「自分の人生の要件定義をしよう」先が読めない時代のエンジニアキャリアプラン設計術
掲載日:2025年06月26日
記事まとめ(要約)
- 変化が激しいAI時代だからこそ、エンジニアには明確なキャリアプランが必要。技術トレンドに振り回されないように、自分なりの軸を持ってキャリアを選択することが重要になる。
- キャリアビジョンが漠然とした状態で転職すると、また同じ悩みにぶつかる恐れがある。キャリアビジョンは「経済面」「働き方・ライフスタイル」「人間関係」「成長面」の4つの観点で整理することが大切。
- AI時代を生き抜くには「柔軟性」「向上心」「ヒューマンスキル」が重要。特に「ヒューマンスキル」の重要性は高まっており、技術力だけでなく、チームや組織にとって価値のある存在になることがキャリア成功の鍵になる。
AIの台頭でますます先が読みにくくなった今、理想のキャリアを築くには何が必要なのか。『ITエンジニア働き方超大全』著者でIT人材のキャリア支援事業などを手掛ける小野歩さんに、変化の時代を生き抜くためのキャリア設計術をうかがいました。
変化が激しい時代だからこそ、キャリアプランが必要
「5、10年先の未来なんて想像できない」――そう感じるエンジニアは多いでしょう。確かにIT業界の変化は激しい。生成AIの登場で、この変化はさらに加速しています。
「先が読めないから計画を立てても意味がない」と思いがちですが、実は逆です。変化が激しいからこそ、自分なりの軸がないと、技術トレンドが変わるたびに右往左往してしまいます。そんな時、キャリアプランが羅針盤になるのです。
「自分はこういうエンジニアになりたい」「仕事を通じてこんな人生をつくる」――そんな目的意識を持ってキャリアを選択していく力が、今以上に重要になります。
キャリアプランで考慮すべきIT業界のトレンドとは
キャリアプランを考えるうえで大事なことを整理していきましょう。まずはこれからのエンジニアに求められるスキルについて。エンジニアのスキルは大きく3つに分けられます。
- テクニカルスキル:コーディングなどの技術的なスキル
- コンセプチュアルスキル:ロジカルシンキングや水平思考などの思考スキル
- ヒューマンスキル:チームビルディングやコミュニケーションなど、人間力に根ざしたスキル
このなかで今最も大事なのが、ヒューマンスキルです。AIが普及する前なら、「テクニカルスキルに特化して極めよう」というアプローチもありだったかもしれません。
しかし今は違います。リーダーやマネージャーを目指すならヒューマンスキルが必須ですし、スペシャリストを目指すにも、技術力だけでは通用しなくなっています。だからこそ、早いうちからヒューマンスキルを意識することが大切です。
苦手な方は、職場のメンバーや上司を「内部顧客」と捉えてみましょう。目の前の仕事に全力で取り組む、きちんと挨拶をする、笑顔で話を聞く、オンライン会議で画面をオンして反応する。こうした基本の積み重ねが、ヒューマンスキル向上の第一歩です。
職種に関するキャッチアップも必要です。技術トレンドや開発プロセスの変化によって、新しい職種が生まれたり、価値が見直されたりしている職種があります。ここ数年の注目は、EM(エンジニアリングマネージャー)とPdM(プロダクトマネージャー)です。
EMはエンジニアの採用から育成、チームビルディング、モチベーション管理など、エンジニアやチームにフォーカスした仕事を担います。少し前まではPM(プロジェクトマネージャー)がすべてを担当していましたが、今は役割が細分化しています。
PdMがプロダクトを見て、EMがエンジニアや組織の管理をし、PMがプロジェクト全体を見るという構造です。
特にSaaSを開発している企業では、かなり短期間でリリースを繰り返すため、エンジニア組織のマネジメントが事業の要と言っても過言ではありません。そのため、EMの求人が増えています。
もう1つの注目すべき点は、QAエンジニアです。以前は最終段階のテスター的な位置付けでしたが、今は事前に有効なテストを作れるよう設計段階から参加するケースが増え、市場価値が高まっています。
働き方の選択肢も多様化しています。従来は1つの会社に骨を埋めるよりも転職でキャリアアップするのがエンジニアの定石でした。しかし今ではフリーランスから事業会社に戻ってリーダー職を狙う、といった柔軟なキャリア設計も珍しくなくなっています。
あなたに合った
非公開求人をご紹介!
マイナビ転職エージェントにしかない
求人に出合えるかも。
あなただけの
キャリアをアドバイス!
マイナビ転職エージェントが
ご希望を丁寧にヒアリング。
シゴト性格や
強み・弱みをチェック
向いている仕事が分かる、
応募書類作成に役立つ!
