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商社とは？事業・仕事内容・年収・やりがいを分かりやすく解説

掲載日：2024年08月29日

商社と聞いて、「貿易を行っている」「年収が高い」といったイメージはあるものの、実際には何をやって、どう売上を立てているのかがピンと来ない人もいることでしょう。

就職・転職において人気業種の一つに数えられる商社について、メーカーとの違いや事業内容、実際の仕事、年収・働き方など、あらゆる角度から解説します。

商社とは？意味・役割

商社のおもな役割は、有形・無形を問わず、国内外のあらゆる商品・サービスの売り手と買い手をつなぐ「仲介役」といえます。

商品の取引をまとめるだけでなく、マーケティング、商品企画、物流、貿易手続き、販売チャネルの開拓など、商品が利用者のもとに届くまでのプロセス全般にかかわり、流通を支えています。

加えて、近年は有望な事業を手掛ける企業へ投資し、支援する事業投資も活発に行っています。

商社の事業内容

商社はおもにトレーディングと事業投資という2つの事業で売上・利益をあげています。それぞれの事業について確認しておきましょう。

トレーディング

トレーディングとは仲介業者として需要と供給を結びつける事業といった意味があります。

例えば先に述べた、供給元である売り手と需要先である買い手をつなぐ役割が、このトレーディングにあたります。

仕入れ先の企業も販売先の企業もグローバルに広がり、それらをつなぐ海外貿易を手掛けていることも商社の特徴です。

単に商品を仕入れ先から販売先へ納入するだけではありません。

市場ニーズをふまえた商品・パッケージの企画、製造・加工、輸送・流通、保険、宣伝、売り場づくりまで、「バリューチェーン」と呼ばれるビジネスモデルを築き、いわゆる川上から川下に至るまで、高い付加価値を提供しています。

事業投資

資金力のある総合商社を中心に、有望な事業や企業へ投資・支援する動きが活発化しています。

事業投資には取込利益や配当金、キャピタルゲインを得る動きだけではなく、グループ会社や投資先企業とのシナジー効果を生み出すことができるというメリットもあります。

再生エネルギーや新エネルギー、スマートシティ、医療・ヘルスケアなどへの投資もその一環です。

また、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等に投資し、自社が持つ事業ノウハウや人材、情報などを注ぎ込むことで、バリューチェーンの強化を図るという取り組みも行われています。

商社の種類

商社は取り扱う商材やビジネスの領域によって、「総合商社」「専門商社」の2つに大別されます。それぞれの特徴について解説します。

総合商社

原材料や加工・製造品、資源、電力、サービスなど、ありとあらゆる産業・商材を扱っているのが、総合商社です。

「ラーメンからロケットまで」と表現されることもあり、まさしく身近なところから国家レベルの事業まで、多彩な事業を手掛けています。

総合商社には規模の大きな企業が多く、年間売上が10兆円を超える企業もあります。

取引先は国内外に広がり、グローバルにダイナミックなビジネスを手掛けています。

専門商社

専門商社は、特定の分野の商材を専門的に扱う商社です。

医薬品や食品、繊維、鉄鋼、日用品、アパレル、IT・ソフトウエアなど、各分野に特化することで独自のノウハウやネットワークを磨き上げ、取引先から厚い信頼を得ています。

専門性を強みに競争力を高め、年間売上は兆単位にのぼる企業もあります。

商社とメーカーの違い

商社とメーカーの明確な違いは、「商品をつくっているかどうか」です。自動車、スマートフォン、医薬品、食品、アパレルなど、メーカーは自社で商品の企画・製造・販売を手掛けています。

一方、商社は生産者やメーカーから原材料や部品、完成品などを仕入れ、必要なところへ供給する役割を果たしています。

メーカーと商社は切っても切れない関係です。

例えば飲料メーカーは、飲料やパッケージに必要な原材料を、商社を介して世界中から調達します。

そして、メーカーの工場で製造された飲料は、再び商社を介して国内外へ流通し、店舗に並び、消費者のもとに届けられます。

「仕入れも販売もすべてメーカーがやればいいのに」とも考えられますが、原材料の仕入れ先の開拓や価格・納期の交渉、物流手配などには労力とコストがかかり、ノウハウやネットワークも必要です。

