社会保険完備(社保完備)とは? 種類や加入条件、メリットを解説
掲載日:2024年04月25日
記事まとめ(要約)
- 社会保険完備とは健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の4つの保険に加入できるということ
- 社会保険は病気やけが、失業などのリスクや老後に備えるための社会保障制度
- 正社員をはじめ、条件を満たしたパート・アルバイトの人が社会保険に加入できる
- 給与から社会保険料が天引きされるため手取り額が減ってしまうデメリットもある
転職サイトなどで求人情報を見ていると、「社会保険完備」や「各種保険完備」などの記載をよく見掛けます。
職業安定法により、求人情報には加入保険の記載が求められていますが、各種保険の内容について詳細が記載されているケースは多くありません。
この記事では、社会保険完備の意味や社会保険の種類、社会保険完備の職場で働くことのメリットとデメリットについて解説します。
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社会保険完備(社保完備)とは?
社会保険とは、病気やけが、失業など生活するうえで起こりうるリスクや、老後に備えるための社会保障制度です。健康保険(介護保険を含む)・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の4つで構成されています。
社会保険は、4保険の総称ですが、広義と狭義の意味で捉えることができます。
広義……健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険
狭義……健康保険・厚生年金保険
求人情報などで見掛ける「社会保険完備」とは広義の意味である「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の4つの保険に加入できることを指しています。
なお、健康保険に含まれる介護保険は40歳からの加入となります。
社会保険の種類
社会保険の各概要は、下記のとおりです。
健康保険
労働者や被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷もしくは死亡や出産に関して、保険の給付を行う医療保険です。
介護保険
介護が必要な人を社会全体で支える制度で、40歳以上65歳未満は加入義務があります。健康保険とまとめて支払います。
厚生年金保険
厚生年金保険の適用される会社に勤務する70歳未満の会社員または公務員が加入する公的年金です。
雇用保険
失業時や就労困難時に必要な給付を受けたり、職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な支援が受けられたりする保険です。
労災保険
業務上もしくは通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡などに対して保障を受けられる保険です。
それぞれの保険には加入条件があり、勤務先の規模や労働条件によって加入有無が異なります。
正社員だけでなく、パート・アルバイトの人でも条件を満たせば加入することが可能です。社会保険の加入条件について、次の章で詳しく見ていきましょう。
社会保険の加入条件
ここでは、2024年4月時点での各種保険の加入条件について解説します。
健康保険・厚生年金保険の加入条件
健康保険・厚生年金保険の加入条件は下記のとおりです。
- 75歳未満の正社員や会社の代表者、役員など(厚生年金保険は70歳未満が加入条件)
- 75歳未満で週の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上である人
2024年10月から社会保険加入条件が広がる
2024年10月から、短時間労働者について社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入の義務化の適用が更に拡大されます。
現在は厚生年金保険の被保険者数が101人以上の事業所で働く短時間労働者が加入対象でしたが、51人以上へと加入条件が広がります。
つまり、短時間労働者の社会保険の加入対象者がこれまでよりも増加することになります。
- 従業員51人以上の事業所で働く人は、下記の条件を満たせば加入可能になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある(フルタイムで働く方と同様)
- 学生ではない
出典:政府広報オンライン | パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。
参考:厚生労働省 社会保険適用拡大 特設サイト | 従業員数100人以下の事業主のみなさま
参考:日本年金機構 | 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
雇用保険の加入条件
雇用保険の加入条件は下記のとおりです。
- 31日以上の雇用の見込みがあること
- 所定労働時間(就業規則や雇用契約上の労働時間)が週20時間以上あること
- 学生ではないこと(夜間学生、通信制は除く)
労災保険の加入条件
労災保険の対象となるのは、正社員、パート、アルバイト、日雇いなどの雇用条件を問わず、雇われているすべての労働者です。
派遣社員については、勤務している派遣先ではなく、派遣元である派遣会社にて労災保険に加入することとなります。
介護保険の加入条件
40歳以上になると原則介護保険に加入することになります。なお、保険料は健康保険料と一緒に徴収されます。
介護保険の対象者は2種類に分けられます。
- 第一号被保険者
65歳以上の方が対象。年間18万円以上の年金受給がある場合には年金からの天引きにより徴収されます。 - 第二号被保険者
40歳以上65歳未満の医療保険加入者が対象。勤務先が健康保険と一緒に支払っています。被扶養者の場合は保険料の負担はありません。
社会保険完備の会社で働くメリット
続いて、社会保険完備の会社で働くメリットについて解説します。
手厚い保障が受けられる
病気やけがの際に保障を受けることができる
