

正社員の年収、理想と現実のギャップは150万円!? 正社員の賃金不満と副業など年収アップの意識調査
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近年、副業を容認する企業の増加や隙間バイトアプリ、フリマアプリの浸透など、正社員の副業ハードルは下がっています。また、物価高や実質賃金の低下など、副業による収入補填を求める動きが出てきても不自然ではない状況に。そんななか、正社員の年収実態と副業実施者の副業収入の実態はどのようになっているのでしょうか。マイナビ転職では、20~59歳の会社員に調査を行いました。
※調査対象は、20~59歳の会社員(正社員)。
WEB調査で2023年12月16日(土)~12月18日(月)までに行ったアンケート調査結果を基にしています。
まずはじめに副業経験者の役職傾向について。「会社勤務(一般社員)」は「副業経験なし」が多数派ですが、「会社勤務(管理職)」「会社経営(経営者・役員)」は「副業経験あり」のほうが多いことが分かりました。管理職や経営層にいる人材はスキルや経験が豊富な優秀人材や、昇給や昇進に意欲的なタイプが多い可能性があります。副業は収入アップやスキル開発につながる面があるので、管理職や経営層に副業経験者が多いことは不自然ではありません。

次に、副業経験者の家族構成別傾向について。 「既婚×子あり」の世帯は、「1年以内にしたことがあり、今後もしたいと思っている」(副業経験と継続意向)が半数超。「未婚」「子なし」よりも10pt以上高い結果になりました。

現在の金銭的不安別では、金銭的不安を感じている人ほど「1年以内にしたことがあり、今後もしたいと思っている」の割合が高くなっています。金銭的不安が副業動機になっているとうかがえます。このような傾向を併せて考えると、子育て世帯は生活費や教育費がかかることから、生活の維持や今後を見据えて、副業をする層が多い可能性が見てとれます。

正社員800名の年収中央値は400万円
現在の給与年収について聞いたところ、全体では「200万円~400万円未満」が39.0%で最も多く、中央値は400万円になっています。
年代別に見ると、20代は330万円に留まり生活にあまり余裕がなさそうな状況が見て取れます。最も高い50代でも460万円。年齢が上がれば年収も上がるとはいえ、思ったよりも低いと感じた人もいるのではないでしょうか。家族構成別では、「既婚×子あり」は「未婚」「子なし」よりも中央値が顕著に高くなっています。結婚や子を持つことは「所得に余裕があってこそ」という一面があると言えそうです。
なお、副業経験有無では給与年収に顕著な差は見られませんでした。現状、「給与年収が極端に低い人だけが副業をしている」というわけではなさそうです。

なお、総年収の理想の金額と比較すると、全体では理想と現実で150万円のギャップが生じていると分かりました。副業経験の有無別で見ると、 「副業1年以内経験あり・計」のギャップは190万円、「副業1年以内経験なし・計」のギャップは150万円となっています。副業経験者は副業未経験者に比べ、求める年収と現在の年収に大きなギャップがあるようです。

正社員の約7割は現在の年収に満足していない。年収600万円を境に、「満足」と「不満」が逆転
現在の給与年収への満足度について聞いてみると、全体では約半数が「満足していない・あまり満足していない」と回答する結果になりました。「満足している・やや満足している」は3割未満にとどまっています。

特徴的なのは副業経験者の傾向。 「副業1年以内経験あり・計」では「満足している・やや満足している」が「副業1年以内経験なし・計」よりも10pt以上高くなっています。副業をしている人は他のセグメントと比べ、現在の給与年収に対する満足度が比較的高いと言えます。

現在の給与年収別で見ると、「600万円未満」までは「満足していない」の回答が高いものの、「600万円」からは「満足している・計」が「満足していない・計」を上回ります。つまり「年収600万円」が満足の一つのラインであると言えます。

続いて、現在の給与年収が自身の働きに見合っているかを聞くと、全体では「いいえ(低すぎる)」が48.6%で最も高くなりました。半数近くの人が現在の給与年収は働きに見合っていないと感じているようです。

なお、ここでも年収が「600万円」を境に「はい(妥当)」の割合が高くなっていました。「年収600万円以上」は満足だけでなく「労働に対して見合っているか」という視点でも一つのラインのようです。

給与年収に働きが見合っていない理由を尋ねると、全体では「会社全体の給与水準」が30.6%で最も高く、「労働時間の長さ」が25.7%、「スキル」が22.6%と続く結果になりました。給与水準が低く、労働時間の長さや求められるスキルの割に給与年収が低いと感じている人が多いようです。

