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(株)ほぼ日の株式上場で新たに注目される「ほぼ日手帳」。そのロングセラーの裏側に迫る。小泉絢子さん/笠井詩織さん
「分からない」と悩むその時間が無駄になる イメージ画像

一代目の手帳(奥)と現在の手帳。当初は「日々の言葉」を所々に載せていたが、現在は全ページに掲載している

2017年3月、糸井重里さんが代表取締役を務める(株)ほぼ日が株式の上場を果たし、同社の人気商品「ほぼ日手帳」があらためて注目を集めている。1日1ページたっぷり自由に書き込める手帳は、01年に発売が開始され、今や年間販売数60万冊を超えるヒット商品となった。

この手帳の誕生から8年間、企画開発に携わっていたのが小泉さんだ。開発当初は新卒2年目に入ったころ。「糸井の発案で、既存にはない楽しい手帳を作ろうという試みでした。社として文具を扱うのは初めて。私もまっさらな状態で、でもそれが新しいものを作り出すためにはかえって良かったかもしれません」

手帳は文庫本サイズで、1日1ページの仕様。そんな糸井さんの案を基に、数人いた社員が皆で合宿会議を開き、小泉さんはその発言を一言ももらすまいと必死にメモを取った。「案は豊富に出たんです。でも、その実現や製本など私には未知の分野の課題が山積みとなり、途方に暮れてしまいましたね」

当時の自分にアドバイスするなら、「分からずに悩んでいる、その時間こそ無駄なので、どこから手をつけるべきか周囲に聞け」ということだという。「あの時、自分があまりにも役に立たないので糸井に謝ると、『君が少しずつでも成長する姿が見たいから、とにかく頑張れ』と励ましてくれたんです。それからは、周囲には迷惑をかけましたが、分かったふりをせず、人に助けてもらいながら実行していきました」

一つずつ課題を解決し、出来上がった手帳は自社サイトで限定販売され、約1万2千冊を売り上げて好評を得た。しかし直後に思い掛けないトラブルが発生する。手帳が半年ほど経つとバラバラになってしまうかもしれないと、印刷関係者から指摘されたのだ。

「結局杞憂(きゆう)でしたが、その時は絶望を感じましたね。でも信頼を失わないよう、万が一に備えて購入者全員にもう1冊配布し、それは信用につながりました」

その後、手帳を毎年ブラッシュアップ。それにはユーザーの声が宝物だったと小泉さんは語る。「使用者の意見をヒントに徹底的に改善を施しました。没頭しすぎて、まるで自分が手帳と一体化したような感覚になったほど」

手帳作りの時に示されたのは、「ただ体裁を整えるだけでなく、うちの会社だからこそのアイデアを足す」ということ。「それは今も、どんな仕事にも、生きていますね」

一つひとつの意見を大切にすくい取る イメージ画像

現在発売中の手帳は4種類。左から英語版、見開き1週間のもの、A5サイズ、そして文庫版サイズ

01年に誕生し、約1万2千冊の販売数からスタートした「ほぼ日手帳」。17年版は本体が4種類で、カバーが80種類以上、販売数は前年の61万冊を超えるほど大きく成長した。

現在の企画制作チームに所属する笠井さんは、転職後すぐに16年版の手帳作りの真っただ中に飛び込むことになった。与えられたミッションは手帳カバーの制作。手帳とコラボレーションする8ブランド22製品を前任者から引き継ぎ、どんな商品にするかを話し合うことから、納品の日程調整まで行った。

「先輩からは『コラボでは、ただきれいで可愛いカバーを作ればいいのではなく、アーティストやメーカーとほぼ日がコラボする、その意味をよく考えることが大事』とアドバイスをいただきました。これは私の指針となっています」

コラボ先のブランドが本業で培ってきたものを手帳に注ぎ込み、手帳を使うユーザーに喜んでもらうと同時にそのブランドへの興味も持ってもらう。そんな双方が満足いくウィンウィンの関係を築くのがコラボの目指すもの。その点で特に手応えを感じた仕事の一つが、アーティストの増田セバスチャンさんとのコラボだった。

「増田さんの作品をただカバーにプリントするという簡単なものではなく、増田さんの世界観をどうしたらうまく込められるかを考えました。立体的なプリントも検討しましたが、価格が上がるので、それよりは多くの方に届けるものにしたいと、カラフルな発色にこだわり、しおりのひもにチャーム(装飾品)をつけることにしたんです。出来上がったポップなカバーは、従来のファンの枠を超えて多くの方に受け、増田さんにもとても喜んでもらえました」

企画制作のチームにいて、笠井さんが学んだのは、話し合いではどんな意見も言いやすくなるような環境を作り、全員で検討し尽くすことだという。「お客さまの声は一つひとつ大切にしています。そのうえで、本当にお客さまにとって使いやすい手帳にするためにはどうしたら良いか、チームで何度も話し合います」

(株)ほぼ日は17年3月に株式を上場した。これを機に、ほぼ日手帳の認知もまだまだ広げられると感じた笠井さん。「ほぼ日手帳は『少しだけ生活を豊かにしてくれる』ものを生み出したいという、うちの会社らしさがつまった人生のステキな相棒です。何年も作り続けてこられたのは、育てていただいたお客さまあってのこと。今後も喜んでいただけるよう仕事に努めていきたいです」

私の情熱を支えてくれるモノ
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小泉さん
愛犬の写真を入れて作ったデスクカレンダー

以前、動物の保護団体と一緒に仕事をした縁で、愛犬リュネットを引き取ったのですが、その愛犬の写真を載せてカレンダーを手作りしました。デスクに置いて、写真を見る度に頑張ろうと気合が入ります。

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笠井さん
「宇宙鳥フェザード・シジュ」の人形

Webサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で見習い勤務をしている宇宙鳥フェザード・シジュ。その人形なんですが、これを見ると手帳の仕事のほかにもいろんな仕事で頑張っていこう! と気持ちが沸き立ちます。

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