ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ七十一一部上場企業の社内SE。年功序列制度の中で、上がらぬ給与と、押しつけられる仕事に労務不能となりにけり

年功序列制度にあぐらをかいて、若手にばかり難儀な仕事を押しつける。うーん、ひと頃は良く聞いたような気のする話です。
H川さんも、そうした環境で日々嘆いてた1人。心身共に疲れ果てた彼には、やがて労務不能証明書がおりることに……と、そんな今回の体験談です。

給与は経費で消えていく

1年間を振り返ってみると、自宅以外に泊まった回数の方が多い。退職前のH川さんは、そんな状態にありました。
終電後まで働くことが常態でありながら、「経費削減のため」とタクシー代やカプセルホテル代などは認められない。そんな会社であったため、彼が自宅に帰ろうと思えば、自腹でタクシーを呼ぶしかなかったのです。
気がつけば、宿泊費用やタクシー代で、月の手取りは、半分が消し飛んでいました。
「退職者の仕事はなぜか僕が引き継ぐことにされるし、あずかり知らない既存システムのトラブルまで、なんとかしろとか言われるしで……」
ほかにも「ユーザーからの要望書1枚で、内容の精査も検討もなく、『来たから作っといて』といきなり渡される」なんて仕事もあったりして、彼の作業は山積みになっていくばかり。明らかなオーバーワーク状態でした。
増員をお願いしても、誰も聞く耳を持ってはくれません。なにもかもが「最年少だから」と弱い立場のH川さんに押しつけられて、そしてなにもかもの責任が、H川さんにのし掛かっていたのです。
やがて彼は、連続3時間以上の睡眠が取れない身体になりました。浅い睡眠を繰り返すばかりで、疲れはまるで取れません。
「そのうち、出社することに抵抗を覚えるようになって、いよいよ出社できなくなって、それで精神科に駆け込みました」
診断は「中度のうつ病」。これにより労務不能証明書が発行されたので、それを盾に、H川さんは会社を辞めたのでした。

半年の療養と1通のメール

退社後、H川さんは実家に戻りました。幸い両親が理解を示してくれたので、しばらくは療養に専念することにして、のんびりと毎日を過ごしていたそうです。
「半年経ったところで、医師からようやく就労可能証明書が発行され、働けるようになりました」
ちょうどその頃、H川さんのもとに、ある会社から連絡が入りました。
H川さんには、元の職場で何かと面倒を見てくれていた先輩がいました。その方の親御さんは、とある会社の社長をしていて、先輩と一緒に何度か飲みに連れて行ってもらったこともあります。「辞めてウチに来いよ」と、何度か声をかけていただいた仲でもありました。
連絡は、その会社からでした。タイミングばっちりで正に渡りに船。H川さんからは何の条件を出すこともなく、ほぼ無条件で採用してもらったと言います。
「無茶な仕事でもどうにか解決しようと努力していたところ。あと、知らない分野では、頭を下げてでも話を聞いて理解しようとする姿勢。それらを当時から認めてくれていたみたいです」
そして2年後の今。その会社で契約社員として働くH川さんは、いろんな現場をプログラマーとして飛び回る日々を送っています。
「時間給扱いなので、働いただけ給与がもらえるようになりました。残業も減りました。しかも、社外に出て色んな現場を見てやり方を学べる。効率的な手法や、慎重さを重視した手法など、さまざまなスタイルを見ることが勉強になります」
仕事のボリュームが減ったことに、ちょっと物足りなさは感じつつも、自分の時間を好きなことに費やせる生活に、満足感を覚えるH川さんなのでありました。

オチの一コマ
本日の一句

例えどんな職場であろうとも、必ずそこにはなんらかの縁が眠っているものなのかもしれません。
ただ、縁があったとしても、後ろ向きな生活をしていたら、多分その存在には気づけないんでしょうね。だって後ろ向いちゃってんだもん、お互い視界に入るわけがない。
そう考えると、縁って「たまたま落っこちてる」類のもんじゃなくて、H川さんのように「努力する姿勢」が作り上げるものなのかも。そんなことを思う体験談でありました。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

著書紹介

キタミ式イラストIT塾「ITパスポート試験」 平成22年度キタミ式イラストIT塾
「ITパスポート試験」 平成22年度

出版社:技術評論社
定価:¥2,079(税込)
http://www.amazon.co.jp/dp/4774142026

★このコーナーが本になりました!

SE・エンジニアの本当にあった怖い転職話SE・エンジニアの
本当にあった怖い転職話

出版社: 毎日コミュニケーションズ
定価:1,470円(税込)

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

勤務地を選ぶ

職種を選ぶ