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Vol.218 落語家 柳亭小痴楽
長所をはじき出すため毎日自分の仕事を分析

掲載日:2020/7/3

柳亭小痴楽さんの写真1

2020年の新型コロナ禍、外出自粛期間中ずっと自宅にこもり、映画を見たり、本を読んだりしていたという落語家の柳亭小痴楽さん。「すごく落語がやりたかったけれど、稽古はまったくしなかった」と語る。
同年6月1日、約2カ月ぶりに再開した浅草演芸ホールでの寄席では、直前まで所々思い出せなかったネタを演じきることができた。「高座に上がるとスイッチが入るみたい。お客さんがいると不思議にポンポンと話が進むんです」。
いい加減なのか、それとも天才肌なのか。小痴楽さんの正体に迫った。

Profile

りゅうてい・こちらく/1988年東京都生まれ。2005年10月初高座。師匠は柳亭楽輔。二ツ目11人のユニット「成金」で二ツ目ブームを起こす。19年9月真打ち昇進。初エッセー集『まくらばな』発売中。20年7月21日(火)~30日(木)、新宿末広亭「夜の部」にて初トリを務める予定。

落語家としては珍しいクルクルッとしたパーマヘアとメガネが印象的。痛快かつテンポの良い語り口で人気上昇中の小痴楽さん。2020年6月に入り、新型コロナウイルスの影響で休業中だった浅草演芸ホールが再開し、小痴楽さんも約2カ月半ぶりに高座に上がった。「いやあ楽しかった。目の前にお客さんがいるだけでうれしい。安心感があります」

故・五代目・柳亭痴楽の次男に生まれ、16歳で落語界へ入門。「元々お笑いには興味があったのですが、噺家(はなしか)になる気はありませんでした。でも15の時、CDで初めて落語を聞いてこれだ! と思い、おやじに相談したんです。それで桂平治(現・文治)師匠に弟子入りしました」

前座修業をするものの、約2年半で遅刻としくじりがあまりにも多いということでクビを告げられてしまう。「ただ、一度破門されると落語界で生きていけなくなるので、父・痴楽の元へ返すという形にしてくれました」。その1年半後、父の弟弟子の柳亭楽輔師匠の門下に入り、ほどなくして二ツ目に昇進する。

気持ちに大きな変化があったのがこの前座から二ツ目に変わったころだったという。「お金もいただいてプロとしてやるからには、面白い芸を見せなければいけないという意識がより強くなりました」。それゆえ自分はどんな落語をしたいのか、自分の長所と短所は何なのかなどということを真剣に考えることが多くなった。

柳亭小痴楽さんの写真2

というのも当時の小痴楽さんには大きなコンプレックスがあった。「(桂)歌丸師匠や(三遊亭)小遊三師匠たちが父に恩義があるからとすごく可愛がってくれ、僕を自分が出演する落語会へ呼んでくれていたんです。だから収入面では恵まれていた。ただ、同じ二ツ目仲間の桂宮治や瀧川鯉八らは、客席の規模は小さいながらも名指しで仕事を受けていた。僕は師匠のお供で出てるだけだから、仕事の質が全然違う。宮治たちがうらやましかった」

何とか自分も名指しで呼んでもらえるようになりたいと、小痴楽さんはほかの人の高座をできるだけたくさん聴くようになった。と同時に自分の高座の出来栄えを記録し始める。「毎回録音し、帰り道に聴いて、家でその日のお客さんの男女比率や年齢構成、そして僕がアドリブで入れた『くすぐり』に対する反応などを書き出し、どの層に何がウケたかをグラフにしてまとめたんです。半年ほど続けましたね」

徹底的に自分のやっていることを分析することで、自らが得意とするものが見えてきたという小痴楽さん。いつしか寄席で笑いを多く取れるようになり、徐々に小痴楽さんを指名する仕事も増えていった。

与えられている仕事に「ありがたい」と接する

柳亭小痴楽さんの写真3

平成の終盤、落語界に巻き起こった二ツ目ブーム。その立役者となったのが「成金」だ。落語芸術協会所属の二ツ目の落語家と講談師11人で13年に結成されたユニットで、中でも最も勢いのある若手落語家として注目されたのが小痴楽さんだった。

「前座の時に毎日一緒だった神田伯山(前名・神田松之丞)や桂伸衛門(前名・桂伸三)が声を掛けてくれて、僕も参加しました。毎週金曜の夜に新宿で落語会を開き、楽屋では上下の関係なく意見をぶつけ合っていた。お客さんも最初は少なかったのですが、どんどん増えていき、そのうち『成金』の名を冠して地方公演ができるまでになりました」

