巻ノ十三好景気が一転負債まみれになっちゃった!? そんなバブルの後の物語
バブル期に新卒入社を果たし、好景気の中開発者人生を開始したAさん。
ところがワンマン社長はイケイケで、ドカンと金を使いドカンと事業に失敗して……さてそのツケはどこに? 私の知人が体験した、そんな無体なお話です。
最初はボーナスが削られました
入社期にはバブル健在で、金回りのよい会社だったAさんの勤め先。仕事も豊富にあり、そんな中で彼はデータベース系の技術者として、着々とキャリアを積み重ねていました。ソフト開発の小さな会社ではありましたが、順風満帆の毎日だったといえます。
そんなある日、ワンマン社長が勝手に別事業をはじめました。うん、普通ならまぁ勝手にどうぞってなもんですよね。ところが、そう言ってられない状況に陥ることとなるのです。
社長のはじめた新事業は、見事なまでに大ゴケすることになります。後に残るは膨大な借金ばかり。
やぁ大変だなぁとか思っていたら、なんとその借金がまるまる自社に付け替えられてしまったのです。やぁ大変だ……ですよ。ほんとに大変だなんですよ。
好景気で、仕事が溢れかえっていて、金回りもよかったはずのこの会社。それがなぜか、一転して負債まみれのどうしようもない会社に化けてしまったのです。
最初はボーナスが削られていきました。
気がつけば、ボーナスはなしになりました。
残業代も消えました。
給与の支払いが遅れるのも珍しくはなくなりました。
「もうダメだ、この会社」
転げ落ちる様を目の当たりにして、Aさんはそうした思いを強めていくのでした。
CADなんて知るか!
不幸はそれにとどまりません。なんとAさんがこれまでキャリアを積み重ねてきたデータベース事業そのものも、縮小を命じられてしまったのです。
ん? 誰に?
もちろん社長さまにでございますよ。なんかCAD系開発部門におっきな仕事が入りそうだから、社員全員そっちに転換! なんて指令が下りたのです。
Aさんにしてみれば、これまでのキャリアを突然まっさらにされたようなものでした。CAD開発の技術計算なんかチンプンカンプンで、後輩に教えを乞いながらでないと、開発作業もままなりません。しかも、あいかわらず給与の支払いは滞ったまま。
……もう、辞めるか。
こうして彼は、転職への道を選ぶことになったのです。
Aさんの転職活動は、ごくごくオーソドックスなものでした。曰く「転職斡旋業者に人材登録して、そこからの紹介とあとは雑誌に載ってる求人欄に応募してみただけ」とのこと。会社紹介の葉書がバカスカ飛んできたので、あっさり決まるだろう……という予想は裏切られることになりますが、それでもさほど苦労することなく、新しい会社を見つけることができたそうです。
今度の会社は超大企業の孫会社。安定もしてるし、仕事も楽チンだしで大満足。ボーナスが普通に出ることの喜びを、久しぶりに満喫するAさんなのでありました。
そーいえば、自分がかつて勤めた会社も、社長が勝手にメモリ転がしに失敗して、そのツケで精算するに至ったんだっけ……。ふとそんな昔話を思い出しました。儲けは自分で借金は社員に転換っつーのは、まじめに勘弁してくれよだよなぁと心から思います。
そうそうこのAさん。けっきょくヌルい環境に我慢できなくなって、今は自分で会社を興してがんばっておられます。一度ハードワークが身についちゃうと、締まりのない職場環境は物足りなくなるんですよね。
色んな面で、実に共感してしまう体験談でした。
■著者プロフィール
きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/
■著書紹介
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