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イベントレポート

「人とくるまのテクノロジー展2015」レポート~低炭素会社を拓くキーテクノロジー~

さる2015年5月20日~22日の3日間、横浜みなとみらいの複合コンベンションセンター・パシフィコ横浜にて、公益社団法人自動車技術会の主催による「人とくるまのテクノロジー展」が開催された。今回で24回目を数える同展示会には、国内外から500社を超える出展社がブースを構えることになり、約9万人の技術者や業界関係者らと最新技術・製品が一堂に会すビッグイベントとなった。

マイナビ転職編集部では、完成車メーカーをはじめ部品メーカーや検査技術、研究開発支援といった多彩な技術系企業の最新動向に触れられるこの機会に、日本のクルマづくりが今求めている人材像は何かを探るべく、初日のプレス向けオープン時より取材を敢行。最新の電気自動車やハイブリッド車、それらに関する技術などを筆頭とした環境にやさしいテクノロジー、自動化運転や車体制御といった安心・安全に関する技術など、いずれ劣らぬ出展内容に目を奪われながら会場内を巡ってみた。

今回、編集部が特に着目したのは、同展示会のメインテーマでもあった「多様化するエネルギーとくるま~低炭素社会を拓くキーテクノロジー」という切り口。地球温暖化問題の原因のひとつと考えられる二酸化炭素の削減について、同展示会ではさまざまな取り組みやそれらを支える最新技術が紹介されていた。その多様性にこそ、自動車業界、そして異業種で活躍する技術者をはじめとした人材が、自らの真価を発揮してモノづくりや社会貢献にチャレンジできるチャンスが潜んでいるのでは?という視点・論点だ。

話題の超小型モビリティや最新スポーツカーの試乗体験などの目玉トピックは、他媒体のレポートにお任せするとして、我々マイナビ転職編集部では、いくつかの展示ブースやコーナーについて、レポートしてみようと思う。読者自身のスキルや経験値が自動車業界で発揮できる、その気付きや可能性のきっかけになれば幸いだ。

最新技術が新たな可能性を生み出す完成車メーカーブース

まずは、クルマづくり=モノづくりの最高峰が結集された国内完成車メーカーの展示から目を向けてみる。
「多様化するエネルギー」というテーマから眺めてみても、やはり一番目を引いたのは、トヨタ自動車。燃料電池自動車(FCV)普及に向け全特許5680 件を無償開放する施策なども注目を浴びる中、水素で走るFCV「ミライ」のカットモデルをブース中央に配置。パワートレインなどのレイアウトが一目瞭然で、多 くの来場者の注目を集めていた。特別企画展示コーナーにも1台、さらに試乗車も用意するなど、力の入れようが伝わってくる。

あいにく人気が集中しており、試乗の夢は叶わなかったが、「ミライ」向けに開発した新燃料電池システム「トヨタフューエルセルシステム(TFCS)」を搭載した、トヨタ自動車と日野自動車の共同開発によるFCHVバスに体験乗車してきた。

ディーゼルエンジンに比べ非常に静かな走行音だったことが印象的で、何の違和感もなく乗車していられたのは、羽田やセントレア、関空など、各空港の路線バスとして運航実績を重ねてきた賜物だろう。現在も豊田市内の路線バス「とよたおいでんバス豊田東環状線」で営業運行しているそうだ。このFCバスの燃料電池セルスタック電圧を制御するFC昇圧コンバータに、SiCダイオードが採用されている。やはり実証実験を重ね、燃費効率のさらなる向上を図るためだろう。

同時に、2014~2015年度の2年間で14機種を展開するアグレッシブな戦略に基づいて開発される新しいエンジンラインアップから、注目の1.5リッターアトキンソン(2NR-FKE)、1.2リッターターボ(8NR-FTS)、2.0リッターターボ(8AR-FTS)の3機種の高熱効率・低燃費エンジンも展示。世界的にダウンサイジングが進む従来型パワーユニットでも存在感を見せつけていた。

次は本田技研工業。試乗車も用意された新型「ステップワゴン」を中心に、搭載される1.5リッター “VTECターボ”エンジンの展示がメインだった。ミリ波レーダーと単眼カメラで得た情報から衝突軽減ブレーキなどを働かせる先進安全運転支援システム「Honda SENSING」、小型スクーター用新エンジンラインアップなどの展示もあり、水冷の50ccエンジンなどは技術のホンダらしい展示と感じた。

一方、マツダのブースでは、新型「ロードスター」を展示。1.5リッター直噴ガソリンエンジン、6速MT、足まわりなどの展示と合わせ、実車に乗り込みルーフ開閉なども試せるとあってか、用意された試乗車に乗れなかった層も含め、長蛇の列が形成されるほどの人気ぶりが印象的だった。

