ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ八十二満足できる仕事の職場……では金がなく、金を得るべく転職したら……待っていたのは不満足!?

年収を取るべきか、仕事内容の満足度を取るべきか。ある意味、己の仕事選択に際して、誰しもがぶちあたる命題なのかもしれません。
今回のF木さんも、そんな命題にぶちあたってしまった1人。やりがいを持ち、満足感を抱きながら働くなかで、彼は何を思い、そして転職してどうなったのか。
そんな今回の体験談です。

赤字だから仕方ない……とは思うものの

「みんな仲も良かったですし、人間関係は非常に良好でした」
そう語るF木さん。派遣先での常駐の仕事は、「深夜に携帯で呼び出されたり」「トラブル対応で40時間近く寝ずの対応を迫られたり」と忙しい職場ではありましたが、そんなドタバタ劇も含めて入社以来7年間、楽しく仕事をしていました。
ところが、そこまで働いても給料は安い。自社の経営が赤字なので仕方ないとは思いつつも、自分が客先から持ち帰ってる金額を知っているので、納得できないところがあるのも事実。そもそも評価がどうしても「自社内でどんな活動をしているか」と、評価者にとって身近なところに傾きがちだったので、ずっと外に出ている身には不利に働いてもいたのです。
「そろそろ結婚もしたい。そしたらマンションだって購入したい」
年々そうした気持ちが強まっていくF木さんにとって、この評価体制と給料というのは、やがて見過ごせない問題になっていきました。
「転職しよう」
人材紹介会社への登録を済ませ、転職サイトから情報を拾い……と、こうして彼の転職活動は始まりを迎えたのです。

収入は増えた……のだけども

転職を決意した時点での彼の年収は約320万ほど。忙しい月の労働時間は250時間に達しながら残業代はなし。賞与という名の金一封は年間通して15万。
F木さんの目指す生活をゲットするためには、この待遇をなんとかせねばなりませんでした。したがって、転職時に掲げた条件のひとつはもちろん年収について。あとは極力零細レベルの会社は避け、中規模以上で上流工程からタッチできる会社をあたることにしたそうです。
「なかなか決まらなくて、10社程度を受けました。期間は4カ月ほどですね」
転職活動時はちょうど忙しいプロジェクトに関わっていたため、F木さんは面接の時間を捻出するのがことに大変だったと言います。これについては、残業時に「飯食いに行ってきます」とだけ言ってダッシュで面接に走ったりとか、休日出勤した代わりとして平日に有休を取らせてもらって、そこでまとめて数社の面接をこなすなどしたそうな。もちろん転職活動については、誰にも告げることなく内緒にしていました。
そんな努力のかいあって、そこそこの規模の会社で、前職比2倍の給料をゲットしたF木さんなのであります……が。
「最初の数カ月だけという約束でコーディングオンリーな職場にまわされたんですが、それから2年半、いまだにその職場に常駐したままです。仕事の難易度もかなり低いので、自身の成長を考えた場合、ちょっとこのままだとまずいのでは……と危機感を覚えています」
当然、自社に対しては再三再四異動を願い出ているのですが、「もうちょっと」「もうちょっと」と引き延ばされるだけなのだとか。
「正直、再度転職を考えはじめています。ということは、この転職は失敗だったのかもしれません。仕事内容についても確認したつもりでしたが、前職の収入の低さもあって、どこかで収入面の方に目が向きすぎていたのかも。確認不足を痛感しています」
そんなこんなでF木さん。よりよい経験を積める環境探しのためには、まだ30代前半の今のうちに動くべきでは?……と、少々焦りを覚える今日このごろなのでありました。

オチの一コマ
本日の一句

いくら事前に確認しても、それが入社後に間違いなく守られるかといえば情勢次第で必ずしもそうとは言えない……のは事実としてあると思います。
とはいえ、今回のF木さんの場合、一番違っては困る部分が違ってしまったようなので、雇う側にも雇われる側にも不幸な事例になってしまったんだなぁと残念な気持ちがぬぐえません。
2年半我慢したわけですから、再度の転職については「今度こそ幸運を」と背中を押したい一方で、「じゃあ何を確認しとけば最悪のケースは避けられたか」のシミュレーションもしつこいくらい重ねておいた方がいいのかしら……とも思います。場合によっては「常駐主体のとこだと、また同じ結果を招きかねないから」と事業内容から取捨選択してっちゃった方がいいんじゃないかとかとか。
まだまだ体力のあるうちに、やりがいを持って働ける職場にたどり着けるといいですね。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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