小痴楽さん自身、「成金」を通じてかなり落語家として成長できたという実感があると語る。「ただ仲が良いというのではなく、互いに切磋琢磨(せっさたくま)しようという会だったのが刺激的でした。それぞれの高座の良いところは盗ませてもらい、マクラ(冒頭の小話)の作り方や笑いの取り方を垣間見ながら、自分らしい落語のやり方を考え、見いだすことができました」

そして19年9月、小痴楽さんは真打ちに昇進する。実はこれを機に父・痴楽の名跡を継いだらどうかという話もあった。しかし小痴楽さんは時期尚早と辞退した。「落語ファンじゃない人にも『ああ柳亭小痴楽なら知ってるよ』と言われるほど、もっと知名度を上げてからでないと。二世だからこそ、なお一層修業を積んで実力をつけてからにしたいんです」

そんな小痴楽さんが目指しているのは「いい加減な落語家」だ。「いわゆる名人と呼ばれる落語家さんは、出演者名を書いた『めくり』に名前が出ただけでどよめきが起きる。僕は『小痴楽』と出たら、『あ、来てたんだ』ぐらいの感覚で迎えてもらえればいい。でも『あいつ今日、何やるんだろうなあ』ってお客さんがニヤニヤしてくれる。そんなふうに肩の力を抜いて楽しんでもらえる落語家になりたいです」

19年11月に出版した自身の初エッセー集『まくらばな』には、亡き父や家族、友だちとの思い出、そしてお世話になった師匠や仲間とのエピソードが面白おかしくつづられている。そこからは、情に厚くて、どんな人とも真っすぐな気持ちで付き合う小痴楽さんの素顔が伝わってくる。

仕事にはいつも「ありがたい」という気持ちで向き合うという。「やらせていただいているという思いと、どうせやるんだったらどんな仕事も楽しもうという心持ちで取り組んでいます」。若いのに昔気質な所もある。硬軟両面を併せ持ち、それが落語の中で程良く生きている。

ヒーローへの3つの質問

柳亭小痴楽さんの写真4

現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

高校時代、「学校を辞めて噺家(はなしか)になる」と先輩に話したら、「ほかにやりたいことはないの? いろいろ考えたり経験したりしてから噺家になったほうがいいんじゃない?」と言われて考えたのが、洋服屋さんや駄菓子屋さん。でもまあ多分、落語家以外の道に進むことはなかったと思います。

人生に影響を与えた本は何ですか?

沢木耕太郎さんの『深夜特急』です。初めて読んだのは10代半ばですが、もう二、三十回は読み返しています。旅好きの老夫婦に「たくさん旅をしてきて分かったことがありますか?」と「私」が尋ねた時、「何度同じ国を訪れても、その国の人間ではないからその国のことは分からないんだということが分かった」みたいなセリフが出てくる所があり、何でも分かった気になってはいけないんだということを学びました。また、トルコ編にすごく好きなシーンがあって、それが読みたいがために何度も読み返しているところもあります。

あなたの「勝負●●」は何ですか?

高座前には必ず、師匠・柳亭楽輔や父親である五代目・柳亭痴楽、先代の四代目・痴楽の手拭いを腹に入れて、手で「心」の字を書きます。そして客席にも「心」と書いてから高座に上がる。高座ではけっこうお客さんに対して失礼なことを言っていますが、心では「来ていただいてありがとうございます」と感謝の気持ちを持っているということです。

Infomation

エッセー集『まくらばな』発売中!

柳亭小痴楽さんが真打ち昇進を機に紡いだ初のエッセー集『まくらばな』(ぴあ/1,540円<税込み>)が2019年11月に出版された。亡き父、五代目・柳亭痴楽さんのかなりユニークな教育方針や、可愛がってもらった故・桂歌丸さんとの思い出、そのほか家族、友人、仲間たちにまつわる抱腹絶倒の仰天エピソードがずらりと並ぶ。しかも、読み終えた後にじわっと心が温まる味わい深い話ばかりだ。「とにかく読み物として楽しんでもらいたいと思い、読んでいて情景が浮かぶように心掛けました」と小痴楽さん。人と比べず自分らしく生きるヒントも詰まっている。今何かに悩んでいる人にも読んでほしい一冊だ。

新宿末広亭の初トリを務める!

20年7月21日(火)から30日(木)まで、新宿末広亭「7月下席」の「夜の部」で初トリを務めることになった小痴楽さん。真打ちになったばかりで、しかもこの若さでトリという大役を務めることは異例中の異例。それだけ落語界の、小痴楽さんへ寄せる期待が大きいということだろう。
新宿末広亭サイト:https://suehirotei.com/guide.html

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