ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ十九喉もと過ぎれば熱さも忘れ……。 バカバカおバカと悔やむワケとは?

かつてソフトウェア開発会社に籍を置いていたI田さん。その後転職した通信建設業界では、大幅に増えた給与と、良好な人間関係とに満足して過ごす日々でした。
ところが好景気はいつまでも続かずに……。
そして出ました運命の分かれ道。バカバカおバカと自らの選択を悔やむ、「それも人生」なお話です。

共感したフィロソフィ(企業方針)

新卒で入ったソフトウェア業界で約9年。汎用機でバリバリの開発者だったI田さんは、「ダウンサイジング」という時代の潮流に巻き込まれ、「汎用機は忘れて、Windows98で開発よろしく」と技術の蓄積を放棄させられるという憂き目にあうこととなります。
それに加えて連日のように続く徹夜生活。
なんだかむなしいし、しんどいしで、もうこの業界はムリだわと、彼は転職を決めたのでありました。
次に入ったのは通信建設業界でした。時代の流れもあって、基地局の用地交渉や保守の仕事は大賑わい。「常に崖っぷちに立っているつもりで、全力で仕事をしなさい」という企業方針にもいたく共感して、「ガンバレ、ガンバレ、とにかくガンバレ」と全力で突っ走り続ける毎日だったのです。
通信建設業界に来てからは、むちゃな徹夜もなくなりました。それでいて基本給はかつての1.3倍。加えてボーナスなんて、いっきに増えて感動ものです。しかもざっくばらんな人が多くて人間関係も良好で、実に実に満足度の高い転職結果のはずでした。
そう、「はずでした」なのです。
入社して、4年ほどが経った頃でした。「儲けがないから残業代を払わない」なんてことを、会社が始めだしたのです。

正常な判断を失っての転職は……

全国的にインフラ整備はすでに終了しつつありました。つまり基地局の建設なんて、もう仕事がないのです。こりゃやばい、こりゃいかん。会社にあったはずの金のなる木は、今やどこにもなくなっていました。
残業代も出なくなり、無理な仕事も増え、あげくに「ガンバレガンバレの社風」。ガンバレガンバレって、いつまでガンバりゃ楽しい未来が待ってるっていうんだよ……と、I田さんが思ったとしても不思議はありません。
いつまでも「ガンバレ」だけでは疲れ果てちゃいますものね。
かつて共感したはずの企業方針は、この時には耳障りな念仏程度にしか聞こえなくなっていました。
そんなわけで2度目の転職。
とはいえしたい事も見つからず、生活のためという割り切りもあり、選んだ職場はなんとソフトウェア業界。転職活動自体はハローワークにて1カ月ほどであっさり内定を得たものの、いざ勤め始めてみると、思い出されるのはあの苦痛だった日々ばかり。 だって変わってないんだもん。
現在のI田さんは、納期間際やバグ発生による阿鼻叫喚をまたもや味わいつつ、いつかそこから抜け出す日を夢見ているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

そうそう、離れると「そんなに悪くもなかったんじゃないか」みたいなこと思いがちなんですよね。いいとこばっか見えてくるというか、「今はまた違うだろう」ってなことを考えたりもするし。
このI田さん、抜け出すといってもすでに年齢が年齢なので、次の転職は考えてないそうです。やるなら独立か……と思いつつも、現状の忙しさに追われてその準備ができず、ジレンマに陥っている状態なのだとか。
なんとかジレンマを脱出して、その目論見を達成して欲しいものです。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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