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vol.157 俳優 山中崇 後で悔やみそうなら、とにかく挑戦してみる


NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(2013年)の文士・室井さん、と聞けばピンとくる人も多いはず。
数々のドラマや映画、CMなどで活躍する山中崇さん。
主役でなくても、なぜか不思議にその存在が心に焼きつく俳優である。
取材当日、山中さんの手には芸術家・岡本太郎さんの著書『自分の中に毒を持て』があった。
どうやら転機のカギはこの本にあるようだ。

ドラマやCMでよく見かける、おなじみの顔だ。数年前のNHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」で、文士・室井役を演じて一躍注目を浴びた俳優の山中崇さん。演技に目覚めたのは、高校の文化祭の時だった。クラスで戦争をテーマにした舞台を作り上げたのがきっかけ。でも当時、そのまま自分の進路として俳優業を選んだわけではなかった。

「高校生の頃は、地球環境を良くするような仕事に就きたくて、塾の先生に相談したら官僚になるしかないと言われ挫折しました。大学ではコミュニケーション学部に入り、ゼミで広告に興味を持ったので、広告デザイナーになりたいと教授に話したら、そういう仕事の人は大体、美大卒だよと諭され、二つ目の挫折(笑)。今ならどちらの助言もそれだけじゃないと分かりますが、当時は世間知らずだったので、うのみにして二つともすぐに諦めました」

大学では演劇サークルに入った。外の世界も知りたいと、カルチャーセンターや他大学で開催される演劇のワークショップにも参加。「そこで知り合った役者の卵や演出家たちとの縁で、小劇場の舞台にちょくちょく出させてもらうようになっていきました」

気がつけば、年6本の舞台に出演するほどになっていた。そんな山中さんに、大学のサークルの先輩が「お前、そんなに出てどうすんの? やりゃあいいってもんじゃないよ」と苦言を呈した。「でも僕はその時、やりゃあいいもんなんじゃないのって反発したんです。舞台に出るという経験を重ねることが、その時の自分にとても必要なことに思えたから」

否定的な意見を言われると何でも諦めていた自分が、なぜ演劇はやめないのか? こんなに夢中になるのか? 自問自答したそうだ。

「演じることで人について研究できる、そこが好きなんだと思いました。ある状況下で人の感情はどうなるのか。実在の人物なら歴史や当時の社会情勢を調べ、どうしてその人がそういう行動を取ったのかをあれこれ考えられる。それが単純に楽しいからなんだと」

友人に倣って就職活動もしたが、合同企業説明会に2回参加して終止符を打った。

「芸術家の岡本太郎さんの著書『自分の中に毒を持て』に、『やらない後悔よりもやってする後悔の方がいい』という意味の言葉があって、そのお陰で気持ちが固まりました。今、頑張って就活してどこかの会社に入っても、いつかきっと芝居の道に進まなかったことを後悔するはず。ならばとにかくやりたいことをやってみよう、そう決心したのです」


PROFILE

やまなか・たかし 1978年東京都生まれ。代表作に映画『松ヶ根乱射事件』、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」など。2016年11月27日(日)から東京・世田谷パブリックシアターで上演されるシス・カンパニーの演劇公演「エノケソ一代記」(作・演出:三谷幸喜)に出演予定。


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