ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ四十ボクは必殺仕事人 安定を望んだ会社探しで、彼が抱く野望とは

プロジェクト毎に仕事を請け負い、オン・オフがはっきり分かれる生活を謳歌していたF井さん。ところが結婚に際して「安定して欲しい」と彼女から頼まれた。そして彼が選ぶ道とはジャジャーン! ……と、今回はそんな体験談です。

オンオフのメリハリに満足な日々

主にプログラマやSEとして、多数のプロジェクトに関わってきたF井さん。開発フェーズに投入されることが多く、プロジェクトとプロジェクトの間は完全なオフとして休みを満喫するのが常でした。
忙しい月には150時間や200時間といった残業をこなし、休みの間はジムで鍛えたり漫画喫茶に入り浸ってみたりと余暇を楽しむ……。仕事面では火事場から火事場を渡り歩くようなことが当たり前に続いていましたが、間に1週間や半月というしっかりした休みが入ることで、「メリハリがしっかりしている」と不満などありませんでした。
この時のF井さんの立場はプロジェクト毎の派遣契約。ただ、派遣元となる会社とは正社員の契約を結んでおり、プロジェクト終了後の空白期間も、自社に出社さえしていれば普通に給料は出たといいます。
「でも、仕事をしないのに給料をもらうのが自分で許せなくて」と前述のようにジム通いや漫画喫茶などの「出社しない道」を選択したF井さん。もちろんこの間は無給となるわけですが、それも含めて 「メリハリのあるオン・オフ生活」を、彼は選んでいたのでした。
ところがこれに、結婚を決めた彼女から「No」が突きつけられました。「給料が少々下がってもいいから、月ごとに収入が上下する暮らしはやめて欲しい」とお願いされてしまったのです。

ならば野望をと舵(かじ)を取る

彼女の願いは、とにかく「収入面での安定した生活」でした。なにも贅沢させてくれという意味での「安定」ではありません。おそらくは、毎月の収入が激しく上下する状況では、落ち着いて生活できないという思いがあったのでしょう。
考えてみれば、現在の会社では住宅ローンなども組ませてもらえそうにはありません。それからすると、彼女の願いは実に妥当なもののようにも思えます。
こうしてF井さんは、転職活動に臨むこととなりました。もともと業界に対して「SEやプログラマを使い捨てにする風潮がある」と感じていた彼。なんとかその状況を変えていきたいという野望も抱えていました。
「ならば上流工程が出来る会社でプロジェクトマネージャとなり、SEやプログラマを楽させてあげられるようになりたい」
転職活動に対する彼の方針は、そんな内容で固まりました。そしてしばらく「夜中に仕事、始発で帰宅、朝方に面接を受け、昼前に出社」という24時間操業を続けた結果、成果主義をうたう、とあるシステム会社に入社を決めたのでありました。
そして2年……。
「成果主義が機能していません」とはF井さん談。けっきょく横並び主義での昇給なので、「成果主義」を言い訳に当初低くおさえられた給料も今ひとつあがってくれないまま。自身の担当も、開発工程メインとされてしまって上流工程には深く関われないなんて現状もあり、少しだけ転職を意識してしまう今日この頃なのだといいます。

オチの一コマ
本日の一句

正直なところこの業界って、スケジュールの無理やコスト面での無理、その他色々な無理をなぜか人間に吸収させようとしてしまう。そんな悪弊があるようには思えます。
おそらくは、これがF井さん言うところの「使い捨て」の意味なんでしょう。
そんな悪弊を「この業界、こんなもんだ」と慣れるのではなく、変えようとがんばっているとはすばらしい。是非その野望、いつか現実のものに変えて欲しいなと願うばかりです。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

著書紹介

キタミ式イラストIT塾「ITパスポート試験」 平成22年度キタミ式イラストIT塾
「ITパスポート試験」 平成22年度

出版社:技術評論社
定価:¥2,079(税込)
http://www.amazon.co.jp/dp/4774142026

★このコーナーが本になりました!

SE・エンジニアの本当にあった怖い転職話SE・エンジニアの
本当にあった怖い転職話

出版社: 毎日コミュニケーションズ
定価:1,470円(税込)

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

勤務地を選ぶ

職種を選ぶ