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第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

Vol.155映画監督 李相日
あこがれの世界に、まず飛び込んでみた

Heroes File Vol.155
掲載日:2016/9/1

李相日さんの写真1

映画の撮影現場では何度もテイクを重ね、役者を追い込んで本気を引き出そうとする。そんな厳しい演出で知られる映画監督の李相日さん。「なぜそこまでするのか?」と尋ねると、「では逆に知りたい、なぜそこまでやらないのか?」と。そんな李さんに映画に懸ける思いを聞くと、李監督作品がなぜこれほどまでに多くの人の心を揺さぶるのか、その理由が見えてきた。

Profile

り・さんいる 1974年新潟県生まれ。日本映画学校での卒業制作作品が「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリなどを受賞。2004年にメジャー進出。代表作は『フラガール』『悪人』『許されざる者』など。最新作『怒り』が9月17日(土)から全国東宝系にて公開。

2010年のヒット映画『悪人』から6年。李監督が作家・吉田修一さんの小説の映画化に再び挑んだ。16年9月17日(土)から公開となる『怒り』である。ある凶悪な殺人事件をきっかけに、まったく無関係な3組の人々が目の前の大事な人に疑念を持ってしまう。人を信じることの難しさと尊さに思いが至る大作だ。

「吉田さんの小説には人間の生々しさを感じる。あまり人には見せたくない、自分の嫌な面をこれでもかっていうくらい、つまびらかにされる。にもかかわらず、最終的にはそんな負の感情も含めて人間は愛(いと)おしき存在なのだとギリギリのところで希望を見せてくれる。そこに強い共鳴が生まれ、映画に向かうための一番の原動力になります」

撮影中、役者に何度もやり直しを求め、追い詰める。要求が高く厳しいことでも有名だ。

「特に『怒り』は、排他的な空気感や人とのかかわり方など現代のさまざまな社会問題を内包している作品です。誰もが何か言葉にならない領域で感じていることを、見る人たちに皮膚感覚で実感してもらえるような映画にしたかった。そこに到達するには、俳優たちにも演技の域を超え、生身の人間性までさらけ出す覚悟で演じてもらう必要がありました」

李相日さんの写真2

そう語る李さんの、映画との出合いは中学生時代だった。ハリウッド映画全盛期で、よく見ていたという。そして、映画の仕事に漠然とあこがれ始めたのが大学時代。「とは言え、どうすればその道へ進めるのか見当もつかない。まずは飛び込んでみるかと撮影現場でアルバイトを始めました。弁当運びや掃除などの雑用係でしたが、自分も映画制作の歯車になれている感覚がして、とても心地良かったですね」

バイトをきっかけに映画の世界へ入りたいという思いは強くなり、大学卒業後に映画学校へ。ただそれでも、映画監督なんていう職種には特別な感性を持った人がなるもので、平凡な自分には到底無理だろうと思っていた。

そんな李さんが、監督という職業に一気に近づくきっかけとなったのが卒業制作だった。「せっかく3年通ったんだから何か成果を出さなければ意味がない。先のことは分からないけれど、監督として作品を残そうと思い、いろんな映画をビデオで分析して、脚本も買い集めて勉強し直し、制作に挑みました」

その時の作品『青 〜chong〜』が、自主制作映画の登竜門と言われる映画祭でグランプリ含む4部門を独占受賞。図らずも何かに押し出されるように、映画監督としての道を歩むことになった。

常に身の丈より大きめの服を着る

李相日さんの写真3

李さんが25歳の時、映画学校の卒業制作として撮った『青 〜chong〜』は高く評価され、一般映画館でも上映された。自主制作作品としては異例のことだった。

「このころから自分は映画を撮って生きていくんだと決めていた気がします。実際、ここで何かを生み出さなければ自分は何者でもなくなってしまうと不安に感じ、四六時中、映画のことばかり考えていた。その一方、僕は26歳で結婚したのですが、生活に関しては恐ろしいほど無頓着で、妻にすべて任せっきりでしたね」

そんな李さんに追い風が吹いたのは29歳の時。映画『69 sixty nine』の監督をやらないかというメジャー映画のオファーが舞い込んできたのだ。「村上龍さんの原作で、宮藤官九郎さんの脚本も事前に渡されていたのですが、あえて読まず、僕を抜てきしてくれたプロデューサーに会いに行きました。そして直接その人柄に触れたことで、お引き受けしました」

ここで「やる」と決めたことが李さんにとって大きな転機となったという。この出会いとそれをチャンスにする決断がなければ、後に大ヒットした『フラガール』も、自身が監督を務めることはなかっただろうと思うからだ。

映画監督になって17年。最新作『怒り』はもちろん、ここ数年は骨太でエネルギッシュな作品を相次いで世に送り出し、いずれもヒットさせている。そんな李さんが大事にしているのは「人より時間が掛かってもいいから、簡単に分かったつもりにならない」ということ。効率優先では「普通」の範囲にとどまってしまう。それよりも、ここでのベストは何かを探り続け、その先にある「これだ」が見つかるまで粘った方が圧倒的に映画は面白くなると信じている。その手間を惜しまないということだ。

「とは言え、どこまでやっても正解はなく、到達点がないのが映画。前回はこの手でうまくいったからといって、次もまた同じ手が使えるわけではない。作品ごとに、積み重ねてきた経験はすべて初期化され、まっさらなところからのスタートとなる。そこが面白さであり、同時につらさでもあるわけですが(笑)」

さらに、監督として自分に課しているのは「常に大きな服を着る」、つまり身の丈に合わないことにあえて挑戦し続けることだと語る。「手の内にあるもので何とかしようとするだけでは周りもついてこなくなるだろうし、人に高度なことを要求することもできなくなってしまうので」。李さんは誰よりも自分に厳しい。全身全霊で作品と対峙(たいじ)する。だから李さんの映画は人々の心をわしづかみにする。

ヒーローへの3つの質問

李相日さんの写真4

現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

なることができたかどうか分かりませんが、家具を作る人になりたいと思ったことがあります。特に椅子にはちょっとうるさいので、椅子職人がいいですね。

人生に影響を与えた本は何ですか?

多感な時期に読んで今でも印象深く残っているのは、宮本輝さんの『青が散る』です。

あなたの「勝負●●」は何ですか?

撮影中は夜中でも肉を食います。意外に監督業は体力勝負の仕事なんです。

Infomation

2016年9月17日(土)全国東宝系ロードショー

映画『怒り』
人間の善悪に深く切り込んだ映画『悪人』(2010年)が空前の大ヒットを記録し、国内だけでなく海外からも高く評価された。あの感動から6年――。李相日監督が再び作家・吉田修一さんとタッグを組み、制作に挑んだのが『怒り』。「信じるとは何か?」という根源的な問い掛けを、一つの殺人事件をきっかけに投げ掛けた感動のヒューマンミステリーだ。「僕の実感で向き合ったら、この温度の映画になりました。いつのころからか、誰もが人に正しさを求めるようになってしまった。そもそも人は間違う生き物。信頼している大事な人をも安易に疑ってしまうもろさも秘めている。そんな人間の不完全さをもっと愛してもいいんじゃないって、そんなふうに感じてもらえたら」と李さん。
監督・脚本:李相日
原作:吉田修一『怒り』
出演:渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮﨑あおい、妻夫木聡、ほか
音楽:坂本龍一

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