対して、給与年収を上げるために必要なものを聞いてみると、ここでも全体では、「会社全体の給与水準」が31.5%で最も高く、「スキル」が24.9%、「会社の業績」が18.5%と続いています。つまり、年収を上げるためにはスキルや経験など個人のステータスにかかわる部分を伸ばすより、給与水準の高い会社に所属すること(=転職)が必要だと考えられていることが分かります。

給与年収に対する考え方を尋ねると、全体では、「責任や負荷が変わるくらいなら、給与年収は今のままでいい」が36.9%で最も高く、「責任や負荷が増えても、給与年収が上がるほうがうれしい」が31.6%、「特に何も思わない」が25.8%と続く結果になりました。副業解禁と言われてから早6年、副業容認企業が増加する一方で正社員の副業人材は伸び悩んでいると言われる現状の裏には、このようなマインドが関係しているのかもしれません。

年収アップのための勉強・リスキリングは6割近くが未実施。副業経験者では半数以上が実施している。
個人年収アップのための勉強・リスキリング実施状況を聞くと、全体では、「特に何もしていない」が59.9%と半数以上を占める結果となりました。一方、副業経験別で見ると、「副業経験あり」の回答者は、「今の会社で給与を上げるための勉強・リスキリングを行っている」の割合が4割以上と全体と差をつけて高くなっています。企業が社員の副業容認をためらう理由として「副業をする人は本業への熱意がないのでは」という懸念をあげる声もあります。しかし、この結果を見ると副業経験者はむしろ本業のための勉強やリスキリングに積極的な傾向で、副業経験者に対して過度に警戒する必要はないようにも見えます。

年収アップに効果的なのは「1位副業・2位社内で成果を出す・3位転職」。今の勤務先での年収アップには悲観的
次に、5年以内に個人年収を上げるための手段について、「取り組みやすそうなもの」「効果がありそうなもの」「実際に取り組んでいるもの」の3つに分けてそれぞれ聞きました。その結果、すべてにおいて、「副業をすること」が最も割合が高くなりました。

「効果がありそうなもの」の年代別では、多くの年代で全体と同様に「副業をすること」が最多となっていますが、20代においてのみ「社内で成果を出すこと」「転職」が同率1位になっています。20代は社歴が短いため、社内の昇進・昇格に希望を持っている人が多い一方で、入社直後にもかかわらず同期内での賃金格差を感じ、「年収は所属する会社や業界次第」ということを痛感している人が多いのかもしれません。

今の生活に金銭的な不安を感じている人は6割超
続いて、「今」と「将来」の生活に対する金銭的不安を聞いてみると、全体では「今」と「将来」のどちらも「不安を感じる・計」が半数以上を占めており、多くの人が不安を感じていると言える結果になりました。

年代別で見ると、「今」では大きな差は見られませんが、「将来」においては年代が高くなるほど割合も高くなっています。老後の生活について現実的に考える必要を迫られる年代ほど不安が高くなっていると言えそうです。副業経験の有無別で見ると、「副業1年以内経験あり・計」の方が「副業1年以内経験なし・計」よりも、「不安を感じる・計」の割合が高くなっています。不安を感じているからこそ副業をしているとも考えられます。


理想の収入状態だった場合に「できるようになること」を聞くと、全体では、「貯金」が36.9%で最も高く、「老後の備え」が31.5%、「旅行」が31.0%と続く結果になりました。趣味や遊興ではなく、将来のための蓄えとする人が多い傾向に、将来の生活に対する危機感の高さがうかがえます。
家族構成別で見ると、「子供を持つ」において、「子なし」の方が「子あり」よりも5pt以上高くなっています。すでに子供がいる家庭では「今の家族構成がベスト」と考えている人も少なくないと思いますが、子なし家庭では、金銭的な理由で子供を持てずにいる人も一定数いるのかもしれません。

副業年収の理想と現実。1万円以下が過半数
このように年収不満、生活不安を抱いている労働者の収入補填手段の一つとなるのが副業です。1年以内に副業を実施した人(以下、副業経験者)に、副業を始めたきっかけを聞きました。最も高かったのは「お小遣い/趣味に使える収入を増やしたいと思った」で31.8%、「将来への備え・貯金を増やしたいと思った」が24.0%、「将来の収入への不安を感じた」が20.5%と続いています。
TOP3にはすべて収入(生活)に関する選択肢が入る結果になり、副業を容認する企業側の「副業を通してスキルアップや自己研鑽をしてほしい」という意図とは大きなズレがあるようです。

