巻ノ四十八「プログラマ希望」な私 そして交わされた約束はどうなった?
プログラマ希望で就職活動して、情報系の会社に入社。ただ、就いた仕事はプログラマとはちょっと違っていて……。
「いつかはプログラマ」と、そう願って頑張るK崎さんに、待っていた試練とはいかなるものか。そんな今回の体験談です。
変わらない給与
K崎さんの立場は契約社員。その上で、他社に派遣されている……という扱いです。そのためか、何年勤務しようが現職での昇給はなし。額自体は普通なんですけど、「生涯お値段据え置きで」という、未来の感じられない待遇でした。
「2年勤務したら正社員」という約束があったので、本来であれば、いずれ待遇面の問題は解消されるはずでした。でも、「プログラマとして」という約束ともども、まとめてすべてがちゃぶ台返し。体よく外に出されてしまったまま、K崎さんに救いの手は差し伸べられません。
その状態で、延々と毎日毎日決められたいくつかの単純作業を、ルーチンワークとしてこなすのみ……。
あ、そうそう。その派遣先の職場というのも、微妙にストレスのたまる職場だったのです。
K崎さんが従事していたのは、早番遅番に分かれて、サーバー監視をする仕事でした。この現場には、K崎さんの他にもう1人派遣社員の方がいました。名を仮にAさん。現場の正社員さんよりも豊富な知識を有している分野が一部あるため、周囲も彼に対してはあまりきついことが言えません。
一方K崎さんに対してどうかといえば……。
かくしてK崎さんの働く現場では、Aさんがミスをしても叱られることはなく、K崎さんがミスをした時だけ叱られるという、「なんだか納得いかないなぁ」という風土が形作られていたのでした。
裁判沙汰で板挟み
約束が履行されないことに加えて、微妙にストレスフルな職場状況。その結果、K崎さんは胃潰瘍になってしまいます。キリキリ痛いんだこれがまた。
そしてK崎さんは、転職を決意しました。プログラマになれないし、昇給もないしでは、確かに現職にこだわる理由がありませんもの。ただ、派遣の契約が残っているため、まずは「今期で辞める」と自社へ伝えるにとどめ、実際の離職時期は1年以上先の、契約期間満了時としたのです。
ところが。
派遣元の自社ときたら、いつになっても、後任をアサインしてくれる気配がありません。いやいや、それどころかいつになっても、K崎さんが辞めることを派遣先に伝える気配すらありません。
本当に大丈夫なのか?
大丈夫ではなかったのです。結局、K崎さんが辞める寸前まで情報がオープンにならなかったことで、業務に支障は出るわ、そのため派遣先と派遣元とが訴訟沙汰になりかけるわの大騒ぎ。否応なく渦中に置かれたK崎さんは、板挟みになった挙げ句あれやこれやと責め立てられる始末。
……実にまったく、やれやれです。
とはいえ、すったもんだの末、なんとか無事に退職することができたK崎さん。彼はその後、ハローワークにて転職活動を開始して、2カ月後に無事再就職を果たします。
ただ、それから1年が経ち……。
「転職に関しては、やや不満を覚えてます」とK崎さん。プログラマ志望で入社したはずが、なぜか配属先はコールセンター。毎日ジャンジャカかかってくる電話を受けては、某データベースのサポートに追われる日々なんだとか。
K崎さんの、プログラマへ至るまでの道のりは、まだまだ険しいと言えそうです。



体験談を読んで、少し言い方は悪いんですけど、「まだ、いわゆる“社会人としての洗礼”を、ちゃんと受けさせてはもらえてないのかな~」という印象を持ちました。自分の外側に原因を求める節が、ないわけではないんじゃないかと、ほんのちょこっとだけ思っちゃったのです。
一方で、その洗礼こそK崎さんが望んでるものでもあるんじゃないかなぁ……とも。
キチンと彼に社会人としての洗礼を与えてくれて、厳しくも責任ある職場で、プログラマとしての修行を積ませてくれる。そんな会社と、いつかK崎さんがめぐりあえますように。そう願ってやみません。
■著者プロフィール
きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/
■著書紹介
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