ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ五十条件は良くとも、上司がちょっと……。 そして書くのは退職届

給与の遅配がはじまって、こりゃいかんぞと転職を決めたS浦さん。幸いにも「これなら納得できる条件だな」と思える会社が見つかって、無事転職を果たしたはずだったのでありますが……。
条件だけで、安心できるものではない。そんなことを考えさせられる、今回の体験談です。

会社には満足してたんだけど

昼の作業は定時まで。それが18時に終わったとすると、そこから今度は24時までが「夜間保守作業」という時間になりました。しかし昼の仕事にも残業は当然発生したりするわけで、それが別段珍しいことというわけでもないわけで。
そんなわけでS浦さん、毎日毎日、ほぼ2人日分の仕事を割り当てられて、四苦八苦するはめになってしまったのでした。
給与はその後もポツポツ支払いが遅れて、彼の生活に不安な影を落とします。こうして彼は、否応なく「転職」という道を選ぶしかなくなってしまったのです。
……と、転職を決断したはいいものの。
開発に対してリーダーという立場で責任を背負い込んでいた彼のこと、いざ転職をと思っても、なかなか思うようには動けません。転職サイトや人材紹介会社を頼って面接まではこぎつけるものの、日程調整が難航するのが毎度のことで、時にはそのせいで、話自体が流れてしまうことも。
けっきょく転職に2カ月を要したんですけど、それは面接の日程調整に時間を食われたのが原因ですね」とS浦さん。
そんな彼が移った先は、グループ全体で100名ほどの規模となるソフトウェア開発会社でした。そこで彼は、英⇔日の翻訳ソフトウェア開発を行うことになったのです。
「開発のみに集中してもらう」
そう面接で言われた点が、S浦さんは気に入っていました。

条件はいいと思ったんだけど

S浦さんが面接時に言われた条件は、次のようなものでした。
「勤務時間は11時~17時をコアタイムとするフレックスタイム制。年俸400万。開発のみに集中してもらうから」
うんうん、いい条件だなと納得して決めたものです。ただ1点だけ、なーんか面接で顔をあわせた上司が人間的にあわないような気がするな……と、そんな不安はあったんですけども。でもその上司の口から上記の説明がなされたわけだし、まぁ大丈夫かな、うん大丈夫だよきっと。
……と、そんなことを思うS浦さん。そうして、彼の新しい会社での第一歩を記す日がやってまいりました。
「会社には朝9時に来てね」
「朝は運用保守の仕事を兼任してください」
「年俸400万と言ってたけど、ボーナス分は可変なので景気の悪い今は満額は支払えませんから」

ニタニタニタ、ニタニタニタ……と笑みを浮かべながら話す上司。話が違うやんけーと、さらに上へ掛け合ってみると、「朝9時から」とか「運用保守と兼任」というのは問題視されたものの、年俸については改められず。 そして何より、その上司の下という現実は変わることがなく……。
どこに行っても不満はあると思いますが、その落としどころを間違えると大変なことになると思います」
そう締めくくるS浦さん。今は転職を後悔しているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

昔自分が勤めていた会社でも、こうした「話が違う」というのは多々あったようです。中途でやってきた上司さんが、「年収とか、待遇とか、面接で言われたのとぜんぜん違うんだよなぁ」とぼやいておりましたから。なんだかんだと1年近くがんばった末に退職していきましたけど。
この体験談を読んで思ったのは、「条件面で嘘つかれたら、即座にスパッと辞めちゃうのも手だな」ということです。そうでもしないと、そういった悪しき部分が淘汰されていかないですもんね。
最近は転職市場が活況で、人材の流動性が高まりつつあると耳にします。その結果、会社が社員に真摯に向き合わないと立ち行かなくなるような、そんな時代になってくれるといいな~などと思うのでありました。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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