ジョブローテーションとは?意味や目的、メリット・デメリットを解説
掲載日:2025年10月30日
記事まとめ(要約)
- ジョブローテーションは長期的に企業の中核を担う人材を育成するための方法
- ジョブローテーションによって、企業は多面的な視点や高い視座を持つ柔軟な人材を育成できる
- デメリットは数年ごとに部署異動があるため、専門性を磨きづらいこと
- メリットは、ジョブローテーションを通じて自分の適性を知ることができる点
- 複数の部署で身に付けたスキルを掛け合わせれば、希少性の高い人材になれる可能性がある
「ジョブローテーション制度」と聞くと、「異動が多く、専門性が身に付かないのでは?」と不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
特に20代の社会人は、「社内でのキャリア形成」と「専門性の獲得」のバランスに悩むこともあるでしょう。
この記事では、ジョブローテーションの仕組みやメリット・デメリットを解説します。後半ではジョブローテーションを活用して作れるキャリアについても解説しますので、異動に不安を感じる方はぜひ参考にしてください。
ジョブローテーションとは?
ジョブローテーションは、社員の能力開発やスキル向上のため、戦略的に定期的な部署異動を行う人材育成の方法です。
ジョブローテーションを経験することで、社員は変化に対応できる柔軟性や、会社全体を俯瞰する視点を身に付けることができます。
異動のサイクルは1カ月ごとや、3~5年ごとと目的により変わります。一般的には新入社員(新卒者)が対象になりやすいですが、年次を問わず全社的に実施している企業もあります。
ジョブローテーションの目的
企業がジョブローテーションを行う目的は4つです。それぞれ解説していきます。
適性を踏まえた配属
ジョブローテーションでは、複数の部署での実務を通じて、企業側が社員の適性を見極めます。
特に新卒入社者は実務経験がないうえに、学生時代の専攻と異なる業界に就職することも多いため、企業側は適性を見極めにくい場合があります。
複数の部署で実務を経験すれば適性に合った職種を把握でき、本配属に生かすことができます。
業務の属人化防止と社内の新陳代謝促進
ジョブローテーションは、業務の属人化や組織の硬直を防ぎ、会社全体の透明性や生産性を高める効果も期待できます。
組織のメンバーが固定されると、各担当者が独自のやり方で業務を進めてしまい、業務が属人化するリスクが高まります。
しかし定期的にメンバーが変われば、業務プロセスが複数の社員に共有され、担当者が不在の時も誰かがすぐに引き継げます。
また、異動者が新しい視点を持ち込むことで、より効率的な業務の進め方を発見できるチャンスも得られます。
業務の理解促進と多面的な視点の育成
ジョブローテーションを行うことで、社員が自社の運営に必要な業務を理解し、自社のビジネスを多面的に捉えられるように促します。
また、社員側もさまざまな部署で仕事を経験することで、企業運営に必要な役割と業務を学ぶことができます。
その結果、他部署や顧客、経営者の視点を持ち、会社全体を俯瞰して自部署の役割を認識し、より広い視野を持って業務に取り組めるようになるでしょう。
経営幹部候補の育成
さまざまな部署の役割や業務を理解し自社を俯瞰する能力は、会社経営には欠かせないスキルです。
そのため、長期的な視点で経営幹部候補を育成する目的で、ジョブローテーションが活用されることがあります。
社員に会社の重要業務を経験させ、社内のネットワークを広げるよう促すことで、企業の中核を担う人材育成に取り組むのです。
人事異動や社内公募制度との違い
人事異動や社内公募制度など、ほかの異動制度とジョブローテーションとの違いを解説します。
ジョブローテーションと人事異動の違い
ジョブローテーションは人材育成を目的として実施しますが、人事異動は経営戦略の実現や組織の活性化を目的に行われます。
また、ジョブローテーションの異動は部署間で行われますが、人事異動では、部署だけでなく昇進・降格・出向など異動も含まれます。
ジョブローテーションと社内公募制度の違い
社内公募制度は、社内で募集されたポジションに社員が自ら応募できる仕組みで「社内転職」とも呼ばれています。
ジョブローテーションが会社側の育成計画に基づいて行われる一方、社内公募制度は社員が主体的にキャリアを作るための制度として活用されています。
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ジョブローテーションが広まった背景と現在の潮流
日本企業におけるジョブローテーションは、新卒一括採用、終身雇用、無期雇用、年功序列といった4つの仕組みを背景に普及しました。
新卒から定年までの約40年間で、社内の部署と業務を幅広く学び、経営を担うゼネラリストとして定年まで勤めることが一般的だったからです。
現在は終身雇用が崩壊し、転職が当たり前になりました。そのため、ジョブローテーションは時代に合わないという意見もあります。
実際、今はゼネラリストよりも、即戦力となる専門性の高い人材のニーズのほうが相対的に高くなっています。
しかし時代に合わせた形で実施すれば、ジョブローテーションは今もキャリア形成に有効です。次からそのメリット・デメリットについて解説していきます。
ジョブローテーションのメリット
