ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ六十六「高卒は現場で」という暗黙の了解。それがイヤで、彼は新天地を目指すのです

学歴によってキャリアパスが差別される。高卒で社会に出たT中さんのぶつかった壁は、そんな旧態依然とした悲しい現実でした。
頑張って頑張って、「仕事が出来る」と自負できるまで頑張ったとしても、その先には希望の道がない……。
じゃあ、どうしよう?
そんな今回の体験談です。

プログラマを目指すが全滅に

T中さんの在籍していた会社は、社内の人間関係こそ良かったものの、彼が在籍していた3年間で約8割もの人が辞めていくような、離職率の高い職場でした。長時間残業の多さと、一定時間以上の残業代は一律カットという理不尽さ。それが離職率の高さに拍車をかけていたようです。
さて、情報系の高校に通っていたT中さんは、退職後「SE/プログラマ」方面の職に就くことを目指して転職活動をはじめます。ハローワークに登録して、その方面の求人には片っ端から応募をして……という毎日。しかしどこに行っても「即戦力が欲しいから」という理由で、すげなく断られてしまいます。
「情報処理系の資格もなければ、実務経験もなかったので」とはT中さん。
しかし彼は、そんなことでは諦めません。
「とりあえず職業訓練校に入りまして、そこで基本情報処理試験に合格したんです」
これが功を奏し、資格取得後に応募した会社から彼は内定を取ることに成功します。地元にある、人材派遣を主業務としたシステム会社でした。
「資格そのものよりも、目的に向かって"合格"という結果が出るまで行動したことが評価されたんだと思います」
こうして希望の職にめでたく就くことができたT中さん。ここから彼のプログラマ人生が……始まるといいんですが。ごほんげふん。

プログラマを希望したはずなのに

地元でのプログラマ職を希望して入社したはずのT中さん。しかし彼を待っていたのは、「地元から遠く離れた北関東の会社に、電子系エンジニアとして派遣する」という社命でした。
もちろん彼に、電子関係の知識などありません。
「もう、最初の1年は地獄でした。そもそもの知識がないので、話してることが理解できなくて……」
この時期のT中さんは、理解できないままの作業が効率の悪さを招き、「夜中の3時に帰宅して、朝の7時に家を出る」という日々が数カ月も続いたのだといいます。
しかし、派遣先の方が厳しいながらも適切な課題を与えてくれるおかげで、この後彼は着々と力をつけていきます。
そして入社から6年。今では、社内のトレーニング担当を任されるほどに、T中さんは成長を遂げることができたのだとか。
「ここへきて、電子系の仕事に、自分の得意なプログラム系の仕事を組み合わせることができるようになり、客先でも新たなポジションを確立することができました」
そう語るT中さん。今の職場には「育てていただいた」という恩義も感じており、転職自体にはもちろん「満足!!」なのでありますが……。
「地元に戻りたいという意識と、会社への恩と、待遇面や将来への不安が天秤の上でゆらゆら揺れている……という感じで」
まだまだ彼の将来には、ドラマが待っているようです。

オチの一コマ
本日の一句

T中さんの体験談を読んでいると、節目節目でちゃんと何らかの結果を出して、それから次を考えるという切り分けができる人なんだろうな……という印象を受けました。
だから次の展開が必ず自己の成長につながっていて、読んでてとても清々しいんですよね。
「まずは頑張る」
その大切さを実感させられる体験談でした。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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