジニアと毎月面談を行い、現場での業務量や体調、人間関係、キャリアの方向性などを把握します。「最近残業が増えてきた」といった課題が見つかった場合、営業と連携して解消にあたります。こまめなフォローにより「負荷が限界に達するまで気づけない」ということが減りました。

テックリードとは技術面のメンターです。技術的な質問に対応するだけでなく、タスクの優先順位付け、作業手順の見直しなど、現場の生産性向上につながるアドバイスも行っています。どんな作業に時間が掛かっているのかを個別に分析し、改善策を提示することで、少ない時間で成果を出せるようサポートしています。

こうした施策を通じて、2018年に月平均18時間だった残業が、2021年には6時間台にまで減少し、現在も同水準を維持しています。残業を前提とした働き方から脱却し、少ない時間で成果を出す生産性を重視した働き方が定着しています。

営業・キャリア・技術のプロが
一体となってキャリアに伴走

SES事業は新規参入だったうえ、奈良県郊外という立地もハンデとなり、ただでさえ超売り手市場のエンジニア採用に苦戦することは目に見えていました。そこで働き方改革を進めながら「キャリア支援」「給与アップ」への取り組みにも着手しました。

SESという働き方では、常駐先ごとに求められるスキルや役割が大きく異なるため、エンジニアが自分の市場価値を判断しにくく、長期的なキャリアを描きにくいという構造的な課題があります。同じITエンジニアといっても、業務系・Web系・インフラなど分野が多岐にわたるうえ、魅力的な技術が次々に登場するため、エンジニアが「いま自分がやっていることは将来につながっているのか?」「これからどうすればいいのか?」と、キャリアに迷ってしまうことが多くあります。

そこで導入したのが、営業・キャリアアドバイザー・テックリードの三者がタッグを組む「キャリアシップ制」です。キャリアアドバイザーが毎月面談を行って勤怠やキャリアについてのケアを行い、営業が最適な案件の選定を通じて成長につながる環境を整えます。テックリードは技術的なフォローを行い、キャリアアップに向けた学習計画づくりをサポートします。三者が連携して1年後・3年後の目標を定め、実現に向けて伴走していきます。

非エンジニアのキャリアアドバイザーの存在もキャリアシップ制におけるポイントです。「エンジニアの上司には言いにくい」「こんなことを言ったら評価が下がるのではないか」などと不安を感じることなく、思いを伝えることができるからです。

SESにおいては、新しいことにチャレンジしにくいという課題もあります。スキルによって単価が決まってしまう現状、新しい分野では単価の低い未経験者とみなされてしまうからです。しかしその点も、テックリードの指導によって「実務経験はないもののスキルや素養はある」と証明できる実績と資料を作ってクライアントにアピールするなど、キャリアシップ制によって、単価を下げずにキャリアチェンジを実現した実績も増えています。SESが持つ「幅の広さ」というメリットを生かして、一人ひとりに合ったキャリア形成ができる環境となっています。

「努力すれば市場価値が上がる」
業界と仕組みづくりを目指して

SESという業態では、エンジニアの給与は参画する案件の単価に左右されます。案件の単価は求められるスキルのレベルと担当する役割、そしてクライアント側の予算と評価によって決まるため、当社の裁量で大幅に改善することは難しい構造となっています。その結果、事業立ち上げ当初は「努力しても報われない」「頑張っても評価されない」「現場で評価されても収入が上がらない」といった声が多く聞かれました。エンジニアのために給与をアップしたいからといって、利益を削って給与に還元する方法は、経営の健全性を損なうことになり、持続可能ではありません。

エンジニア個人が成長でき、会社も成長していける状態をつくるには、エンジニアが努力すれば市場価値が上がり、それが報酬に反映される仕組みが必要です。そのために当社では、エンジニアの市場価値を計画的に高める仕組みを制度化し、「エンジニアの市場価値の見える化」「現場で評価されるよう実務力を強化」「キャリアチェンジ支援」「技術部門と営業活動の連動」「事業構造の最適化」という5つの施策すべてを連動させて運用しています。

給与アップ施策によって、2024年の平均昇給率は前年比11.8%、2025年は14.6%と、業界平均を大きく上回りました。中途入社者の年収も大きく改善され、2022年以降の転職者は全員が前職の年収を上回っています。当社に転職することで年収が大幅に伸び、「子どもが希望する教育を受けさせることができました!」と感謝の言葉をいただけたこともあります。

2025年にマイナビ転職で「給与アップ優良企業賞」をいただいた後も、エンジニアとの連携を更に密にし、地道に改善の取り組みを続けてきました。これからも「キャリアを本人任せにしない」という方針のもと、制度と運用を継続的にアップデートし続けていきます。

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©「マイナビ転職 BEST VALUE AWARD」 実行委員会

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