ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ五十七苦しくったって~、悲しくたって~……と 踏ん張って、待っていたのは諭旨解雇

人事部長に嫌われて、冷たい先パイに虐(しいた)げられて、社内で孤立していく一方のN井さん。
でも、やっと見つけた正社員の仕事だし……と、がんばる彼女にどんな審判が下ったのか。
そんな今回の体験談です。

覚えるチャンスを、ギブミープリーズ

N井さんは、もともと物作りの仕事に携わりたいと考えており、そのために転職した会社でした。システム開発系の会社はどこもかしこもダメだったので、まずはIT系の会社に入ることを優先した結果だといいます。
「入社後に異動願いが認められれば……と思ったんですが」
今回のケースでは、残念ながらその目論見はハズレでした。N井さんの入ったこの会社は、女性社員の異動願いなど通るはずもない社風だったのです。
この会社でN井さんが行うべき本来の仕事は、「納めた業務用ソフトの定期保守作業や不具合発生時の対応等」でした。当然のことながら、すべてお客さんのもとへ出向いての仕事となります。
しかし4コマにもあるように、先パイ社員はいつも1人でさっさと出向き、N井さんを同行させてはくれません。なんとか迷惑をかけないように、自分で見て仕事を盗もうと思っても、作業現場そのものを見ることが叶わないのです。
入社から3カ月が過ぎた頃、最初の人事考課査定が待ち受けていました。
直接の上司からいただいた言葉は「事務用品の納品作業が、アナタに100%乗っかっている現状は今後少しずつ改善したい。だから今後は本来の業務であるOAインストラクターの技能を伸ばして欲しい」というものでした。
しかしその後、人事部長から出た言葉は……。
「納品ばかりやって、本来伸ばすべき肝心の業務に関するスキルはまったく伸びていない!!」
「即戦力を期待して中途採用したのに、期待はずれもいいところだ!!」

さんざんな内容でした。

いじめ、そして諭旨解雇へと……

それからしばらくして、N井さんの元へお局社員からのイジメの魔手が伸び始めました。なにかにつけて絡まれる上に、周囲の男性社員にはあることないこと吹き込まれ、しまいにN井さんは、彼らに電話を取り次ぐだけでもイヤな顔をされる始末です。
そのうえ先パイ社員からは相変わらず仕事を教えてもらえない日々が続き、いよいよ人事部長からも完全に嫌われた格好で評価が固まってしまう始末。
「顧客からのクレームがあまりに多すぎるので退職してくれ」
とうとう直接の上司からはそんな言葉が飛び出しはじめました。しかしどんなクレームですかと聞いても答えてはもらえません。
30歳を過ぎてやっと得た正社員の仕事。それでも……とがんばり続けたN井さんでしたが、上司、先パイ、人事部長からの十字砲火はなおも続き、とうとう最後は「諭旨解雇」……として、ほぼ強制的に退職を余儀なくされてしまいました。
「今から思えば、人事部長に嫌われた段階で続けようのない会社だったので、上司は傷の浅いウチに……と悪役に徹して自主退職の道を勧めていたのかもしれません」
さて、諭旨解雇通告後、退職までの1カ月間。N井さんはなんとか次の職を見つけようと、ハローワークの求人情報を片っ端からあたりました。首都圏ほど求人が多くないため、会社規模や業種などを選んでもいられないのです。
「それでも、ここへきてプログラマとしての仕事がしたいという思いが強くなり、プログラマ関係の求人があれば、『ダメ元で』とすべて応募しまくりました」
そんなN井さん。数多くの「不採用」に凹みながらも、なんとか1社からプログラマ職の内定をもぎ取ることに成功します。
それはえらい、やったー!!
……かと思いきや。
「下請け中心な会社なのですが、現在仕事がないみたいで、会社自体苦しい状態です」
今は派遣で東京に出向させられているN井さん。果たして一人前になるまでこの会社は持ってくれるのだろうかと、不安を覚える日々だそうです。

オチの一コマ
本日の一句

難しい。非常に難しい問題だよなー……などと頭を抱えてしまった体験談でした。
転職先に対して彼女が抱く不安は、多くの点で当たってそうなんですよね。どうせ地元を離れた東京へ飛ばされる身でもあることだし、ならばそっちで職探しを出来ないものか。
そんなことをつい思ってしまいました。
プログラマとして一人前かどうかは、プログラミングスキルもそうですが、そもそも「仕事の段取りをキチンとつけられるか否か」に尽きると思います。
N井さんが働く現場で、良き手本が見つかりますように。そう願ってやみません。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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