ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ三十今も残るトラウマ 不安定よりは自由がいいさと我思う

飲み屋での縁がきっかけで、起業直後の会社に入社したW田さん。
しかし仕事はなく、不安定な毎日が続くだけ。そんな中、退職を決意した彼女には「訴えるぞ」という脅し文句が……。
当時の社長に対しては、今も恐怖が根強く残る、そんなW田さんのトラウマな体験談です。

私の職種はデザイナー

起業直後で、社員数はW田さんを入れてわずか4名。そんな会社に彼女が入ったきっかけは、とある飲み屋でそこの社長と居合わせた縁があり、「仕事しない?」とたまたま無職の時に声をかけられたからでした。
W田さんの職種はデザイナー。立ちあげたばかりの会社で彼女が行うお仕事は、自社ホームページの制作や、パソコンのことがわからない営業担当者への初心者講座を開くことでした。しかもなんかこの営業さん、かなり口ベタなお人なので、営業トークマニュアルなんかも作ったり。
営業マンにデザイナーが営業トークマニュアルを作ってあげる……。そんなあたりから、今にして思えば暗雲がたれこめていたのです。
営業案件は、WEBサイト構築のはずでした。そしてW田さんは、そのサイトデザインを手がけていくはずでした。
待てど暮らせど契約は取れず、会社は常に開店休業状態。そんなのが何カ月も続き、いよいよ赤字はふくらんでいくばかり。給与はキチンと払ってもらえていたものの、それだっていつどうなるかわかったもんじゃありません。
「とりあえず、これ売ってこい」
赤字を取り返そうと、社長が打った手は「保存食品の訪問販売」というものでした。どこからか怪しげな品を仕入れてきては、それを社員に押しつけていったのです。

ウチっていったい何屋さん?

飛び込みで売り歩く保存食品は、まるで売れる気配がありませんでした。すると社長、今度は「ならば実店舗だ!!」なんて言い始め、家賃の安い田舎に店舗を借りてきちゃったのです。
人通りもなく、口ごもるばかりでうさんくささが先に立つ店員。しかも扱う品が怪しげな保存食品ときたら、これはもう売れるわけがありません。
デザインの仕事なんかどこにもないので、W田さんは仕方なしにチラシを作り、毎日毎日足が棒になるまで、民家のポストに1軒1軒配って歩きました。
でも売れません。
「ウチっていったい何屋さんだったっけ?」
入社して1年が過ぎようかという頃には、そんなことすらわからなくなっていました。
こうしてW田さんは、「もう無駄に振り回されるのは嫌だ」と退職を決意します。その申し出に対して社長が返した言葉は冒頭のマンガにある通り。怒ったかと思うといきなり優しくなるという気分屋の社長がいよいよ怖くなり、W田さんは逃げるようにして社を後にするのでした。
彼女が辞めた後、残りの2人も辞めました。
面とむかって退職を切り出すと脅されるのがわかっていたので、携帯電話を解約した上で黙って引っ越していったり、病気を理由に音信不通になってみたり……。2人とも退職届も出さずに、最後の給与を捨てて逃走したそうです。
W田さんはといえば、「起業直後ではない」「自分より実力ある人が必ずいる」「一定期間仕事がある」「業種がやたら多くて曖昧な表現をしていない」ということを条件に、今は会社探しをしています。なかなか長期で迎えてもらえる会社には巡りあえていませんが、地方ではデザインやIT系職種の経験を持つスタッフは少ないもので、派遣という形で重宝されているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

この社長、人の時間をさんざっぱら食っておいて、「給与を返せ」とはよく言ったもんです。じゃあ時間を返せよと、返品してくれるならいくらでもお代は返しますよと、そんな話ですよね。
「人の上に立つ人でも、決して知識が豊富で思慮深い人ばかりではない」
そう伝えたくて、W田さんは投稿したと言ってくれました。人を雇い入れる時は、ある程度その人の人生に対する責任を負うと思うんですが、この社長には、そうした覚悟が皆無だったようです。
早く安心して働ける場所が見つかるといいですよね、W田さん。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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