「人生の要件定義」でキャリアビジョンを描く
エンジニアからのキャリア相談で最も多いのが「収入を上げたい」というもの。「どんなスキルを身に付ければ市場価値が高まるのか」「自分はフリーランスに転向して収入を上げられる可能性はあるか」といった質問をよく受けます。
しかし、「どれぐらい収入を上げたいんですか?」と聞くと「分かりません」。「収入だけでいいんですか?」と聞くと、「いや、ライフスタイルも重視したい」となる。
キャリアビジョンが漠然とした状態で転職すると、仮に収入が上がったとしても、また同じ悩みにぶつかることになるでしょう。
だからエンジニアの皆さんには、「自分の人生の要件定義をしましょう」と伝えています。「要件定義がないと炎上しますよね」と言うと、皆さんハッとされるんです。
人生の要件定義、つまり、キャリアビジョンは4つの観点で整理できます。
- 経済面:目指す収入レベル、稼ぐ目的
- 働き方やライフスタイル:どんな開発をしたいか、リモートか常駐か、家族との時間、プライベートの過ごし方
- 人間関係:家族との関係、職場仲間との関係
- 成長面:どんなエンジニアになりたいか、技術選択の方向性など
4つの観点で自問自答していくと、これまで漠然としていた自分の本音が見えてきます。それが分かったうえで転職活動したほうが、うまくいくでしょう。
「自分はやりたいことができればそれでいい」という方もいらっしゃるかもしれません。でも、やりたいことができれば幸せとは限りません。4つの観点のうち、「働き方」しか満たしていないからです。
収入面は大丈夫か。家族や友人との時間は確保できているか。エンジニアとして十分なスキルは身に付いているか――実際にこれらを完璧に満たすのは難しいかもしれませんし、それで一喜一憂するのは本末転倒。
しかしキャリアビジョンを描いておくと、「自分はこういうことに興味があるんだ」と気づけるのです。
それに、やりたいことだけで突き進んでいくのは、転職にも不利に働く可能性があります。企業側は「やりたいことだけやりたいエンジニア」を採用したいでしょうか。やりたいことが終わったらまた次の会社に行くのでは、と捉えられる可能性があります。
この人生の要件定義は、1度決めたら終わりではありません。働くなかでより明確になったり、ライフステージが変わったり、キャリアビジョン自体が成長・変化したりします。
ただし、会社員か起業かフリーランスかといった根本的な方向性は、最初にある程度明確にした方がいいでしょう。その方向性のなかで徐々に調整していけばいいのです。
あなたに合った
非公開求人をご紹介!
マイナビ転職エージェントにしかない
求人に出合えるかも。
あなただけの
キャリアをアドバイス!
マイナビ転職エージェントが
ご希望を丁寧にヒアリング。
シゴト性格や
強み・弱みをチェック
向いている仕事が分かる、
応募書類作成に役立つ!
プロフェッショナルと管理職、それぞれの道で磨くべき力とは
プロフェッショナルを目指すなら自己管理能力を磨こう
プロフェッショナルとして最も重要なのは自己管理能力です。これがすべてと言っても過言ではありません。クライアントからすれば、年齢やエンジニア歴は関係ありません。求められるのは仕事の質。
タスク管理、目標管理、行動管理、メンタル管理、プロとしてすべてのレベルを上げていくことが必要です。
また、主体性とチーム・組織の利益を考える力も欠かせません。エンジニアでプロフェッショナルというと、テクニカルスキルの高さを思い浮かべがちですが、それだけでは市場価値は高まりません。
重要なのは、個人ではなくチーム全体を考えられること、組織の目標達成を見据えて行動できることです。「私は」ではなく「私たちは」を主語に考えられるのが、今必要とされるエンジニアです。
管理職を目指すなら管理職を知ることから
管理職を目指すなら、視座を上げることから始めましょう。自分の影響力でどんなエンジニア組織に変えていきたいか、どんな会社にしていきたいか。こうした大きな視点で考えることが求められます。
同時に、管理職自体を知ることも大事です。実はコロナ禍の影響で、学生時代にチームをまとめるといった、リーダーシップを発揮した経験が少ない世代が社会に出ています。そのため、管理職やマネジメントに苦手意識を持つ若い方が増えているんです。
しかし、エンジニアはチーム仕事です。だからこそ、管理職の面白さや仕事内容を自ら情報収集しましょう。
信頼する上司と一緒に仕事をする時間を増やすことも有効です。私自身も経験がありますが、上司のヒューマンスキルの高さに驚くはずです。「自分もこんなエンジニアになりたい」という指針になることもあります。
