ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ十八小さなソフトハウスでフレックス。 自由さだけが取り柄だったはずなのに……。

毎日毎日サービス残業が続くK上さん。彼にとって唯一の救いはフレックスタイム制で出勤時間に自由が効くことのはずでした。
ところがボーナスの査定時にあろうことか出た言葉は……。
「あ、ムリ」と思わず言いたくなるのもさもありなんな、今回はそんなお話です。

小さなソフトハウスに入ったのです

厳しい就職戦線をくぐり抜け、K上さんが入社したのは社員数5名ばかしの、小さなソフトハウスでした。
しかし「就職できた」とほっとしたのも束の間。いざ勤めだしてみると、まぁ毎日サービス残業の雨あられで終電に間に合わせるのがやっとだわ。そのくせ月給は手取りで12万円ほどしかもらえないだわで、つくづく「働けど働けど我が暮らし楽にならず」が心底身に染みる日々なのです。
しかし社長だって、毎日11時になると営業回りに外へ出て、そのまま夕方18時頃まで戻らないなど忙しそうにしています。周囲の先パイたちだって、当然のことながら大変そう。 これが社会というものか……。
半ばそう言い聞かせるようにしながら、K上さんは耐えていたのでした。
もっとも、この会社にだっていいとこはあります。フレックスタイム制を採っているので、朝は10時出社でも大丈夫。服装だって自由だから、ポロシャツとジーンズというラフな格好でも大丈夫。
仕事は毎日大変だけど、自由な社風と引き替えなんだ。そう思えばなんとか我慢もできる……かなぁ……う~ん。
そんな感じに、彼の1年目は過ぎようとしていったのでした。

お叱りにびっくり、のち新事実に脱力

会社にも慣れてきて、季節がめっきり冬めいたある日のこと。嬉し恥ずかしボーナスシーズンを前にして、「ボーナス査定の面談」なるイベントがありました。
初のボーナスに心ウキウキでそれに臨んだK上さんは、そこで驚きの言葉を耳にします。
「お前! 勤怠が悪すぎるんだよ!」
は? 彼にはさっぱり何のことだかわかりません。
「10時出社が当たり前とか思ってるだろ!!」
え、だってフレックスで許可されてるじゃないですか。
K上さんにしてみれば実に理不尽なお叱りですが、彼の言い分は通らずじまい。当然ボーナスの査定はボロボロです。
しかも追い打ちをかけるようにして、彼はある新事実をつかんでしまいます。
毎日11時から18時まで外回りをしている社長。それを見て営業大変なんだなと思っていたK上さん。しかし!
単に社長は、毎日その時間に奥さんとテニスをしていただけの話だったのです。
…………。
「あっムリ」
なんというか心底脱力したというんですか? バカバカしさ極まれりというんですか?
そしてK上さんは退職を決めたのでした。
その後、彼の転職活動は職歴の浅さゆえに難航します。結局2年ほどをフリーで働くことになるのですが、そこで得たツテを辿ることで、見事1社から内定をもぎ取ることができたのだとか。
そんなK上さん。今は一部上場のソフトウェア会社にて、デジタルテレビ関係のシステム作りに精を出しているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

すみません、私この体験談読んだ時に、思わずちょっと笑ってしまいました。
だってヒーヒー働く社員をよそに、「パカーンポコーン」とテニスやってるって……。その対比が、想像すればするほどあまりにおまぬけな図に見えて、ちょっとこらえきれなかったのです。
もっともK上さんにしてみれば、今の会社に行き着くまでに2年間フリーの期間があったともいいますし、決して笑い事で済む話ではなかったと思います。
本当にお疲れ様でした。そして、よい職場に巡り会えたこと、本当におめでとうございます。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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