エンジニアの市場価値を高める鍵は「好き」と「越境」
掲載日:2025年02月27日

この記事で分かること
- エンジニアの市場価値は、ハードスキル、ソフトスキル、希少性の3つの要素で決まる
- 市場価値の高いエンジニアの共通点は「視座の高さ」と「自分の専門性を明確に伝えられること」
- ITコンサルタントやフルスタックエンジニア、AIエンジニアの需要が高まっている
- 市場価値を高める鍵は、好きなことを追求し、自分の領域を越えて成長していく姿勢
エンジニアの市場価値はどのように決まり、どうすれば自分の価値を高めることができるのか。自身も元エンジニアで、ITコンサルタント、SEの転職支援に強みを持つ、クライス&カンパニー キャリアコンサルタントの和田智行氏に聞いた。
エンジニアの市場価値を決する3つの要素
エンジニアの市場価値は、大きく3つの要素で決まります。1つ目はハードスキル。2つ目はソフトスキル。3つ目が希少性です。
ハードスキルとは技術力です。特に重要なのがキャッチアップ能力。例えば、新しいサービスが出てきたとき、食わず嫌いせずに試して仕事に活かしてみる、といったことができるかどうか。
また、顧客の要望を適切にシステムに落とし込める設計力も欠かせません。実務経験の他には、自己研鑽の習慣があるかどうかも大きな要素です。難易度の高い高度資格は、自己研鑽の表れとしても評価されます。ハッカソンやプログラミングコンテストへの参加なども同様で、エンジニアとしての学ぶ姿勢を示す指標の一つとして評価されます。
ソフトスキルとは、ビジネスパーソンとしての汎用的なスキルを指します。例えば、SEとして多様な顧客システムをサポートしてきた経験からはいろいろな課題に対処できる問題解決能力を期待できますし、現場を統率するマネジメント力やメンバーの育成力、対外発信力なども評価されます。
また、特に事業会社では外国籍のエンジニアと仕事をする機会が増えていることから、英語力も重要なソフトスキルの一つ。英語に苦手意識をお持ちの方は、まずSlackでコミュニケーションできるレベルを目指してみましょう。
希少性は、需要と供給のバランスで決まります。例えば、SAPのエンジニアは、基幹システム刷新の需要が高い一方で人材が不足し、引く手あまたです。ただし、技術トレンドは常に変化するため、数年後には違った状況になっている可能性もあります。
自分の市場価値を知るには
一番の方法は、転職活動をすることです。実際に転職しなくてもいいんです。まずは、「自分の経歴だと、こんな企業からこんなスカウトメールが届くんだ」と知るだけでもいいと思います。
そのほかにも、転職エージェントを活用することで、プロのキャリアコンサルタントが現時点での市場価値を判定してくれることも。
市場価値を上げる方法についての助言や、キャリアプラン設計の相談も可能です。
今後のキャリアを考えたい方にとって、良いきっかけになるでしょう。
市場価値が高い職種とは
実は今、ITコンサルタントの求人が急増しています。特に求められているのが、SI・SE経験者。顧客の要望をシステムにどう落とし込むかはもちろん、顧客自身も気づいていない課題の本質を見抜いて実現可能性の高い提案をすることは、実装経験があってこそできる仕事です。
フルスタックエンジニアも根強いです。若手の方で現時点でフルスタックとは言えなくても、「フロントエンドが得意でバックエンドも学習しており少し書ける」など、幅を広げていけるポテンシャルがあれば採用されやすい。尖ったスペシャリスト志向も大事ですが、一つの役割に固執しすぎず、チームの状況に合わせて柔軟に対応できる人は、どこへ行っても重宝されます。
また、AIエンジニアの需要も急速に高まっています。今やAIをプロダクトに実装するのが当たり前になってきていて、業種を問わず様々な企業でAIエンジニアの求人が多数出ています。
市場価値が高いエンジニアの共通点