そして、日産自動車では、「リーフ」をベースにした自動運転車両と独自の自動運転技術が公開されていた。同時に、昨年同様、超小型モビリティ「日産ニューモビリティコンセプト」の展示もあった。社会インフラとしての導入や最新技術的にもホットな領域だけに、この部分を深堀してもよかったのだが、今回、マイナビ転職編集部では「試乗体験ができる」こともあり、商用EVの「e-NV200」に注目してみた。

「商用車にこそゼロエミッション」の深謀遠慮

「e-NV200」は「リーフ」に続き、日産自動車がグローバル販売する2車種目の量産型EVだ。多目的商用バン「NV200バネット」をベースに、「リーフ」搭載のe-パワートレインを組み合わせ、昨秋より全国販売されている。商用車カテゴリーでは初となるEVモデルだ。

早速、マイナビ転職編集部スタッフが試乗してみたところ、一番驚かされたのがその乗り味の部分。出力の出方がリニアでギア比などのセッティングとあいまってか、きびきび走ってくれる。床下に電池をレイアウトして低重心化が図られているため、期せずしてコーナリングも面白い…と、EVらしからぬレビューになってしまうほどのドライビング・フィール。5人乗り/7人乗りのワゴンタイプ設定もあることから、乗用ユースとしての可能性も大いに感じさせてくれた。

商用車としての「e-NV200」は、フル充電で190km走行できる(JC08モード)。長距離走行の用途を必要としない企業や自治体なら、十二分に耐えうる走行距離だろう。そして電気料金が割安になる夜間に充電しておけば、ランニングコストで勝負しても既存のガソリンエンジン車を上回る低コストでの運用が可能なはずだ。また、最大1500Wの電力を供給するパワープラグによって屋外での電源供給が可能という点も見逃せない。走る蓄電池としてさまざまなビジネスシーンや万一の災害時に役立てることもできるのだ。この現状スペック、そして社会インフラの整備状況からも、「都心エリアのビジネス用途でゼロエミッション車をほぼ問題なく使える」ことが実感できた。

当然、先行開発領域において、今以上に大容量かつコンパクトなリチウムイオンバッテリー実現に向けた技術進化が進められており、2020年をメドにした充電インフラの着実な整備などもあるはずだ。乗用車ではなく、仕事の道具として不可欠な商用車の領域から、ゼロエミッション化を推し進めていくことができれば、CO2削減などの環境問題にも大きく貢献できるのは明らか。商用車カテゴリーでのブレークスルーは、世の中の在り様をドラスティックに変革できるかもしれない。そんな期待感を抱かせてくれる仕上がりの「e-NV200」を体験できただけでも、このイベントに足を運んだ価値があるだろう。

これからの社会インフラを彩る商用車専業メーカーの動向にも注目!

同じ商用車カテゴリーでも、今度は専業メーカーに目を向けてみよう。マイナビ転職編集部が着目したのは、日野自動車のブースだ。今回は、1.3リッタークラスからのダウンサイジングのニーズに応え、低回転高トルクな8866cc大型車用ディーゼルターボエンジン「A09C」、新興国向け車両にも搭載する7684cc中型車用ディーゼルエンジン「J08E」の2機種の商用車用エンジンがブースに並べられていた。

このエンジンを眺めていると、説明役のスタッフから「商用車のトラックやバスに求められるのは、シンプルで、安価で、長く使え、信頼性も高いクルマであること。そんな厳しいニーズに応えるスペシャリストとして、日野独自のモノづくりで世界と勝負し、それぞれの国や地域の社会インフラである物流や公共交通を担う完成車メーカーとしての責任を果たしていきたい」とのコメントをいただいた。

国内のディーゼルトラックでいち早く平成27年度燃費基準+5%を達成するなど、高い次元の燃費性能と環境性能との両立を誇る商用車専業メーカーのプライドが詰まった展示内容と発言に、思わずマイナビ転職編集部も首肯させられてしまった。

やはり、社会インフラとして多数のトラックやバスが使われている今、それらの燃費向上や環境負荷低減が喫緊の課題である。たとえ、コンマ数%でも改善することができたら、その波及効果は大きなインパクトを与えるものになる。その事実を一番よく理解し、課題解決に立ち向かっている商業車メーカーでの研究開発は、技術者ならずとも挑み甲斐ある仕事&環境と言える。

実際、日野自動車でも、今年の2月から新たに「材料開発部」を立ち上げ、「REACH(欧州の化学物質規制)」対応なども視野に新規材料の研究開発を進めている。「性能は環境のために」を掲げる日野自動車ならではの動向に、化学含め幅広い技術領域の耳目が集まっているようだ。

