大きな「ド」の字が目を引く、プロジェクトチームで議論を重ねて考案した「情熱価格」の新ロゴ
所狭しと商品が並ぶ、エンタメ性のある総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」(以下、ドンキ)。その店内で、大きな「ド」の字が目立つオリジナルブランド「情熱価格」が、2021年2月のリニューアル以降、大きな人気を呼んでいる。
パッケージデザインは、目を引くロゴに加え、「驚きのニュース」(作り手の思いや製品の特徴を伝える長文の商品説明)が大半を占めるという斬新さで、ドンキらしい驚きや楽しさのある商品が食品や衣類、家電などさまざまなジャンルにおよび、その種類も日々増えている。
今回、このリニューアルプロジェクトの推進役を務めたのが松本さんだ。前職は出版社常駐のフリーのデザイナー。「キャラクターものが多く、子どもの頃から夢見たワクワク感を届けるという仕事でした。ただ、最終的な判断は社員がしていたので、自分でジャッジして物事を動かしてみたいと思ったんです」
ドンキは求人票に「権限委譲」とあり、その言葉に引かれた。担当者に仕事の権限を丸ごと任せる企業文化で、「ドンキのデザインはにぎやかだし、まさにやりたいこと」と松本さんは34歳で転職。するとすぐ、入社5カ月で情熱価格のリニューアル推進役に抜擢(ばってき)された。
まず行ったのは、課題を探るための社内や店舗のヒアリング。多かったのは「従来の情熱価格は確かに安いけれど、ドンキらしい楽しさや驚き、不意の出会いや発見がなく、もっとうちらしい商品が欲しい」という声。そこで、それを体現するコンセプトでリブランディング(ブランドの再構築)を進めることにした。
こうして各所との具体的なやりとりに入るが、長年勤務する社員のドンキ愛やこだわりは強く、そんななかで入社したての松本さんが旗振り役となり、しかもコロナ禍で親睦を深める間もなくリモートに突入。「リモートでの初めての社内プレゼンでは力が入り、うっかりパソコンの前で『やってやるぜ!』と口走ったら、その声が漏れていて『今のだれ?』とザワザワ。謝ってあいさつすると笑いが起き、少しなじめました」
パッケージの新デザインでは、どの商品にも、ドンキの「ド」の字と情熱価格のマークを一体化させたロゴと、「驚きのニュース」を大きく載せるという統一ルールを決めた。これには当初、百戦錬磨の社員たちから反対する意見もあった。既存のデザインでも売れているものはあると。でも、他社の商品と大きく差別できるものにしたいと考える松本さんは、一度実験させてくださいと強くお願いした。
パッケージに載っている「驚きのニュース」は読んでいるだけで面白い
21年2月、ドンキの、リニューアルした情熱価格がメディアに発表された。そしてその名を冠した食品や衣類、家電などが次々に商品化され、売り上げは好調だ。これに伴い、パッケージのデザインを一新させるなど情熱価格のリブランディングの推進役として奔走してきた松本さんは、ここから新たな難局に立ち向かうこととなった。
大きな「ド」の字が躍る新パッケージは当初約50アイテムでスタートしたが、残る旧情熱価格の商品群もすべてリニューアルしなければならない。また、売り上げが急伸したため、商品開発部や店舗から「これもぜひ情熱価格に」とオファーが殺到。しかし情熱価格のラインアップに入れるには、安さはもちろん、「驚きのニュース」が書ける個性やこだわりが欠かせず、そのルールを満たす必要がある。
商品の選定役も担う松本さんは、新たな製品の受け入れを丁寧に行っていった。こうした商品増加に伴い、効率的な商品開発を目指すべく力を入れたのが、社内に向けた情熱価格のルールの浸透だった。「ガイドブックを作ったり、驚きのニュースの書き方のワークショップを開いたりして、各担当者が情熱価格のことを理解して商品開発やデザインが進行していくという状態を目指しています」
そんななか、22年、優れた製品デザインに贈られるグッドデザイン賞に情熱価格が選ばれた。「歴史ある賞に認められ、正直やったなって感じです。新しい情熱価格のデザインコンセプトに対し、お客さまの課題を解決する社会的意義があるとみてくれたようです」
自分でジャッジして物事を展開したい、とドンキに転職してきた松本さん。そこには個の作業が多かった前職のデザイナー時代には考えられない、たくさんの密なコミュニケーションが不可欠だった。
「心掛けたのは、弊社創業者の著書『源流』にある二つのこと。一つは相手の言葉をさえぎらず、最後まで聞き、納得いくまで話し合う。もう一つは『主語の転換』、つまり相手の立場になって発想せよという考えです。デザインや商品セレクトについては、自分たちで決めたルールでやりたいけれど、商品開発など現場の立場になれば異なる意見があるのも当然。そう理解して、お互いの状況を少しずつ擦り合わせていったことが、今回のリニューアルの成功につながったと思います」
アコースティックギター
大学生の頃からアコースティックギターを弾くのが趣味なんです。仕事で疲れた時などは一人カラオケに行ったり、家でギターを弾きながら歌ったりして発散しています。主に演奏しているのは昔のフォークソング。例えば吉田拓郎さんとか、その時代の曲が好きですね。特に友人と一緒に演奏して歌うとリフレッシュでき、そこで得られた力を仕事に生かしています。
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