そこで、メーカーが商品の企画・開発・製造に資本を投入できるよう、周辺の機能を引き受け、支えているのが商社なのです。

メーカーは、商社のネットワークを介してあらゆる国・生産者・企業の原材料の中からベストを選定でき、新商品の開発や既存商品のブラッシュアップにつなげることができます。

そういう面でも、商社はメーカーにとって強力なパートナーであり、大きな介在価値を発揮しているのです。

商社業界の動向・トレンド・将来性

日本の商社は石油や石炭、鉄鉱石などの資源への権益投資や輸入によって巨額の収益をあげてきました。

しかし、近年は世界情勢の影響によって資源の価格変動が激しく、経営の安定化という面で課題がありました。加えて、世界的にはカーボンニュートラルの達成に向け、温室効果ガスの排出量削減が求められています。

こうした情勢を背景に、日本の大手商社では海外における石油や石炭の権益を手放したり、石炭火力発電所事業から撤退したりする動きが相次いでいます。

それらに替わって、再生可能エネルギーや新エネルギーへの投資が活発化され、食料品や機械、住宅、情報通信といった非資源分野への取り組みを強化する動きも見られます。

事業比率についても、とりわけ総合商社ではトレーディングから事業投資へ軸足がシフトし、コンビニエンスストアの子会社化や金融事業への出資などによって、事業の多角化、経営基盤の強化に乗り出すケースが増えています。

また、業界全体のトレンドといえば、デジタルを活用して業務プロセスやビジネスモデルなどを変革するデジタルトランスフォーメーション（DX）戦略が加速しています。

AIを活用したマーケティングや需要予測、IoTによる顧客行動の分析などを通して、商品の改良や仕入れ・販売数の調整など、バリューチェーン全体の最適化・効率化が推進されています。

商社の事業は今後も、輸出入や卸売販売、流通だけに留まらず、医療・ヘルスケアやバイオテクノロジー、エレクトロニクス、モビリティサービス、情報通信など成長分野を中心に、さまざまな事業が共存する企業体へモデルチェンジしていくことが考えられるでしょう。

商社の年収・働き方・求人に関するデータ

「マイナビ転職」に掲載された求人情報をもとに、商社の年収や働き方、求人に関するデータを見てみましょう。

• 平均年収出典：2024年版　業種別 モデル年収平均ランキング | マイナビ転職

• その他の調査対象： 2024年6月13日時点でマイナビ転職に掲載された商社の求人情報から各特徴項目フラグが付いている割合を算出

平均年収の632万円とは、「総合商社」の求人に掲載されたモデル年収例の平均です。商社は全体として給与水準が高く、総合商社では早くから年収1,000万円以上に到達する社員も珍しくありません。

しかしその一方で、「高収入を得られるけど、その代わり激務」というイメージも根強い業界です。

部署により異なりますが、たしかに海外取引が多い商社では、時差の関係で休日まで仕事を行うことがあり、国内・海外出張も多いでしょう。取引先との接待や会食などが多いことも事実です。

しかし、近年は商社においても働き方改革が進められ、深夜残業の禁止、会食は1次会までなど、これまでの夜型から朝型勤務に変えることや、DXにより業務の効率化に取り組んでいる商社もあります。

商社の仕事は忙しいことも事実ですが、福利厚生や待遇面が充実している企業が多く、そうした手厚さが仕事へのモチベーションにつながっているともいえます。

商社の職種・仕事内容

商社の役割・機能が広がるなか、商社を構成する職種も多岐にわたっています。

なかでも商社を象徴する職種といえば、「営業」「事業企画」「営業事務」「貿易事務」の4つが挙げられます。

営業

仕入れ先と販売先の双方のニーズ・課題を掴み、最適な取引になるように交渉・調整を行います。

例えば、販売先の機械メーカーから「もっと強度が高く、柔軟性を兼ね備えた素材を検討したい」といった要望を受けたなら、商社の営業は仕入れ先となる国内外の素材・部品メーカーを調査し、仕入れ先の開拓、契約、価格交渉、数量・納期の調整などを総合的に担います。

海外貿易に関わる場合には、海外に出張して仕入れ先との交渉・品質確認等を行う機会も多く、グローバルに活躍できるチャンスがあります。

事業企画

新規事業の立ち上げや既存事業のリニューアルなどにおいて、企画・マーケティング・戦略立案などを担当します。

綿密なマーケティングやデータ分析を積み上げ、どんな分野でどの企業に投資し、プロジェクト化するか、事業運営にどんなリソースが必要になるのかなどを多角的に検討・分析します。