クルマづくりに欠かせない部品サプライヤー

では、ここで完成車メーカーから部品メーカーに目を転じてみよう。そもそも、この展示会は自動車に関連するエンジニアに向けて開催されていることから、回を重ねるごとに部品サプライヤーをはじめ、検査技術、研究開発支援、素材系…など多彩な企業の出展が増加し、数々の最新技術が披露される場として機能している。自動車業界ではスタンダードであるものの、異業種の方にとっては、普段、あまり目にすることのない企業の技術に触れられる格好の機会だけに、より幅広い技術領域で多くの方々と接点がありそうな企業をピックアップする。

そんな観点から会場内を見渡し、今回は日立オートモティブシステムズのブースに足を運んでみた。1930年に日立製作所が自動車用電装品の国産化に進出したのを皮切りに、そこから1世紀近く国内外の完成車メーカーに独創の自動車関連技術を提案している、実力派独立系グローバルサプライヤーだ。そんな同社のブースでは、次世代モビリティを支える日立オートモティブシステムズグループの「環境」「安全」「情報」分野の先進テクノロジーが多彩に紹介されていた。

例えば、ステレオカメラや自動駐車システム、ADASコントロールユニットなどの車両統合制御システムなどは、シナジーソリューションとして先進運転支援システムの要となるもの。今回のブース出展もグループ企業のクラリオンとの共同であることからも、ワンストップで担える総合力が覗える内容だった。
加えて、高効率ICEシステムや将来のインテリジェントカーと親和性の高いモーター・インバーター・バッテリーなどの電動パワートレインシステムも展示紹介。「もしかしたら日立のリソースだけでも完成車がつくれるのでは?」と思わせるほどの深みある技術開発力は、ここでもしっかりアピールされていた。

さまざまな技術領域に可能性を広げる自動車業界

その一方で、機械や電気・電子だけでなく、化学領域をはじめとしたさまざまな技術者の活躍の場としても未来のクルマづくりのフィールドは開かれていることにも、ぜひ、触れておきたい。その好例として訪れてみたのが、住友化学のブースだ。

自動車の技術革新への寄与、それを通じた持続可能な社会の発展への貢献をめざす新技術・新製品が、「かろやか」「やさしい」「うきうき」の3カテゴリーでプレゼンテーションされており、パーティキュレート・フィルタをはじめ、有機薄膜太陽電池(OPV)、防カビエラストマー材料、接着性樹脂、スーパーエンジニアリングプラスチック、高濃度ガラス繊維強化ポリプロピレン、高分子有機EL照明、高透過ポリカーボネート……などなど、多彩な化学素材系部品の展示が技術紹介とともになされていた。

中でも、パーティキュレート・フィルタは、ディーゼルエンジンの排出ガスから煤などの粒子を捕まえる排気フィルタとしてすでにおなじみの製品だが、今回は細かい六角形の穴を均一化する素材加工技術で、より吸着効率の高いフィルタに仕立てて展示。さらに、欧州EURO6でより厳格化されるガソリン直噴エンジン向けのパーティキュレート・フィルタも、先行開発フェーズの試作品を持ち込み、近い将来の完成車への搭載を予感させる仕上がり具合で展示されていた。

いずれもクルマづくりにはなくてはならない素材&要素技術であり、同社が掲げるテーマのように環境問題からの貢献度が高い領域でモノづくりに打ち込める環境は、多くの技術者にとって魅力的に映るだろう。

以上、ほんの一部ではあるが、マイナビ転職編集部セレクトによる展示ブースや企業の紹介だ。漠然とでもクルマづくりへの興味・関心から、転職先候補探しの一環として眺めてくださった方には、改めてお伝えしておきたいことがある。日本の基幹産業のひとつ、自動車業界は、今、本当に広範な領域の技術者を求めており、もしかしたらみなさん自身にとって大きなチャンスになるかも、ということを。
今回、訪れるブースの先々で、「マイナビ転職ですが、お話を伺いたいと思いまして…」とお声掛けすると、みなさん気持ちよくご対応くださり、いろんなお話をしてくださるのだが、ほとんどのブースで「いい技術者を採用するにはどうしたらいい?」と異口同音に逆取材されてしまったのだ。
各社それぞれの事情が異なるため、一口に“いい技術者”と定義してくくれないのだが、少なくとも同業(自動車業界)経験者だけでなく、機械、電気・電子、化学、素形材、IT……と、あらゆる技術領域で得意分野を持つ技術者を、ノドから手が出る勢いで求めている様子が、ひしひしと伝わってきた。
どんな技術ノウハウでも、それを糧に打ち込む技術者にとってモノづくりに挑戦できるフィールドがあるというくらい、クルマづくりの裾野が広がっていることを実感させてくれるイベントだったことは、マイナビ転職編集部が保証する。
つまり、それだけ自動車業界とあなた自身とに、自分でも気付かなかった/意識してこなかった接点がある、ということにほかならない。自らの得意分野を軸に、可能性との出会いを探してみる絶好のタイミングかもしれない。

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