では、目的である副業による収入補填は果たせているのか。副業年収の実態を見ると、11万円以上得ている人は3割弱で、収入補填と言えるだけの額を得ることには高いハードルが存在していると言えそうです。
また、副業収入額の実際の金額と理想の金額をみると、実際の金額は平均年収67.8万円・平均月収5.7万円。一方で、理想の収入額は平均年収125.9万円・平均月収10.5万円となっており、副業収入の理想額とは4.8万円のギャップが存在しています。

では、実際どのような副業で稼いでいるのか。1年以内に実施した副業の内容として、全体では「接客・販売・サービス職(店舗スタッフ、調理、受付など)」が12.3%で最も高く、「ネットオークション・フリマアプリ出品」が9.3%、「クラウドソーシング(データ入力/翻訳/資料作成など)」が5.3%と続いています。
副業を選んだ理由別で見ると、“手軽に始められそうだから”を選んだ副業は、「ネットオークション・フリマアプリ出品」「接客・販売・サービス職(店舗スタッフ、調理、受付など)」が上位の結果になりました。
ネットオークションは具体的には転売・せどりなどの回答が見られました。店舗スタッフなどは、現在は隙間バイトアプリ・サービスなどの普及により、履歴書や面接などの就労にあたって発生する手続きナシで手軽に始められ、報酬が日払いになるところも少なくないそう。趣味や旅行など大きな出費がある時だけ、必要な分だけサクッと稼ぐというケースもあるようです。

続いて、本業の収入がいくら増えたら副業をやめるか聞いたところ、全体の約3割が「収入が増えてもやめない」と回答する結果になりました。実際に副業をやってみると、やりがいや視野の広がりなど「収入以外」のメリットを感じる、せっかく稼げるならやっておくにこしたことはない、などの理由で副業を継続していく層も一定数いるようです。

副業をして感じたことは、1位「時間に余裕がなくなった」「やりがいを感じている」3位「視野が広がった」
副業をして感じたことを聞いたところ、最多回答は「やりがいを感じている」「生活の時間に余裕がなくなった」で同数。副業の目的として最多だった「思うような収入を得られている」は10位以下に留まり、「がんばっている割には稼げない」「労力に見合わない」という感覚の人も少なくないかもしれません。
副業の最たる懸念は、本業外でも労働に従事することで総労働時間が増大し、いわゆる「過労死ライン」など健康に影響するような働き方をしてしまうこと。また、副業での労働実態は勤務先では把握が難しくなるため、本人の自己管理に任せるしかありません。
副業をする働き手は自ら意識して労働時間を管理すること、企業としては副業など社外収入で補填しなくても不安なく生活できるだけの賃金を支払っていくことが、大前提として求められるでしょう。

ちなみに、副業満足度について尋ねると、全体では、「満足している・計」が47.5%、「満足していない・計」が21.0%で満足している人の方が多い結果となりました。「思うような収入が得られている」人は8%台にもかかわらず、半数近くの人が満足しているということは、上記であがった「やりがい」「視野が広がった」など、成長実感や手ごたえなど精神的充足が多くあるということなのかもしれません。

副業を実施していることを半数以上が勤務先に伝えていない。20-30代の若年層ほど副業に対してややオープンな傾向がみられる。
最後に、副業していることを会社に伝えているか聞いたところ、全体では、「はい」が39.5%、「いいえ・計」が60.5%と半数以上が会社に伝えていない結果になりました。年代別で見ると、20-30代の若年層の方が40-50代よりも「はい」の割合が10pt以上高くなっています。若年層ほど副業に対してややオープンな傾向にあるようです。

以上、正社員の年収実態と年収アップへの意識、副業の実態を見てきました。正社員の多くが自身の年収に満足できていない現状の一方で、今後少子化の影響もあり多くの業界・企業で人手不足が続くことが予想されています。企業存続に必要な人材を確保するためには「給料」がますます重要になっていくのかもしれません。
マイナビ転職 編集部
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【調査概要】「正社員の賃金不満と副業など年収アップの意識調査」
調査期間/2023年12月16日(土)~12月18日(月)
調査方法/WEB調査を実施
調査対象/20~59歳の会社員(正社員)
有効回答数/800名(副業経験者400名・未経験者400名)
※調査結果は、端数四捨五入の都合により合計が100%にならない場合があります
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【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社マイナビ
転職情報事業本部 ブランド推進課
Email:mt-brand@mynavi.jp
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