商社が有する幅広いノウハウ・ネットワークを駆使し、新たなビジネスを生み出すことのできる職種です。

営業事務

国内外の取引先との交渉・調整で飛び回る営業をサポートする立場として、電話の応対や提案資料・見積などの書類作成、電話やメールでの受発注対応などを行います。

デスクワークが中心のため、仕入れ先・販売先と直接会う機会は少ないものの、電話・メールでやりとりすることが多く、事務といってもコミュニケーションを取る場面の多い職種です。

貿易事務

海外との取引がある商社において、要の一つといえる職種です。

原材料や食品、部品、資源など、あらゆるものの輸出入には、輸出元と輸入元それぞれの国で通関手続きが必要になります。海外の貿易業者とも連携しながら、貿易事務は手続きに必要な書類の作成や手配、輸送管理などを行います。

英語などで書類を作成し、海外の企業と電話やメール、Web会議等を通して英語でコミュニケーションを図る機会が多いため、ビジネスレベルの英語力があれば生かせます。

商社で働くメリット・やりがい

商社の仕事はさまざまな関係先の間を取り持ち、ノウハウを注ぎ込み、Win-Win-Win……　をカタチにします。

責任を伴うからこそ、大きなやりがいを実感でき、自身の成長にもつながります。その活躍に報いられるよう、待遇面を手厚く整えている企業が多いことも特徴です。

ここでは商社ならではのメリット・やりがいを3つお伝えします。

大規模な取引に携わるチャンスが多い

例えば食品を輸入する際、日本の港に到着した大型輸送船から、コンテナが港に次々と降ろされ、食料品が日本の取引先に納入されます。

それらが加工され、やがてスーパーやコンビニに並び、多くの食卓を彩ります。まさに日本の食を支えるダイナミックな仕事です。

こうした大規模な事業にかかわり、日本の産業や暮らしに貢献できることは、商社で働くうえでの大きなやりがいとなります。

責任が大きいだけに、成し遂げたあかつきには想像を上回る達成感や手応えを実感できるはずです。

グローバルな仕事を経験できる

輸出入を手掛ける商社では、海外のメーカーや貿易・物流企業、自社の海外現地法人など、海外の人たちと仕事をするシーンが多くあります。

海外に出張して仕入れ品の生産現場を視察したり、契約を取りまとめたりする機会も創出でき、場合によっては海外支社へ長期駐在するチャンスも得られます。

更には、新興国を中心に海外のインフラ整備や産業の振興などにも、日本企業とのパイプ役や事業投資を通して貢献することが可能です。

このように、商社ではグローバルに活躍を広げ、貴重な経験を培うことができます。

給与・福利厚生などの待遇が手厚い

影響力の大きなプロジェクトを手掛け、扱う金額が大きいこともあって、商社には好待遇を用意している企業が多いといえます。

大手総合商社の中には、平均年収が1,500万円前後に達する企業もあります。

企業にもよりますが、休日・休暇制度や育児と仕事の両立支援、資産形成支援など、福利厚生も手厚く、働く人にとって魅力的な環境があるといえます。

商社に向いている人・適性がある人の特徴

商社では多種多様なビジネスパートナーと連携・調整することが求められるため、コミュニケーション能力や柔軟性、責任感などの素養が大切になります。

そうした仕事の特性をふまえ、商社に向いている人・適性がある人の特徴を見ていきましょう。

コミュニケーション能力が高い

顧客や取引先の担当者、社内のチームメンバーや他部署・他職種のメンバーなど、さまざまな人たちと連携することの大切さは、商社でのあらゆる仕事に共通しています。

関係各所と円滑にコミュニケーションを取り、協力し、信頼関係を築くことが、商社で働くうえで欠かせない素養といえます。

相手の立場に立ち、柔軟に対応できる

商社では新商品やテクノロジー、原料などの情報を敏感に掴み、新しいビジネスに結びつけることが重要です。

そのためには興味のアンテナを広げ、柔軟に行動することが求められます。

また、とりわけ海外の取引先とのやりとりには、文化の違いもあって戸惑うこともあるはずです。そうした際にも、相手の立場に立って柔軟に対応する姿勢が大切になります。

果敢にチャレンジし、責任をもってやり切る

責任が大きく、さまざまな課題に直面することも少なくない仕事です。

そのため、課題や困難に直面しても背を向けず、周囲を巻き込みながら粘り強くやり切ることが、活躍のカギになります。ストレスやプレッシャーものしかかってくるため、それらに耐えうる強さが必要になる面もあります。