健康保険に加入すれば、けがや病気などに関わる傷病手当金や、出産に関わる出産手当金などが受け取れるようになるため、急な出費がかかる場面でも生活を守ることができます。
労災保険では、仕事中や通勤中にけが・病気・死亡といった事態が起きた時に保障が受けられます。民間保険会社の傷害保険では受けられない補償の金額や期間、治療後の補償内容などを得られることがメリットです。
失業時に給付金や支援が受けられる
雇用保険に加入していると、自己都合、会社都合などで仕事を失ったとしても失業給付金(基本手当)や再就職支援が受けられるようになります。
そのほかにも、社会保険では扶養に入ることができるため、扶養家族の保険料を抑えることができます。
将来もらえる年金の受給額が増える
日本国内に居住している20歳以上60歳未満のすべての人は、国民年金への加入が義務付けられています。国民年金保険に加えて厚生年金保険にも加入することで、将来受け取る年金が上乗せされます。
厚生労働省が公開している令和6年度の年金額は、国民年金(老齢基礎年金)は1人月額6万8,000円です。
一方で、厚生年金(夫婦2人分の老齢年金を含む標準的な年金額)は月額23万483円となっています。1人当たりに換算すると約11万5,000円です。
出典:厚生労働省 | 令和6年度の年金額改定
保険料の自己負担を抑えられる
社会保険料は各保険によって割合が異なりますが、会社と労働者の両者が負担します。
健康保険料と厚生年金保険料は50%ずつの折半です。介護保険料に関しても同様です。
雇用保険料は会社が多く負担する仕組みになっています。労災保険は事業の種類によって保険率が変わりますが、全額会社側の負担です。
このように、社会保険完備の会社で働くことで、社会保険料の自己負担金額を抑えることができます。
以下の記事では、社会保険が完備されていない場合の保険料の自己負担額について解説しています。
社会保険完備の会社で働くデメリット
社会保険完備の会社で働くデメリットについても解説しましょう。
給与の手取り額が減る
社会保険完備の会社で働くと、社会保険料が給料から天引きされるため、手取り額が減ってしまいます。
これまで配偶者や親の扶養に入った状態で働いていた人で、新たに社会保険に加入する場合も、社会保険料は天引きされるので、手取り額が減ってしまいます。
老齢厚生年金を受けている時は減額される
老齢厚生年金は、厚生年金保険に加入していた人が受け取れる年金のことです。
厚生年金保険の加入時の報酬額、加入期間によって受け取れる額が計算され、原則65歳から受け取ることが可能です。
老齢厚生年金は、給与収入と年金月額の合計額が50万円(※)を超えると、その金額に応じて減額されたり、全額停止となる場合もあります。
60歳以降で働きながら厚生年金に加入し、受け取る老齢厚生年金のことを在職老齢年金と言います。在職老齢年金による調整後の年金支給月額の計算式は、以下のとおりです。
基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円以下の場合
全額支給
基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円を超える場合
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
- 令和6年度の支給停止調整額
出典:日本年金機構 | 在職老齢年金の計算方法
社会保険に加入した場合の手取り額
社会保険に加入した場合の手取り額は、下記の計算式で計算できます。
手取り=(基本給+各種手当)-(社会保険料+所得税+住民税)
社会保険完備に関するよくある質問
最後に、求人情報などで見られる「社会保険完備」という記載内容について、よくある質問に回答します。
社会保険完備と各種保険完備の会社に違いはある?
「社会保険完備」と「各種保険完備」という表記には、4つの社会保険を完備しているという意味が含まれている場合が多く、基本的な違いはありません。
ただし、社会保険を狭義の意味(健康保険、厚生年金保険)で使用している可能性もありますし、各種保険が何を指しているのかも分かりません。詳細は必ず応募した会社に確認するようにしてください。
退職金制度は社会保険に含まれない?
退職金制度は会社ごとに任意で行っている福利厚生であり、社会保険には含まれません。
退職金制度の一つである確定拠出年金(401k)を運用するうえで会社が支払っているのは、保険料ではなく、給料の一部を積立金として支払っている形となります。
社会保険完備でも加入したくない場合どうすれば良い?
社会保険の加入条件を満たす場合は、必ず加入しなければなりません。加入したくない場合は、加入条件を満たさない働き方を選ぶことになります。
例えば月収約8.8万円未満に抑えたり、週の労働時間を20時間未満に抑えたりすることが考えられます。
まとめ
健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の4保険に加入できることを社会保険完備と言います。
社会生活を営むうえで起こりうるリスク(死亡、事故、傷病、障害、失業)によって生活を維持できなくなることを防ぐために設けられており、いざという時に手厚い保障を受けることができるのです。
正社員だけでなくパート・アルバイトも条件を満たせば加入対象です。
求人情報に「社会保険完備」と記載されていれば、基本的には4保険に加入できますが、会社によっては社会保険の捉え方が異なる場合も。気になることがあれば採用担当者に確認してみましょう。
監修者
岡 佳伸(おか よしのぶ)
特定社会保険労務士
社会保険労務士法人岡佳伸事務所 代表
大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活動。各種講演会で講師を務めるほか、日本経済新聞、読売新聞、女性セブンなどへの取材記事掲載、NHK総合テレビ「あさイチ」スタジオ出演などで活躍。
特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士。
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