シゴトサプリトピックス

少年マンガの主人公に学ぶ！　仕事中の集中力の高め方

掲載日：2015.12.7

仕事中、どうにも集中できない時ってありませんか？　いっそのことタスクを横へ置き、マンガを読みふけりたくなるような瞬間が……。実は、筆者にはよく訪れるんです。

でも、そのマンガの中に集中力を高めるヒントがあったならば、儲けものじゃないだろうか？　楽しいし面白いし、同時に仕事の効率を上げてしまえる！　しかも、少年マンガのごときヒーローっぷりを社内でも発揮できるはず!?

今回は、そんな作品が本当にあるのか調べてみました。「マンガを介してコミュニケーションを生み出す」をモットーとするユニット「マンガナイト」の主宰者・山内康裕さんに、少年マンガの主人公が実際に行っている集中力の高め方をいくつかご紹介していただこうと思います。

山内さんがセレクトしたのは、『昴』と『capeta（カペタ）』。どちらも曽田正人先生が手掛けたマンガです。『昴』と『capeta』を対比させ、それぞれの集中力の高め方を教えてもらいましょう。

「曽田先生は、“天才的な主人公”を描くのが得意な作家さんです。『昴』主人公の宮本すばるは、自分と向き合うことで集中力を高めていき“ゾーン”に入っていくタイプ。一方、『capeta』主人公の平勝平太（愛称「カペタ」）は、ライバルとの戦いのなか切磋琢磨（せっさたくま）して伸びていくタイプです」（山内康裕さん　以下同）

努力が必ず結果につながらなくても、生きる時は来る

では、宮本すばるという一人の天才バレエダンサーを描いた『昴』の説明から。彼女には悪性の脳腫瘍に侵された和馬という双子の弟がおり、彼は次第に記憶を失っていきます。そんな弟の記憶を呼び戻すため、日々の出来事を病床の和馬に向けダンスで表現し続けていたすばる。しかし、和馬は回復することなく逝ってしまいました……。

「見えているかどうか分からない弟のために毎日踊ることで、ダンスを洗練させていったすばる。結果が出る可能性は相当低いにもかかわらず、修練をしていきます。最終的には絶望の結果となってしまうのですが、その時の経験が生きたからこそダンサーとして大成している。努力が直接的に結果へつながらなかったとしても、その努力が生きる時は必ず来るということです」

確かに！　短期的な結果につながらずとも、努力は無駄になっていない。修練は間違いなくすばるの力になっていて、その経験が彼女を素晴らしいダンサーへと成長させました。目の前の結果ばかりに目を向けるのではなく、その努力自体が能力向上につながると、我々も考えを改めてみましょう。そうすることで、今までの自分より集中力が高まるかもしれません。

そのうえ、すばるは周囲と馴れ合わないタイプです。

「病気の弟のために頑張って踊ることで、普通に生きていられる自分を許しているところがすばるにはありました。でも、次第に彼女はダンス自体が楽しくなってしまう。こんなふうに“自分と向き合う”ことも、集中力を高める一つの方法だと思います」

この姿勢は、いわゆる「仕事を楽しむ」に通ずるものがありますね……。

仲間が頑張るからこそ、自分も頑張れる集中力の高め方

続いては、若きカーレーサーたちのエゴと生き様のぶつかり合いを描いた『capeta』について。

「すばると違い、カペタは一人で戦っていくタイプではありません。チームのメカニックやスポンサーによるバックアップがある状態で、力を発揮する主人公。しかも彼には源というライバルがおり、カペタ本人は『源のほうがすごい』と思っています。すべてを一人でこなす源に比べ、ノブという仲間が資金集めをすることで何とかレーサーを続けていけるカペタ。彼はチームづくりや環境の中で自分を築いていくタイプです。本人の素質にチームワークがプラスされるわけです」

苦手な分野は、思い切ってチームの仲間に委ねてみる。代わりに、自分の得意分野にはフルパワーで向かっていく。「仲間がこんなに頑張っているのだから、自分もその頑張りに応えないわけにはいかない」というカペタの姿勢。これは、チーム一丸になっているからこそのモチベーションです。なるほど、こういう集中力の高め方もあるのか……。

不安や悩みがあっても、突き進むことで開ける道とは？

ところで、山内さんよれば、同じく曽田先生の『め組の大吾』もオススメとのこと。同作は、幼い頃に火事に遭い、消防士に助けられた過去を持つ新米消防士・朝比奈大吾を描いたものです。ここには、「仕事への対峙（たいじ）の仕方」へのヒントが隠れているそう。

「この主人公がどういう天才かというと、火事が起こる場所を嗅覚で察知してしまうんです。彼は、火に魅入られちゃうところがあります。この能力のせいで『自分が行くところに火事が起きる』、『自分は消防士にならなかったら放火魔になってしまうんじゃないか？』とまで考えてしまいました」

このマンガで特に注目したいのは、ワイド版の第7巻に掲載されている1シーン。「自分の才能がなくなることが求められてるんじゃないか？」と、大吾は思い詰めてしまいました。「火事のない世の中になったら、自分の才能は不要」という考え方です。

「『テクノロジーが発達すると、不要となる仕事がたくさん出てくる』という話も出てくるほど、現在は過渡期の真っ只中です。この状況と大吾の苦悩には、似た部分を感じます。でも、そんな時でも、大吾の姿勢は『やるしかない！』。そうやって精進していき、周囲から頼りにされる存在になっていきました」

最後に、山内さんご自身が仕事上で窮地に陥った際、参考にするマンガはありますか？

「そんな時、私はゲーム会社の奮闘を描いた『東京トイボックス』を読みます。『ゲームを好きだから作っている』という“熱い思い”と、納期や予算などに目配りする“現実的な問題”のせめぎ合いがテーマになっていて、彼らの奮闘ぶりは参考になります。『でも夢を追いたいよね』という思いが、個人的にはあるんですけどね（笑）」

ビジネスパーソンにはいろいろなタイプがいるし、少年マンガの主人公にもいろいろなタイプがいます。自分とタイプが合致したキャラクターの奮闘ぶりを参考にしたら、ビジネスへ落とし込むのも不可能ではないはず。これが、正しき大人のマンガの楽しみ方でしょうか!?

（寺西ジャジューカ＋ノオト）

取材協力／山内康裕

2009年、マンガを介したコミュニケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成し、代表を務める。また、2010年にはマンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、マンガに関連した施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務などを提供。主な実績は「立川まんがぱーく」「東京ワンピースタワー」「池袋シネマチ祭」「これも学習マンガだ！（日本財団）」など。