活躍しているCTOやVPoEの多くは、LINEヤフー、メルカリ、ディー・エヌ・エーといったメガベンチャーを経験しています。主要CTOが参加するコミュニティの理事の経歴を見ても、そういった企業名が必ずと言っていいほど入っている。そこで培ったノウハウと人脈がキャリアの軸になっていることは確かです。
メガベンチャーの経験がなくても市場価値の高いエンジニアはたくさんいます。共通するのは視座の高さです。よく「顧客やビジネス部門が要件を決めてくれない」と言う方がいますが、これは物事を作り手の立場でしか見ていない典型です。かたや顧客の戦略や業務にまで踏み込んで「こういったシステムであるべき」と考えるエンジニアもいます。こうした視座の高さは、普段の会話や面接での受け答えにも滲み出てくるものです。
また、自分の専門性を明確に伝えられることも重要です。市場価値の高いエンジニアは、「こういう領域なら任せてください」と実にサラッと言える。一方で、「Javaの開発経験がある」など事実のみ伝える人がいます。これだと、どのレベルでできるのか、他の現場でも再現性があるのかイメージしにくいですよね。
日本のエンジニアは、自己アピールが控えめで「自分はこれで貢献できる」と自信を持って言えない傾向があります。他国のエンジニアは、「実務経験は短いけど、これくらいできます」と堂々と主張します。日本人の感覚だとかなり盛っているように感じる方もいますよ。でも、これがグローバルスタンダードです。
自信を持って語るにはどうすればいいか。キャリアコンサルタントに相談するのがお勧めです。上司や先輩に相談すると、社内での比較やプロジェクト文脈でのアドバイスになりがちですが、キャリアコンサルタントなら、客観的な目線で強みを評価できます。外から見た自分の強みを知ることで、自信を持ってアピールできるようになるはずです。
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自分の市場価値を上げるには
自分の市場価値を上げるために重要なのは、尊敬できる人がいる環境に身を置くことです。優秀な人が周りにいるかどうかで、その人の伸びしろは決まります。社内にいなければ、社外のITコミュニティに参加するのがおすすめ。憧れが生まれたら、人は勝手に努力するものです。
事業会社で市場価値を上げたい人は、それができる環境選びが大事。システム投資に積極的な会社か、モダンな開発環境が整っているか、経営者が技術を重視しているか、エンジニアの評価制度がしっかりしているか――最近は、企業側もこうした情報を積極的に発信しているので、リサーチしておきましょう。
二次請け、三次請けのSI企業にいて上流工程を担当できない――そんな方は、担当させてもらえるように声を上げ続けること。そして、チャンスが来たらガッとつかめるよう準備しておきましょう。副業で腕を磨くことも視野に入れていいと思います。
ただ、何より大切なのは、目の前の仕事で期待以上の成果を出すこと。実際、市場価値の高いエンジニアたちは、それを実践しています。印象的な例を2つ挙げましょう。
1人目は大手SIのSEでした。システム保守の傍ら、好きな技術を追求し、今のように手軽にパブリッククラウドを利用できなかった時代に、自宅サーバーを立てたりハッカソンに出場したり。それが役員の目に留まり、新規事業のテックリードに抜擢されました。今はスタートアップのCTOです。
もう1人は、CTOでありながら自ら営業現場にも足を運び、システムへの深い造詣を活かして新規顧客を獲得。今は有名企業でサービス横断的な技術アドバイザーとして活躍しています。
2人に共通するのは、市場価値を上げようとしてやったわけではなく、好きなことを追求した結果、自然と越境し、道が開けていったこと。「好き」は最強の原動力。「これなら負けない」と夢中になれるテーマを見つけることが、市場価値を高める近道なのです。
年収アップを狙った"安易な転職"は命取り
注意してほしいこともあります。世の中には、転職したら年収が上がると思い込んでいる方が本当にたくさんいます。何の根拠もなく200万アップを希望する人も。確かに年収アップされる方はいらっしゃいますが、相応の理由があります。
また、無計画に転職を繰り返すと、転職市場でジョブホッパーとして評価されてしまいます。1年や2年で圧倒的な成果を上げられる人はまずいないので、スキルも市場価値も上がっていかない。「この現場で成果を出す」という感覚が失われ、「嫌なことがあったら辞めればいい」と安易に考えるようになってしまう。理想のキャリアからどんどんかけ離れてしまうのです。
転職面接で言ってはいけない一言
面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれて、「残業時間はどれぐらいですか?」「テレワークできますか?」といった環境面の質問から入るのは避けた方がいいでしょう。
実際のところ、転職理由に年収、残業時間、ワークライフバランスなど労働環境を挙げる人が多いのも事実で、現場を知る面接官からリアルな話を聞きたい気持ちは分かります。しかし、それを最初に質問するのは違う。これはもうビジネスマナーと言ってもいいでしょう。
面接官は、担当するサービスや会社を一緒に良くしていく仲間になってくれるかどうかを見ています。事業内容や顧客のことなど、もっと業務に直結する質問をすべきだと私は思います。面接では、自分はチームや顧客のために何ができるか、世の中にどう貢献したいのか、主体的に価値を生み出していく姿勢が問われていると思ってください。
AIと働くのが当たり前の時代、エンジニアに求められること

エンジニアにとって、AIの台頭は大きな転換点です。ガートナー ジャパンが2024年に公表した調査によると、2028年までに、エンタープライズソフトウェアエンジニアの75%がAIコードアシスタントを使用するようになるとのこと。
大手SIやWeb系の企業では、すでにAIを活用したコーディングが始まっており、詳細設計からコーディング、テストまでの機械的な作業は、AIに代替されていく可能性が高いでしょう。
そこで重要になってくるのが、プロンプトエンジニアのような役割です。AIと共に開発を進められる「AIネイティブ」なエンジニアが求められています。ただし、AIと共存するには技術力だけでは不十分。ビジネス視点や顧客理解など、人間のエンジニアならではの付加価値を高めていく必要があります。
まとめ
市場価値の高いエンジニアになるための鍵は、意外にもシンプル。好きなことを追求し、自分の領域を越えて成長していく姿勢だ。
AIの台頭でエンジニアの仕事は大きく変わっていく。しかし、そんな時代だからこそ、目の前の仕事に真摯に向き合い、期待以上の成果を追求し、自分にできることを模索し続けたい。それこそが、市場価値の高いエンジニアが日々当たり前に実践していることであり、この仕事の本質なのだ。
和田 智行
大学院卒業後、野村総合研究所に入社。SEとして証券会社向けフロントシステム開発に従事した後、HRBPとして人材育成・組織開発を担当。約1000名の人材育成に携わる。その後金融ITコンサルタントとして、クライアントのDX新規事業開発、会計システム刷新、デジタル人材育成など多くのPJに参画。
人の人生に関わる仕事を生業にしたいと思い、クライス&カンパニーに転職。
ポストコンサル・ポストSIerのキャリアの専門家として、年間200名のコンサルタント・PM/SEの方向けのキャリアコンサルティングを主に行っている。修道高等学校、東京工業大学・大学院卒業。
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