今の時代でも有効な、社員にとってのジョブローテーションのメリットを4つ紹介します。
部門横断的な人脈形成ができる
複数の部署でさまざまな社員と仕事をすることで、社内の人脈を広げることができます。その結果、社内での情報共有や協力体制が強化され、日々の部署間の連携や、部門横断型のプロジェクトがスムーズになります。
また他部署の社員の話を聞くことで、自分が経験したことのない部署や業務の情報も得やすくなります。
キャリアパスが広がる
複数の職種や業務の経験は、自分のキャリアを広げることにつながります。20代でさまざまな業務を経験しておくことで、ジョブローテーション期間の終了後に、自分の適性にあった仕事を選んで専門性を磨くことができます。
また、複数の職種の実務経験があれば、経験者として応募できる職種が増え、転職活動を有利に進められることもあります。
応用力の高いスキルが身に付く
ジョブローテーションでは、柔軟性や対人スキルといった、環境や業務が変わっても応用できる「ポータブルスキル」を身に付けることができます。
また、複数の部署で身に付けたスキルをうまく掛け合わせることで、希少性の高い人材になることが可能です。例えば人事や営業経験者のなかでも「製造現場の経験を持つ人事」や、「経理に強い営業職」は少なく、自身の希少価値を高めることができます。
モチベーションが向上する
同じメンバーと同じ業務を長く続けていると、マンネリ化して飽きや惰性が生まれることがあります。
しかし、ジョブローテーションによって数年ごとに業務内容や組織のメンバーが変わることで、新鮮な刺激を得られます。
その結果、やる気やモチベーションを維持しやすくなり、仕事に対する前向きな姿勢を保ちやすくなります。
ジョブローテーションのデメリット
ジョブローテーションはキャリアを形成するうえでのデメリットもあります。ここではデメリットと対策について解説します。
スペシャリストを目指すには不向き
ジョブローテーションでは一定期間ごとに部署が変わるため、一つの部署や業務に取り組む時間は限られます。
そのため、時間をかけて専門的なスキルや知識を磨き、スペシャリストを目指したいという人には向きません。
ただし、同じ部門内でジョブローテーションを行う企業であれば、一つの職種のなかで幅広い経験を積み、専門性を高めることができます。
希望に沿わない異動の可能性
ジョブローテーションでは、自分の希望どおりの部署に配属されるとは限りません。部署によっては「やりたい仕事じゃない」、「向いていない」と感じることもあるでしょう。
配属部署に違和感を持った時は、配属理由や配属先で期待される役割を上司などに確認してみましょう。役割やキャリアパスが明確になれば、モチベーションの向上につながるかもしれません。
適応が難しい場合もある
異動先の業務が自分に合わない場合、成果を出すまでに時間がかかることがあります。また、人間関係が合わない場合は、自分か相手が異動し離れられるまで待つ必要があるかもしれません。
ほかにも、業務が合わないことや、数年ごとに人間関係や業務が変わり続けること自体が、ストレスになる場合もあります。
ジョブローテーションが向いている人・向いていない人
ジョブローテーションの特徴から、ジョブローテーションでキャリアを作りやすくなる人と、そうでない人の傾向を解説します。
ジョブローテーション制度に向いている人
ジョブローテーションは、ゼネラリストや経営者の育成を目的としているため、こうしたキャリアを目指したい人に向いています。
一方で、自分の適性が分からず悩む人にも向いています。さまざまな業務を体験することで、自分の適職に出会える可能性が高くなるからです。
性格面では、好奇心が強く新しいことに挑戦したい人や、さまざまな環境に順応できる柔軟性を持つ人に向いています。飽きる前に新しい業務や環境で刺激を受けることができるでしょう。
ジョブローテーション制度に向いていない人
スペシャリストを目指す人や長期的なプロジェクトにじっくり取り組みたい人には、数年で業務が変わるジョブローテーションはあまり向いていません。1つの業務やプロジェクトに長く携わることができず、プロジェクト途中で異動になることもあるからです。
また、安定した人間関係や業務環境を重視する人は、ジョブローテーションによる環境の変化がストレスに感じるでしょう。慣れるまでに時間がかかる大器晩成型の人も、数年ごとに業務が変わってしまうと実力が発揮しきれないと感じるかもしれません。
ジョブローテーションが向いている企業・向いていない企業
企業にもジョブローテーションが向いている組織とそうでない企業があります。それぞれの特徴について解説します。
ジョブローテーションが向いている企業
さまざまな部署を抱え、人材育成に力を入れている企業はジョブローテーションに向いています。時間をかけてさまざまな業務を経験するためには、社員が長く働くことと、順番に異動できる部署やポジションがあることが必須条件です。
また、人材育成に力を入れている企業は、マニュアルや新人教育の仕組みが整備されているため、異動後もスムーズに業務ができる可能性が高くなります。
ジョブローテーションが向いていない企業
数年ごとに担当業務が変わることがマイナスに働いてしまう企業では、ジョブローテーションがなじみにくいでしょう。
以下の要素が強い企業は、ジョブローテーションに不向きと言えます。
