ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ六Uターンを果たした先で見たものは?

実家の両親が年老いた時…。その問題は多くの人が気にするところだと思います。引き続きの投稿ネタ第二弾は、そんな両親のためにもUターン就職を果たしたI山さんの、ひとつの選択を示唆するお話です。

零細企業の現実?

一念発起してUターン就職だと決めたI山さん。早期退職者制度にのっかって会社を辞めた後は、故郷に戻ってハローワーク通いや派遣登録などを三ヶ月ほど続けたりして、転職先を探しました。
見つけた先は、車で一時間ほど行った先にある社員数25名ほどの小さな会社でした。この会社で、彼は再び回路設計エンジニアとして、第二の会社人生を歩み始めることになったのです。ただ、毎晩10時頃までサービス残業を強いられたりと、正直楽ではない仕事でした。
でもまぁほら、Uターン就職できたわけだし、田舎だとなかなか小さい会社ばっかで贅沢も言えないしでね。これくらいはガマンガマンだと、割り切ってすごしていたのです。
ところが、入社から9ヶ月が経った時のことでした。

「いて、いてててて……」
一緒に仕事をしていた機械エンジニアの同僚が、急な腹痛をうったえて病院に駆け込むことになったのです。

「翌日から入院してください」
医師の診断は、胃をかなり凶悪に患っているというものでした。急いで入院する必要があるという話です。
しかしその報告を受けた上司、迷うことなく同僚に向かってこう言ったのです。「じゃあ一週間待て。入院は引き継ぎ業務をしっかりと終わらせてからだ」オニか……?そう思った瞬間でした。

無理する理由はなんだろう?

青い顔で残業をする同僚の姿。本人は、それをしごく当たり前のことと受け止めていたようですが、I山さんにはそう思えません。
それを当たり前と思う企業風土にも、なじめないものを感じはじめていました。
「これがもとで取り返しのつかないことになった時、会社はいったいどうするつもりなんだろう……」
「身体を壊した時、後の人生は誰が責任を持ってくれるんだろう……」

さらには、そんな身体で残業をする同僚に対して、声のひとつもかけようとしない上司。なんだそれ……と、これがますます彼のそうした気持ちに拍車を掛けました。
幸い、同僚は引き継ぎ期間中に服用していた薬が効いたようで、最終的には「入院の必要なし」なんてことになっちゃいました。あらまよかったですわね……という話です。本当なら。
しかし隣でずっと事の顛末を見ていたI山さんは、これがもとで仕事のやる気がすっかり失せてしまったのでした。
毎晩サービス残業に明け暮れた結果が、こんな扱いだというならたまったもんじゃありません。いざという時に面倒を見てもらえないのに、無理してがんばろうと思えるはずもありません。
I山さんは、そう思ったのだそうです。
結局それから1年半ほどして、彼はこの会社を辞めました。そうして今は、自営で細々と暮らしているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

家族を支える働き手としては、「稼ぐこと」も大事でしょうけど、「働き続けられること」も大事だよな。そう思った体験談でした。大企業と零細企業とのギャップもあれば、家族に対する責任と仕事に対する責任の様々な考え方……という側面もある話だと思います。なにを「守るモノ」として据えるのか、それによって選択は様々に変わるものなんでしょうね。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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