「応援される人」になろう
プロフェッショナルを目指すにも、管理職を目指すにも、共通して大事なのは「応援される人」になることです。実はフリーランスの世界でも同じです。
スキルを磨き続けることは大前提なのですが、そこまでものすごく高いスキルがなくても、ヒューマンスキルの高い人は仕事が途切れません。
「この人がチームにいると活気が出る」「なぜか上手くいく」――そんな存在を目指しましょう。職場や仕事で必要とされる人になることが、キャリア成功の鍵です。
希望のキャリアが歩めないときの対処法
希望のキャリアが歩めないと感じても、まずは目の前の仕事にベストを尽くしましょう。
年次が浅いうちは、思い通りにならないのが普通です。与えられた仕事で最善を尽くしつつ、「自分はこういう仕事がしたい」と上司に伝えておく。この両方が大切です。
手を抜いているのに「これがしたい」と言っても通じません。また、希望とは違う仕事でも、いざ打ち込んでみたら意外に面白くて天職だったと思えることもあります。
社外コミュニティで視野と人脈を広げる
希望のキャリアを見つけるには、社外のつながりも重要です。
週末や業務後に社外コミュニティに参加してみましょう。他社のエンジニアと関わることで、新しい技術トレンドやワークスタイルなど、家と会社の往復では得られなかった情報や価値観がキャッチアップできます。
また、初対面の方とコミュニケーションすること自体、ヒューマンスキル向上につながります。
相談できる人を見つけることも重要です。転職やフリーランス転向は社内では相談しにくいものです。相談することで視野が広がり、同時に今の仕事の価値や会社の良いところも見えてきます。第三者だからこそ分かることがあるのです。
あなたに合った
非公開求人をご紹介!
マイナビ転職エージェントにしかない
求人に出合えるかも。
あなただけの
キャリアをアドバイス!
マイナビ転職エージェントが
ご希望を丁寧にヒアリング。
シゴト性格や
強み・弱みをチェック
向いている仕事が分かる、
応募書類作成に役立つ!
AI時代、変化に対応する力が鍵
最近、「エンジニアの仕事もAIに取って代わられる」という言説をよく聞きます。しかし、IT業界のトレンドの移り変わりの激しさは今に始まったことではありませんし、今後も変わり続けますし、AI以上に革命的な技術革新が訪れる可能性だってあります。
AI時代を生き抜く武器は3つだと思います。柔軟性、向上心、そしてヒューマンスキル。柔軟性があれば、たとえ目指す分野がAIに取って代わられても別の道を見つけられるでしょう。
向上心があれば自分で情報収集し、必要な知識を学び取ることができるでしょう。そして普遍的なのがヒューマンスキルです。
あるAI研究者の言葉が印象的でした。
「生成AI登場前は、人間がAIに勝てるのはクリエイティビティとヒューマンスキルと言われていた。しかしChatGPT登場後、人間はクリエイティビティにおける強みを失った。残るのはヒューマンスキルのみ」
AI研究の最前線にいる専門家がこう断言するほど、ヒューマンスキルの重要性は高まっているのです。
技術力だけでなく、人として、チームの一員として、組織にとって価値ある存在になる。そうすれば、この先どんな技術革新が起きても、エンジニアとして価値あるキャリアを築いていけるでしょう。
取材協力者
小野歩
株式会社テックワークス 代表取締役。
大手SIerにてITエンジニアの基礎を築いた後に独立し、システム開発事業やIT人材のキャリア支援事業等を手掛ける。毎月開催しているITエンジニア向けの勉強会(オフライン)にはこれまで延べ3000人以上が参加。個人としても、1000人以上のIT関係者のキャリア相談にのり、100人以上のキャリア支援を成功に導いている。
著書:ITエンジニア働き方超大全(日経BP)
マイナビ転職 編集部
≪併せてチェック≫
豊富な転職・求人情報と転職ノウハウであなたの転職活動を支援する【マイナビ転職】。マイナビ転職は正社員の求人を中心に“日本最大級”常時 約8,000件以上の全国各地の豊富な求人情報をご紹介する転職・求人サイトです。毎週火・金更新であなたの希望の職種や勤務地、業種などの条件から検索することができます。職務経歴書や転職希望条件を匿名で登録するとあなたに興味を持った企業からスカウトされるサービスや、転職活動に役立つ職務経歴書サンプルや転職Q&A、会員登録をすると専門アドバイザーによる履歴書の添削、面接攻略など充実した転職支援サービスを利用できる転職サイトです。