- 社員一人ひとりの専門性を重視している
- ジョブ型制度を導入しており、職務ごとに給与水準が異なる
- 専門性を武器にした中途入社者が多い
- 長期プロジェクトが多い
- 部署数が少なく、ローテーションするほど多くのポジションがない など
ジョブローテーションをうまく活用している企業の特徴
今の時代に合ったジョブローテーションを行っている企業の特徴を4つ紹介します。
異動の目的が明確
ジョブローテーションがうまくいっている企業は、本人に配属の意図を伝えています。
具体的には、なぜその部署に異動させたか、どれくらいの期間で、何をしてほしいか、を育成計画と共に本人に説明します。
異動に向けた体制が万全
ジョブローテーションを活用できている企業は、異動時の社員の負担にも配慮します。各部署でマニュアルの整備や教育担当者による育成計画が進められているはずです。
また、転勤を伴う場合は転居費用や住宅補助制度を整えていたり、環境の変化に伴うメンタル面のケアに取り組む企業もあります。
異動に対するフィードバックや評価の機会がある
異動直後は慣れない業務に戸惑う人も多いでしょう。
ジョブローテーションを効果的に行う企業では、上司や人事からフィードバックを受ける機会を設定する、前年度からの成長を評価できるよう人事評価の基準を部署間で統一する、などの工夫をしています。
社員の希望もある程度は考慮される
近年は、社員が主体的にキャリア形成に取り組む必要性が指摘されています。
そのため、異動先の決定前に本人の希望を確認したり、社内公募制度など他の人事制度と併用したりする企業もあります。
ジョブローテーションのある企業に転職する時のポイント
ジョブローテーションを効果的に行う企業に転職するためには、制度の仕組みや人材の育成方針を確認することが重要です。
求人情報に「ジョブローテーションあり」「ジョブチェンジ制度あり」などの記載がある企業は、ジョブローテーションを行っている可能性が高いといえます。
ただし、中途入社者は適用外のこともあるため、制度内容や運用方法が自分の希望と合うかをしっかり確認しましょう。
具体的には、企業の採用ページや面接を通じて、社員の育成方針や異動の頻度、希望の反映度、配属先でのサポート体制などを確認します。
転職エージェントに相談して、実態の確認や、自分の志向に合った求人紹介をしてもらうことも有効です。
よくある質問(FAQ)
ジョブローテーションに関するよくある疑問を解説します。
ジョブローテーションを導入している企業はどのくらい?
労働政策研究・研修機構の調査によると、2017年のジョブローテーションの実施率は53.1%でした。正社員数1,000人以上の企業の場合、70%以上が導入しています。
参考:企業の転勤の実態に関する調査|労働政策研究・研修機構
マイナビ転職の掲載求人では、2025年9月11日時点で「ジョブローテ・ジョブチェンジあり」と明記された求人が全体の約1割(46,547件中4,390件)でした。
上述のとおり、ジョブローテーションは新卒の新入社員に適用されることが多いため、即戦力を期待する中途社員にジョブローテーションを実施する企業はレアなのかもしれません。
ジョブローテーションの頻度・期間は?
一般的には3~5年が多いですが、新入社員研修の一環として行う際は、2週間~1カ月になることもあります。
また、10年で3部署、管理職になる前に2部署以上、といった期間と経験部署数を定めている企業もあります。
ジョブローテーションの異動を断るとどうなるの?
多くの企業では就業規則や雇用契約書に「人事異動に従う義務」に関する記載があり、断ることは難しいです。一度断っても再度の打診を受けたり、「業務命令違反」として懲戒の対象となったりする可能性もあります。
ただし、雇用契約書の範囲外の異動や不当な異動であれば、異動の拒否が認められることがあります。
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まとめ
ジョブローテーションは、専門性が確立しにくい一方、ゼネラリストとしていろいろな職種を経験でき、ビジネスパーソンとして視座を高められる可能性がある制度です。
時代に合わないという意見もある一方、うまく活用すれば「スキルのかけ算」思考で自らの希少性や市場価値を高めることができます。
自分の適性が分からない、経営者やゼネラリストを目指して会社を俯瞰できる立場になりたいという方は、ジョブローテーションのある企業を候補に入れてみましょう。キャリア作りの方向性が見えてくるはずです。
監修者
伊藤 ゆかこ
キャリアコンサルタント
oriiro career代表
大学院で心理学研究に従事後、新卒では技術者派遣のコーディネーターとして、スタッフの登録面談や求人紹介などを担当。その後事務職を経て、2018年に人材紹介業に転身し、複数社で第二新卒から50代の役員クラスまで幅広い世代の転職支援並びに企業の採用支援を行う。
2024年に個人事業主としてoriiro careerを立ち上げ、20代〜50代まで幅広い年代の転職支援・キャリア相談を行うほか、大学での就職支援や仕事に関するノウハウをnoteで発信。また、ライターとしてHR領域のオウンドメディアの記事執筆も行う。
マイナビ転職 編集部
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