商社の仕事で生かせる資格

TOEIC

英語力の目安となる資格です。少なくとも700点以上あれば、実務で生かせるでしょう。そのほか、TOEFLや実用英語検定も英語力の目安にできます。

HSK

中国政府が認定する中国語検定の資格です。英語以外にも語学力を証明できれば、海外の取引先とのやりとりに役立ちます。

通関士

輸出入の際に必要となる通関業務の国家資格です。書類の精査や通関業者への手配に生かせます。

貿易実務検定

日本貿易実務検定協会主催の検定試験です。A～C級の3段階で貿易実務に関する知識や英語力を認定します。

日商簿記検定

簿記に関する知識は、事業投資の際の事業・取引先の経営状況の分析に生かせます。

中小企業診断士

企業の状況を適切に診断できることを認定する国家資格です。投資事業や金融事業に役立ちます。

ITパスポート試験

経済産業省が認定する国家資格です。IT関連の知識があれば、事務系の業務に生かせます。

未経験から商社に転職する際のポイント

大手総合商社の場合、未経験からの転職は一般的に難しいとされていますが、若年層の場合には経験がなくてもポテンシャルを重視して採用されるチャンスがあります。

専門商社、総合商社の関連会社の場合は、募集している事業や職種と関連する経験や知識があれば、商社勤務が未経験でも転職のチャンスがあります。

未経験から転職しやすい職種を選ぶ

商社の中でも未経験から転職しやすい職種は、営業、事務、投資・金融業務が挙げられます。

営業については、英語圏だけでなく、中国、ドイツ、イタリア、フランスなどに精通し、語学力や交渉力、多角的な視点を持った人であれば、未経験でも転職しやすいでしょう。

また、求められている商材・サービスの知識や関連する経験があれば、営業未経験でも転職しやすいです。

経理などの事務職については未経験可の求人が出ることもあり、転職できるチャンスがあります。通関業務は、業種が違っても経験や知識があれば転職しやすいです。

投資業務については、金融機関、コンサルタント会社、M＆A仲介企業で関連する経験があれば、未経験でも転職しやすいです。

保険契約、為替取引、デリバティブなどの経験があれば、商社の金融業務に転職しやすいでしょう。

スキル・経験が生かせる職種を選ぶ

募集している事業内容と合致する商材やサービスを取り扱った経験や専門知識があれば、商社での営業に生かすことができます。

コンサルタント会社や事業会社で事業戦略を企画立案した経験があれば、商社の事業投資分野の仕事にチャレンジできるでしょう。

海外在留や留学経験があれば、営業や営業事務への転職を狙うことができ、海外取引に関する事務経験やメーカー・物流会社等で通関業務の経験があれば、貿易事務や通関業務に就くチャンスがあります。

また、金融機関や保険会社で為替取引やデリバティブ、保険契約などの経験があれば、商社の金融業務で力を発揮できます。

契約書作成やリーガルチェックの経験があれば、商社の法務業務で生かせます。

求人情報から未経験可の企業を選ぶ

求人募集に「未経験可」「未経験OK」「未経験歓迎」といった記載があれば、未経験でも応募できます。ただし、「未経験可」と記載されていても、実務経験や高度な資格がある人材を優先している場合は、採用のハードルが高い可能性があります。

その見極めとして、求人情報の「対象となる方」などの項目に着目します。歓迎する経験や資格が優先して記載されている場合、「経験者寄り」の求人といえるでしょう。

まとめ

近年の商社は、トレーディングだけでなく、事業投資にもビジネス領域を広げています。そのため、多様な経験・スキルを生かせるフィールドがあります。

「ビッグスケールのビジネスを手掛けたい」「日本と海外の橋渡しを担いたい」「新しい事業を生み出したい」など、商社ならではのやりがいに興味をお持ちなら、「マイナビ転職」の求人をチェックしてみてください。

監修者

マイナビ転職　編集部

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