ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ六十九横並び査定の会社で、でも頑張って……。結果倒れて損ばかり

いつも査定は横並び。頑張っても頑張らなくても、待っているのは同評価。
じゃあ頑張らない方が得じゃないか?
そんな職場にあって、しかし頑張り続けたK林さん。これがおとぎ話の世界であれば、めでたく報われて良かった良かった……ってな話になるところでありますが。
はてさてどうなりますやらな、そんな今回の体験談です。

復帰後に待っていたのは、片道2時間かかる勤務先

ただでさえモチベーションの上がりづらい環境、それに加えて職位までが上がらなくなったとあっては、K林さんがこの会社で働く意義を見失うのも無理ありません。
とはいえ、まだ転職を「意識するだけ」で、決意するところまでは至っていませんでした。
「その後、出産のため産休を取って、産後2カ月で職場復帰したんですが……」
上場企業なので産休制度自体はしっかりしていたらしいのですが、技術職で産休を取った前例はなく、上司もその扱いに困り気味だったようです。そんなもんだから、当然K林さんもどことなく肩身が狭い。
そんな彼女の復帰後の配属先は、自宅から2時間かけて通わなければいけない場所にありました。しかもそこのリーダーさんがやたらムラっ気のある人で、「同じ事を3回聞いたら殴るからな!!」と新人の子を威嚇(いかく)していたりして、やたらギスギスした職場なのです。そのまた上の上司さんも、誰かがミスしたら「ガン!」と音を立てて机を蹴っ飛ばしたりしているし……。
「私自身が怒られることはまずなかったんですが、それでも他の人がされているのを見るだけで気分がゲンナリしました」
子どもを保育園に預けているので、送り迎えの関係上、通勤に片道2時間というのはかなり無理がありました。さらにこの職場風景。ちょっと長く居たくはないなと思うに十分です。しかも正直、この現場でやる仕事のレベルって……ちょっと……低い……かも。
さまざまな要因が重なり合って、K林さんは転職を決意することになったのでした。

残業少なめでお願いします

「30代女性、子持ちという条件だと、一度離職しての転職活動は厳しいと思いました」
自身の立場をそう分析したK林さんは、当時の職場に籍を置いたまま、並行して転職活動を行うことにしました。何より、離職してしまうと子どもが保育園を辞めなくてはいけなくなってしまうため、「離職→転職活動」というステップは取りようがなかったのです。
転職サイトや人材紹介会社を利用して、100社程度の紹介を受けました。しかし、「社内SE希望なのでメーカーや金融機関に業種を絞り、子育ての関係上残業は月30時間まで、通勤はドアtoドアで1時間」という彼女の条件は、かなり難度の高いものであったようです。特に「IT系で残業少なめ」という条件がネックになり、結局、紹介を受けたなかで、応募するに至った会社は10社程度でした。でも、そのうち2社から無事内定が出たことで、彼女の転職活動は終わりを迎えます。 「最終的には、産休を取得した女性社員が複数いると聞いたことと、親会社が大手企業なので、コンプライアンスがしっかりしているだろうと判断して決めました」
とはK林さんの弁。一方、相手の会社からは、「現在のスキルマッチングではなくて、未経験分野でもその都度新しい技術を吸収してきたという彼女の姿勢」が評価されたようでした。
ただ、転職して数カ月。確かに平均残業時間はK林さんの望み通りでした。ですが、彼女の配属先は他部署と比べて残業が多い部署……なのだとか。おかげで入社当初は「失敗した」と落ち込んだともいいます。
「今は開き直って、なるべく早く自分の仕事を終わらせて帰宅するようにしています。覚えることもたくさんあって大変ですが、残業時間が他の人より少なめでも、職場に必要と言ってもらえる人材になるのが目標です」
仕事と家庭とを両立すべく、K林さんは今日も前向きに突き進むのでありました。

オチの一コマ
本日の一句

このK林さんという方は、とても現実的に「何が自分の努力で改善できて、何が自分の努力では改善できないか」が判断できる方なのではないかなぁと思いました。
単に「頑張れ」と言うのはたやすいことです。でも、それだけじゃ済まないことがあるのも現実です。その見切りをどうつけるか、どこまでが自分の頑張りで解消すべきことなのか。難しいですよね、その線引きって。
自分にとっての仕事とは、何を実現するために必要なことなのか。それを自問することが、線引きするために大事なことなのかもしれません。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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