ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ十二二年間でもらったボーナス5万円。 受けたパワーハラスメントはプライスレス!

派遣社員として仕事に関わる以上、どうしてもそこには「お手伝いさん」的な線引きが存在します。
「それじゃいやだ、もっと深く仕事に関わりたいんだ!」
そう思ったM本さんは、社員数名のベンチャー企業へと飛び込む決意をしたのですが……という、今回はそんなお話です。

入社後引き継いだプロジェクトには、地雷が埋め込まれていたのです

社長にもずいぶん気に入ってもらうことができ、年収もそれ相応のものをと約束されて、転職活動を終えたM本さん。入社直後は、早々に社長期待のプロジェクトを前任者から引き継いで、彼女の「がんばりまっせ正社員人生」が幕を開けたはずでした。
ところがこのプロジェクト。実験レベルでは「うまくいっているように取り繕っていただけ」であることがわかり、顧客の要望である量産化には、どうしてもいくつかの改良が欠かせません。そこでM本さん、社長に進言して、顧客への改良提案を伝えてもらうことにしたのだそうです。
プロジェクトに携わって、一ヶ月後のことでした。
「簡単に量産できると思っていた。それができないんだったら必要ない」
顧客から返ってきたのは、そんなにべもない言葉。そしてあろうことか、プロジェクトの白紙撤回という決定でした。
これに社長は大ショック。実際に自分が提案してみた結果とはいえ、あんまりショックなもんだから、腹の虫がおさまりません。
そして矛先はM本さんへと向かいました。

ボーナスはなし、基本給4万円カット。
入社早々、彼女にはそんな裁定が下されたのです。

迫り来るハラスメントの数々

社長の態度は急変しました。
給与カットのみならず、M本さんは仕事を取り上げられ、商品の箱詰め作業といった単純労働に追いやられてしまいます。口なんて、きいてもくれません。皆の前で怒鳴りつけられるのも、珍しいことではなくなりました。
「すべてはプロジェクトがこけたせいだろうか」
いやいや、そうではないとM本さんは言います。社内のパートさんたちがいつも社長を持ち上げていたのに対して、彼女はそうしたことをいっさいしなかったのです。そのせいか、試用期間中には「素直さが足りないので、ウチにはあわないと思う」なんてことも言われてたりしたのでした。
そう、主な理由はそこなのです。きっと「女のくせにおもしろくない奴だ」という偏見が彼にはあったのでしょう。それがプロジェクトの失敗によって一気に爆発してきたと……。 なんとか技術的な実績を見せつけて、それで認めさせることができればと、M本さんはがんばりました。ボーナス支給日前に、別室に呼びつけられて「退職願を書け」と迫られようともがんばりました。休日に電話してきて「退職願を持ってこい」と迫られてもがんばりました。
けれども彼女はある日見てしまったのです。自分の給与が、新卒の初任給よりも安く設定されていることを……。
「キミには期待していないし! 専門知識はあるけどウチにはあわないんだから、これでも給与をあげすぎてるぐらいだ!」
社長に質問して、そう罵声をあびせられた日、M本さんは退職を決めました。今は新しい会社で、忙しくとも穏やかな気持ちで毎日を過ごしているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

M本さん、聞けば年収400万と約束されていたはずなのに、300万ももらえてなかったそうなのです。それでこの苦労でしょ?
もうほんと、お気の毒でした……という他に言葉が見つかりません。
エンジニアといえば男社会だから、女の人は苦労するよ……とはよく耳にする言葉です。自分のいた職場では「そんなこともねぇんじゃねぇの~?」としか思えなかったのですが、こうした体験談を聞くと、やはり難しい世界はあるんですね。世界というか、この社長が難しかっただけかもしれませんけども。
そうそう、私の周囲でも、一人男尊女卑に染まったハタ迷惑なオヤジさんがおります。この社長さんって、きっとそれに近いものがある人なのでしょう。うん、実にハタ迷惑。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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