巻ノ二十八うつ病になり、働くことすべてが嫌になり、 考えたのは他業種への転換だったが……
毎日毎日残業代も出ない状態で終電まで働いていたJ島さん。
そんな苦労が心の病を生むことになり、この業界での未来を悲観した彼は他業種への転職を試みるのですが……。
幸せは、思いの外近いところに転がっていた。今回はそんな体験談です。
もうすべてが信じられない
未来を悲観して、退職を決めたJ島さん。この頃にはもう、働くことすべてが嫌になっており、とりあえずは実家に戻って様子を見る予定でいました。
ところが話はここで終わらない。
プライベートな話なので詳細は伏せますが、退職した直後に友人たちからの裏切りにあい、失恋することになってしまったのです。かれこれ5年以上ものつきあいになる奴ばかりだったのに……と、彼はこれでさらに意気消沈。
「他人はすべて自分から搾取するためだけに存在する」
「何をやってもうまくいくことはない」
「人なんか信用しちゃいけない」
実家に戻った彼は、もう何もする気がおきませんでした。毎日ネットゲームの画面に向かい、それに没頭する日々が続きます。
やがて退職金が入り、失業保険の給付もはじまりました。しかし、今後のことを思ったとき、「このまんまじゃなぁ」と不安な気持ちは隠せません。
仕事場だった外資系企業の社員さんから、
「テスターで来てもらえないか?」と声がかかったのはそんな時のことでした。
とりあえず当面の不安を払拭するためにと、「時給制なら」と戻ることを決めますが、本格的に業界へ復帰しようとは思えません。
そんなわけでJ島さんは、働きながら職業相談を受け、観光業界の職業訓練校行きを決めるのでした。
ちなみにこの「時給制でバイト」していた期間、彼の収入は以前働いていた時の1.5倍になったといいます。
もったいないよ!!
職業訓練校行きを間近に控えたある日のこと。テスターとして働くJ島さんは、ある人と休憩時間にばったり出会います。それは、彼がこの仕事をはじめた時の、1番最初のプロジェクトで一緒だった人でした。
「お久しぶりです~」
懐かしさもあって色々と話をするJ島さん。自然と話は職業訓練校行きのことになっていきました。
すると……。
「もったいないよ!! 今のスキルがあって他の業界に行くなんて、絶対にもったいない!!」
そこからはトントン拍子に話が進みました。職業訓練校行きは取りやめ。その人が紹介してくれた友人の会社に再就職が決まり、結局は元のサヤというか、あれだけ悲観視したはずの業界へ戻ることになったのです。
新しい職場では残業なんかほとんどなし。名古屋や関西への出張はよくありますが、それはJ島さん自身が楽しんでいるのでむしろ大歓迎。
「あれだけ嫌がっていた職種でも、環境が変われば続けられるものだなと感じました。今回、自分のスキルが外からどう見られるかを知ったことで、案外やっていける可能性が高いとわかったのも一因です」
そう話すJ島さんは、転職前と同じ「外資系の超大企業」にてサポートから開発から
テスターからと何でも屋をやっています。
でも、会社を出るのはいつも19時過ぎ。以前とは比べものにならないくらい平和な毎日を、笑い声につつまれた職場で過ごしているそうです。
仕事は人と人とのつながりが生み出すもの。今さらながらそんな言葉が頭に浮かんだ体験談でした。
これは想像でしかありませんが、彼の前会社は「臭いものにはフタ」的な対応しかしないとこだったのではないでしょうか。それが顧客との関係に影を落とし、現場にいらぬ軋轢(あつれき)を生んでいたのではないか。そんなことを思います。なのでそこから1歩外に出た時に、真っ暗だったはずの職場が、まるで違ってきたんだろう……とも。
笑い声につつまれた職場。いいですよね~。
■著者プロフィール
きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/
■著書紹介
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